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だからこそ今のところはまだ安心してもいいのではないかと個人的に考えている次第であった。
ただ問題はここから先どうやって事態を進めていけばよいかという点である。
現状として我々が出来ることなどたかが知れているためこれ以上の行動を起こすことが出来ない以上は待つ以外に選択肢がないということになる。
つまり我々は待ち続ける必要があるということである。
もちろんその間に出来るだけの対策はしておくべきだと考えているが果たして上手くいくかどうかは未知数であるため期待はあまり出来ないといったところが実情である。
とは言え他に方法も無いまま放置していては何時まで経っても進展しないため今はとにかく動くほかないだろうと判断して行動をすることにした。
幸いにも我々の側には強力な戦力が存在しているうえにその人物が協力してくれる姿勢を見せているおかげで何とかなりそうである。
もっともその人物は今までの経緯を考えるとあまり信用できるとは言い難い面があるだけに油断はできないが少なくとも敵にはならないと信じたいところではあり今後の展開次第ではその考えを改める必要があるかもしれぬと考えさせられることとなった。
それはさておくとしても当面の問題としてはやはりあの女をどうにかしなければならないという点に集約されるはずだろう。
なまじ権力を持っている分厄介極まりないがそれゆえに手出しが難しい。
一応手駒となる者たちもいるみたいではあるがまだまだ未熟すぎるため使い物にならずむしろ足を引っ張られかねない危険性もあるため迂闊に使うことができない。
そのためどうしても後手後手に回る羽目になる。
それをなんとか打開しようといろいろ考えてみた結果ようやく思いついた方法が有るには有ったがこれが成功すればおそらく状況は一気に好転することになるはずで失敗しても失う物はそこまで多くないはずである。
そしてその作戦を実行に移すことにした。
その方法は単純明快である。
要は向こうが仕掛けてくる前にこっちが先に動いてしまえばいいのではないかというものである。
しかしこれには大きな問題点が存在しており仮にうまく行った場合でもその後の展開によってはさらに悪化する可能性もあり得る。
その問題点とはすなわち相手の出方が読めないという事である。
もし何らかの方法でこちらの動きが筒抜けになっている場合であれば確実に先手を打つことが出来るはずだしそうでない場合は最悪相手に主導権を握られてしまう恐れがあるためである。
どちらに転ぶか分からない賭けに出るよりは慎重に動いた方が良いのではないかという意見も出たがそれはあくまで一般的な常識の範囲内での話であって今回に限って言えばそういった考え方こそが命取りになる可能性が高い。
なぜならば既にこちらは敵の術中に嵌まっている可能性がありその証拠として挙げられるものが二つ存在する。
その一つ目は例の女の動向が全く掴めなくなっていることである。これについては既に部下たちに探らせているが未だに成果が出ておらず完全に行方を絶ってしまっている状態である。
さらにもう一つ挙げるならこの国に潜伏させている間諜たちとの連絡が取れなくなってしまったことだ。
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