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「できたわよ」
「ありがとうございます」
2人が作っていたのはシチューとパンだ。
シュバリアはパンを千切ってエメアリアに食べさせてあげる。
エメアリアは嬉しそうにそれを頬張ると、
シュバリアにも同じようにしてあげて、
2人は仲良く食事をするのだった。
食事が終わると2人は交代で見張りを行い、
シュバリアが先に眠りにつく。
シュバリアは夢を見ていたが、
それはいつも見る悪夢だった。
シュバリアの両親はシュバリアを捨て、
シュバリアは1人になった。
そして、
「お前もいらなくなったから捨てる」
そうしてシュバリアは捨てられたのだ。
その日からシュバリアはずっと独りだった。そのはずなのに、
「おとうさん、だいじょうぶだよ」
幼い少女の声が聞こえる。
「わたしがいっしょだからさびしくないよ」
「……君は誰?」
「えへへ、ひみつ!」
「……そうか」
「うん!  だから、ずっといっしょにいようね」
「ああ、そうだね」
「やくそくね」
「うん、約束だ」
その瞬間、
「うぁぁぁぁぁぁ!!!」
シュバリアは飛び起きる。
全身は汗まみれになっており、呼吸は荒くなっていた。
「はぁ……はぁ……ゆ……め……か……」
シュバリアはそう呟いて息を整える。
「大丈夫?  シュバリア」
隣を見るとエメアリアが心配そうな表情でこちらを見ていた。
シュバリアはエメアリアの手を握って、
「はい、僕は大丈夫です」
そう答えて、エメアリアにキスをする。
「ん……」
そのまま2人は唇を重ねたまま、
シュバリアはエメアリアを抱き寄せて、
エメアリアはシュバリアの頭を撫でる。
やがてシュバリアはエメアリアの胸に顔を埋めて、
「エメアリア……」
「どうしたの?  シュバリア」
「少しだけこのままでいいですか?」
「ええ、いいわよ」
シュバリアはしばらくの間、エメアリアの胸の中にいるのだった。
シュバリアが目を覚ますと既に朝になっていた。
シュバリアはエメアリアを起こさないように気を付けながら、
ゆっくりと体を起こす。
「ふぅ、よく寝たな」
そう言って伸びをする。
エメアリアの方を見てみるとまだ眠っているようだ。
シュバリアはエメアリアを起こさないようにベッドから出ると、
荷物の中から着替えを出して、
外で軽く体操をする。
そうして準備を終えたところでエメアリアに声をかける。
「エメアリア、おはようございます」
「んー」
エメアリアはまだ眠いのか、シュバリアに抱き着いてくる。
「エメアリア、起きてください」
「んー」
シュバリアはエメアリアの背中をポンポンと叩いて起こすが、
それでもエメアリアは中々目を開ける様子がない。
「仕方ありませんね」
シュバリアはエメアリアをギュッと抱きしめて、耳元で囁いた。
「エメアリア、早く起きないと襲いますよ」
「ひゃ!?」
その言葉を聞いた途端にエメアリアは驚いて飛び起きた。
「あ、あれ?」
「ようやく目が覚めたようですね」
「あ、うん。ごめんなさい」
「いえ、僕も少しやりすぎました」
シュバリアはそう言うと、エメアリアにキスをして、微笑んだ。
2人は朝食を食べ終わると、テントなどの片づけを行う。
そうして身支度を終える頃には昼頃となっていた。
シュバリア達は昼食をとる為に街へ戻る事を決める。
2人は街道に出て街に向かって歩いていく。
シュバリアの左手には指輪があり、2人の薬指には同じデザインのリングがある。
2人は寄り添いながら街道を進んでいくのであった。
そうして街に着いた2人は宿を取って部屋を借りたのだが、
2人は夕食の時間まで特にやることもないので、
街をぶらつく事にしたのであった。
「ねぇシュバリア、この街を案内してくれないかしら」
「構いませんが、何か見たいものでもありましたか?」
「ええ、私の知らない景色をもっと見てみたいの」
「分かりました」
こうしてシュバリアはエメアリアを連れて街の散策を始めた。
とはいっても、シュバリアが知っている場所は限られているが、
それでも少しでも思い出して欲しいとシュバリアは思う。
(それにしても、あの時とは全然違う街並みだな)
シュバリアは懐かしさを覚えながらもエメアリアと手を繋いで歩く。
エメアリアは時折立ち止まっては物珍しそうに辺りを見渡している。
(良かった。楽しんでくれている)
シュバリアはそんなエメアリアの様子を見ながら心の中で安堵する。
それから2人は色々な場所を巡っていった。
服屋でエメアリアに似合いそうな服を選んであげたり、
本屋でエメアリアに絵本を買ってあげたりした。
そうして、2人は日が暮れるまで色々と楽しんだのであった。
夜になると2人はホテルに戻り、レストランへと向かう。
2人はそこで夕食を取ることにしたのだ。
メニューは魚介を中心としたコース料理である。
シュバリアはエメアリアと一緒に楽しく会話をしながら食事を進めていく。
エメアリアは美味しい料理に満足そうにしていた。
シュバリアはエメアリアに料理の感想を聞いてみたが、
「どれもこれもとても美味しかったわ。ありがとう」
と満面の笑みを浮かべてお礼を言われたので、
シュバリアはとても幸せな気分になるのだった。
2人が店を後にすると、2人は部屋に戻ってきてそれぞれシャワーを浴びて体を綺麗にする。
シュバリアはエメアリアが上がってくるのを待って一緒にバスローブを着てベッドに入る。
エメアリアはシュバリアに寄り添うと、 シュバリアはエメアリアを抱きしめてキスをした。
「エメアリア、愛していますよ」
「私もよ。シュバリア、大好き」
2人はそのまま肌を重ねて行為に耽っていくのだった。
翌朝、シュバリアが目を覚ますと既にエメアリアの姿はなかった。
昨晩はエメアリアが求めてきたので、
そのまま最後まで致してしまったのだ。
シュバリアは疲れからかすぐに眠ってしまったが、
エメアリアはいつものように早起きをして朝食の準備をしているのだろう。
「まったく、僕の奥さんは働き者だな」
シュバリアはそう呟いて服を着替えると、 部屋の外に出るのだった。
シュバリアは宿を出ると、 近くにある公園へと向かった。
この公園は小さいが湖もあって、その畔では釣りが出来るようになっている。
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