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「それで具体的にはどのような魔法を見せてくれるのですか?」
ワクワクと胸が高鳴るような感じがしたのはきっと久々であることによるものだと思いたい
なぜなら最近ずっと一人でいたために他人との会話というものを忘れてしまったようだから
「ああそうだな。簡単に言えば回復魔法の練習をしましょうと言うことになる。本来であればこういった練習方法は向いていないのだよ。普通に訓練を行っていれば習得することは難しくない。それにしてもその若さでこれだけ高度な呪文を知っているのは異常ではあるがな」
「そう言われると褒められていますよねこれって」
そう言って笑顔を浮かべた私に対して苦笑する男の姿を目の当たりにするとこちらまで呆れた気分になりかけてきた。
なぜなら私は今年16歳になったばかりだという。それに対して相手の反応を見る限り少なくとも30歳は超えていそうであるからだ。ただ見た目よりも年齢が高い可能性もあるけどその可能性は考えにくいかなと思ったりするわけだ。
仮に違う場合を想定してみたとすれば実はかなり凄い存在なのかなと推測することしかできないために無駄であることを悟ると思考を中断して作業に集中することにした。
なにせ今回はいつものように気楽な気持ちになれる状況とは言えないから。
そう例えばいつどこから攻撃されてもいいようにしておかないと危ないために周囲に注意しておいた方がいいと考えたからである。
というより実際警戒していたおかげで回避に成功することになったけど。
その結果、どういうことが起こったかといえばどういう原理なのかはよくわからないんだけど炎の壁のようなものが現れてくれたために難を逃れることができた。
もし対処しなかったとした場合にはかなり面倒なことになったことに違いないと思う。
ちなみになぜこういうことができるようになったかというのは単純な理由で私が火属性に特化しているためだ。
だからその特性を最大限に利用させて貰うことにしたのである。
ちなみにその壁の効力自体はそれほど長く続くものではなくてほんの数秒だけという極めて短い間だけだったがその間にできることはあった。
それはつまり反撃の機会を得るということである。私はそのタイミングを利用して相手に殴りかかろうとするも失敗してしまうことになる。
というのも相手は防御結界を展開できるほどの力を持っていたみたいでそれが障壁の役割を担っていたためである。
しかしそれだけでは終わらなかった。
なんと男は一瞬にして私の体を拘束すると首に手をかけてくるのでこのまま絞め殺されかねないと判断すると私はすぐに魔力を放出するも全く効果がないという状態に陥らせられてしまう。
それでも何とか脱出を試みるべくもがくと今度は腕を掴まれて捻られるような感覚を覚えるとそのまま関節を極められていた。当然のことながら私は激痛に襲われて悲鳴を上げようとするもそれは許されないまま私は苦痛に耐えることになる。
しかしここで奇跡が起きたのであった。
「お前は一体何をしようとしているんだ!」
その声の主こそ私の婚約者でもあるアベル殿下その人だったのである。
その表情はとても険しいもので今までに見たことのないようなものだったのでとても恐ろしかったけどそれを見て私は少し安堵を覚えたのは事実だった。
だけどその直後私は痛みに襲われる事になった。
それも無理はないでしょう。
なにしろ男が手を離してくれたのは良かったけれどその反動によって背中を打ち付けてしまいあまりの強さに意識を失いかけたほどだったからだ。
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