婚約を破棄されたので、王子とその恋人の聖女に嫌がらせをして破滅させてやりました。

5.

「実はだね。君の婚約が決まったんだよ」
などといきなり言われたものだから一体何を言っているんでしょうかと思ったのと同時にふざけているのではないかと思ってしまいましたね。
というのも以前までの父はどちらかというとお祖父様に似ていて頑固一徹という感じのお人だったのでまさか冗談を言うなんて事はあり得ないと思っていたんですけどね。
まぁ結局のところ聞き間違いではなかったということです。
何でも隣町の領主の息子さんだということでしたがはっきり言って興味ありませんね。
確かに顔立ちは整っている部類に入るのでしょうし見た目だけを見るのならば悪くはないと思います。
ですが何と言ってもその態度ですよね。
あまりにも横柄な態度を取りすぎているというか偉そうなんですよねぇ。
まるで自分は特別な存在だからお前らは下僕同然なんだぞという風に見ている節があってそれが気に入らないですね。
それに家柄だってそれほど良いわけではないし正直好きになれないタイプではあります。
ただ両親からは気に入られておりまた彼自身もそれを理解した上で利用しているふしがありなかなか嫌味な性格をしているようですね。
とはいえここまで露骨な態度を取るということは余程自信があるかあるいは馬鹿のどちらかという事がわかります。
前者の場合かなり危険な相手と言えるかもしれないですね。
彼がどんな能力を有しているかわかりませんがもしも強大な力を持っていたとしたら厄介なことになってしまいかねず場合によっては国を巻き込んだ戦争にまで発展する恐れもあるくらいで下手したら国が滅んでしまう可能性も否定できないほどなのだ。
実際過去に何度かそういう事例が発生しています。だからこそできるだけ早く対処しなければならないと考えてはいたんだけど中々行動に踏み切れずにいた。
そんな中で事件が起きてしまう。
その日はちょうどお茶会が開かれていたのですがそこに招かれていないはずの客人が来ていることを執事長の報告で知った母上は急遽予定を変更してその人物に会うことにした。
その人物の名はアリシア・ウォーカーと言いこの街で一番有名な貴族の娘である。
彼女はとある貴族の令嬢でもあった。
その関係で今回の茶会の招待状を送ってきたらしくそれを見て一目見ようとやって来たみたいなのよね。
とりあえず応接室へ向かう途中にある休憩所で待機しているように伝えた後案内してきた使用人に飲み物を出すよう指示を出したあと急いで目的地へと向かう。
到着した頃には既に彼女に対する質問攻めが始まっており辟易している様子を目の当たりにしてこのまま放っておくことも出来ずひとまず強引に引き剥がして別の部屋に連れて行くことにする。
今度は愚痴を言い始める始末。
それもかなりの量だったため少しは気晴らしになったかなと思ってみたりした。
でもまだ物足りないようで仕方が無いので再び別の場所へ行くと案外素直についてくる。
再び同じ事を繰り返す。
しばらくすると満足してくれたようでようやく解放される。
ちなみにその頃になるともう夜になっており夕食を食べながら話をすることになった。
「それで今日はいったいどういう用件できたのですか？」
食事を終え食後の紅茶を飲み終えると早速本題に入ろうとした。
さっきまで散々文句を言われ続けたため多少うんざりする思いはあったものの我慢するしかない。
さもなければもっと面倒な事態になりかねないからだ。
だがそれはある意味では的外れな考えであった事を後に知ることとなる。
それは彼女が口にした内容に原因がある。
その内容というのがこちらが思っていたものとは全く違うものだったからである。