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というのも二人の着ている服はとても綺麗だったからだ。
特にルミナスの可愛さと言ったらもう最高としか言いようが
ないくらいだね。
思わず抱きしめてしまいたくなるほどだったよ。
まあ実際にはそんなことしないけどね。
ともあれ無事に買い物を終えた俺達は帰路につくことにしたんだ。
家に帰る途中ずっと考えていたんだけど、
どうしてこうなったのかさっぱりわからなかったんだよな。
ただひとつ言えることは俺達の旅はまだ始まったばかりだと
いうことだけだった。
これから一体どうなることやら……
そんなことを考えながら歩いているとふいに声をかけられた
ような気がしたんだが気のせいかな?
まあいいか。そんなことより今は帰ることだけ考えよう。
そう思い直して歩みを進めることにしたんだ。
それにしても今日は楽しかったなぁ。
まさかこんな楽しい時間が過ごせるなんて思っても
みなかったからな。
このままずっと一緒にいられたらいいのにと思って
しまうほどだ。
でもそういうわけにもいかないんだろうなと思うと
寂しくなってしまうな……おっといけない。
暗くなってる場合じゃないよな。
気持ちを切り替えて明日に備えて早めに寝るとしよう。
おやすみ。
翌朝、目が覚めると同時に大きく伸びをする。
隣を見るとまだ眠っている二人の姿があり、
穏やかな寝息を立てていた。
その姿を見て思わず笑みが溢れてしまう。
いつまでもこうしていたいという気持ちを抑えつつ
ベッドから抜け出すと手早く着替えを済ませたあと、
朝食の準備をするためにキッチンへ向かうことにした。
今日のメニューは何にしようかなと考えているうちに
閃くものがあった。
よし、決めた。
フレンチトーストを作ることにしよう。
そうと決まればさっそく行動開始だ。
まずはパンを焼くところから始めるとしようか。
オーブンに入れると中の温度が上がるのを待っている
間に他の料理の下ごしらえを進めていく。
「おはよう……」
眠たげな声で言いながら入ってきたのはルナだった。
続いてルミナスも姿を現したため、挨拶をする。
「ああ、おはよう」
挨拶を交わしていると、ふと気づくことがあり尋ねてみた。
「そういえばさ、君たちの名前を聞いていなかったと思って」
それを聞いた二人は顔を見合わせて頷くと順番に答えてくれるようだ。
まず最初に口を開いたのはルミナスの方だった。
「私はルナと申します」
次に口を開いたのはルミナスだったが、
何故か恥ずかしそうに俯いてしまっている。
どうしたんだろうと思っていると、
「あの、実はですね、私の本当の名前はルナリアというのです」と言ってきたのである。
なるほどそういうことだったのかと思いながら頷くことで
返事とする。
だがそれとは別に気になることがあったので
質問してみたところ、どうやら魔族には真名という
概念があるらしく、それを知られるということは命を
握られることに等しいのだということがわかったのだ。
そのため迂闊に他人に教えることはないのだそうだが、
今回に限り特別にということで教えてくれたということらしい。なので俺もそれに応えるように自己紹介することにしたのだ。
(ふむ、どうしようかな)
名前を考える必要があったのだが、
こういう時に限ってなかなかいい名前が浮かばないものである。どうしたものかと考えていた時に思いついたのがこれであった。
「リュート、俺の名はリュートだ」
すると彼女は嬉しそうに微笑んだ後で、深々と頭を下げてきたのだった。そして顔を上げるとこう言ったのだ。
「ありがとうございます、リュート様。
この御恩は決して忘れませんわ」
その言葉に苦笑するしかない俺であったが、気を取り直して話を続けることにした。
「さて、それじゃ出発するとするか!」
俺の言葉に二人が頷いたのを見て、出発の準備を始めることにした。
と言っても大した荷物があるわけでもないし、
準備はすぐに終わってしまうんだけどね。
それから馬車に乗り込むと、馬を走らせて村を後にする
ことにした。
目指す場所はここから北東にある街である。
そこに行けば色々と情報が集まるだろうし、
仕事を探すこともできるかもしれないと思ったからだ。
それに何より、俺は一刻も早くこの街から出たかったのだ。
あんな奴らと一緒にいるなんて御免だからな。
だから俺は馬車に乗り込むとすぐに出発したんだ。
後ろからはあいつらの声が聞こえてくるけど無視を
決め込むことにしたよ。
しばらく進むと街道が見えてきたので、
そこを通っていくことにしたんだ。
道幅は広くて馬車が余裕で通れるくらいの広さはあったからね。これなら安心して進めるだろうと思ったその時だった。
突然馬車が急停車したので慌てて飛び降りると、
そこには武装した連中が立ち塞がっていたんだ。
彼らは武器を構えながらこちらを睨みつけてきている。
その殺気立った様子から察するに、
どうやら話し合いの余地はないみたいだな。
やれやれ仕方ないなあと思いつつ剣を構えると
戦闘態勢に入った。
(くそっ! こんなところで時間を無駄にしている
場合じゃないというのに……!)
とりあえずこいつらを蹴散らすことにしようと決めた。
俺は相手に向かって突っ込んでいった。
そうして戦いが始まったわけだが、人数的にはこちらが
不利であることは明白だった。
しかも相手はそれなりに腕の立つ連中のようだしな。
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