上 下
229 / 236

229.

しおりを挟む
それだけで心が洗われるような気持ちになり、
先程まで感じていた不安や恐怖などが嘘のように
消え去っていくのを感じたことで、冷静さを取り戻す事が出来た様で、
「あ、あの……すみませんっ!お、俺……!」
慌てふためきながらも謝罪の言葉を口に
すると頭を下げることにした。
その様子を見ていた彼女はクスクス笑いながら
許してくれたようでホッと胸を撫で下ろしたところで、
改めて周りを見回すことにした。
そこは見たことのない部屋で見たこともない物が、
沢山あったのだが不思議と居心地が良いように感じて、
安心した気持ちになることができたのだった。
それからしばらくして落ち着きを取り戻したところで、
彼女に声をかけることにしたのだ。
まずは自己紹介をする事にしたんだが、自分の名前を、
告げた後で彼女に名前を聞くことにしたんだ。
彼女は笑顔で答えてくれたんだよ。
彼女の名前はルミナスと言って、種族名は夢魔って、
いうらしいんだけど詳しくは分からないみたいだった。
まあそれはそれとして、彼女の話によると、
「私達の仲間にならない?」
って言われたんで、どうしようか迷ったけど、
結局OKすることにしたんだよ。
そうして彼女の家に住むことになったんだが、
最初は戸惑っていたものの、次第に慣れてくると
楽しく過ごせるようになっていったんだ。
ただ一つだけ気になることがあったんだ。
それは彼女の態度が明らかに変わったことだと思うんだが、
その理由が分からずにいたある日のこと、
いつものように朝食を食べようとしていた時に
突然話しかけられたと思ったら、いきなり抱きつかれて
キスされてしまったんだ。
突然のことに驚いて抵抗しようとしたんだけど力が
強くて振り解くことができなかったんだよ。
それでも諦めずに何とか逃れることができたんだけど、
その時に彼女の顔を見ると頬が赤くなっていることに、
気づいたんだよ。
「もしかしてお前、俺の事が好きなのか……?」
と聞くと、彼女は小さく頷いてみせた。
それを見た瞬間、胸が高鳴るのを感じずにはいられなかったよ。
だが、同時に罪悪感にも苛まれることとなったんだ。
何故なら俺には既に恋人がいるからな。
だから断るしかなかったんだよな。
だけどそれでも諦めるつもりはないようだった。
「それでも構わないわ。だって私が勝手に好きになっただけだもの。貴方のせいじゃないわ」
そう言って微笑む姿にドキッとしたことは言うまでもないよな。でも流石にこれ以上一緒にいるのは不味いと思った俺は逃げるようにその場を後にしたんだ。
そして翌日、いつも通り冒険者ギルドに向かうと、
受付嬢のニーナさんに呼び止められたんだ。
「リュートさん、貴方に指名依頼が入っていますよ」
と言われたので内容を聞いてみると、その内容というのが、
とある村まで薬を届けて欲しいという内容だったんだ。
何でもそこの村人達が流行り病にかかったらしく、
命に関わる状態らしい。すぐに出発しなければ間に
合わないかもしれないということで、慌てて支度を
済ませると、早速出発することにしたんだ。
道中は特に問題なく進めたのだが、問題は目的地に
到着した後だった。
というのも、肝心の薬を忘れてしまったことに
気づいたからだ。
今から取りに戻ったとしても手遅れだろうし、
どうしたものかと考えていると、不意に声をかけられたのだ。
振り返るとそこには一人の女性が立っていたのだが、その人は
俺が探していた相手だったようで、ホッとした表情を
浮かべていた。
話を聞くと、どうやら俺を心配して追いかけてきてくれた
らしいのだが、その際に彼女が手に持っている物を
見て驚いた。
何故ならそれは俺が忘れたと思っていた
薬草だったからだ。
どうして彼女が持っているのかと疑問に思っていると、
彼女は苦笑しながら事情を説明してくれた。
なんでも、偶然通りかかった際に困っている様子だったので、
声をかけたところ、道に迷ってしまった事を打ち明けてきたため、一緒に探すことにしたのだという。
それを聞いて感謝の気持ちを伝えると、
彼女は照れくさそうにしながらも微笑んでくれたのだった。
その後、無事に薬を届けることができた俺達は、
帰路につくことになったのだが、途中で休憩を取ることに
した。
そして、程なくすると休憩中の食料を取るために森に入って行った。
しばらく歩いているうちに目的の場所に到着することが、
できたのだが、そこで思わぬ事態が発生したのである!
なんと森の中には大量のモンスター達が集まっており、
俺達を見つけるや否や一斉に襲いかかってきたのだ!
咄嵯の判断で散開することに成功したおかげでなんとか
難を逃れることに成功することが出来たのだが、
その後も次々と現れるモンスター達に苦戦を強いられることに
なってしまったのである。
そんな中でルミナスが魔法を使って援護してくれていた。
おかげで何とか切り抜けることができたが、
このままでは埒が明かないと判断した俺達は一旦撤退する
ことに決めたのである。
幸いなことに追ってくる様子は無かったため、安全圏まで逃げ切ることに成功した俺達はそこで一息つくことにしたのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!! 国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。 幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。 彼はもう限界だったのだ。 「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」 そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。 その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。 その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。 かのように思われた。 「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」 勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。 本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!! 基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。 異世界版の光源氏のようなストーリーです! ……やっぱりちょっと違います笑 また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

無能テイマーと追放されたが、無生物をテイムしたら擬人化した世界最強のヒロインたちに愛されてるので幸せです

青空あかな
ファンタジー
テイマーのアイトは、ある日突然パーティーを追放されてしまう。 その理由は、スライム一匹テイムできないから。 しかしリーダーたちはアイトをボコボコにした後、雇った本当の理由を告げた。 それは、単なるストレス解消のため。 置き去りにされたアイトは襲いくるモンスターを倒そうと、拾った石に渾身の魔力を込めた。 そのとき、アイトの真の力が明らかとなる。 アイトのテイム対象は、【無生物】だった。 さらに、アイトがテイムした物は女の子になることも判明する。 小石は石でできた美少女。 Sランクダンジョンはヤンデレ黒髪美少女。 伝説の聖剣はクーデレ銀髪長身美人。 アイトの周りには最強の美女たちが集まり、愛され幸せ生活が始まってしまう。 やがてアイトは、ギルドの危機を救ったり、捕らわれの冒険者たちを助けたりと、救世主や英雄と呼ばれるまでになる。 これは無能テイマーだったアイトが真の力に目覚め、最強の冒険者へと成り上がる物語である。 ※HOTランキング6位

勇者パーティー追放された支援役、スキル「エンカウント操作」のチート覚醒をきっかけに戦闘力超爆速上昇中ですが、俺は天職の支援役であり続けます。

カズマ・ユキヒロ
ファンタジー
支援役ロベル・モリスは、勇者パーティーに無能・役立たずと罵られ追放された。 お前のちっぽけな支援スキルなど必要ない、という理由で。 しかし直後、ロベルの所持スキル『エンカウント操作』がチート覚醒する。 『種類』も『数』も『瞬殺するか?』までも選んでモンスターを呼び寄せられる上に、『経験値』や『ドロップ・アイテム』などは入手可能。 スキルを使った爆速レベルアップをきっかけに、ロベルの戦闘力は急上昇していく。 そして勇者一行は、愚かにも気づいていなかった。 自分たちの実力が、ロベルの支援スキルのおかげで成り立っていたことに。 ロベル追放で化けの皮がはがれた勇者一行は、没落の道を歩んで破滅する。 一方のロベルは最強・無双・向かうところ敵なしだ。 手にした力を支援に注ぎ、3人の聖女のピンチを次々に救う。 小さい頃の幼馴染、エルフのプリンセス、実はロベルを溺愛していた元勇者パーティーメンバー。 彼女たち3聖女とハーレム・パーティーを結成したロベルは、王国を救い、人々から賞賛され、魔族四天王に圧勝。 ついには手にした聖剣で、魔王を滅ぼし世界を救うのだった。 これは目立つのが苦手なひとりの男が、最強でありながらも『支援役』にこだわり続け、結局世界を救ってしまう。そんな物語。 ※2022年12月12日(月)18時、【男性向けHOTランキング1位】をいただきました!  お読みいただいた皆さま、応援いただいた皆さま、  本当に本当にありがとうございました!

異世界で買った奴隷がやっぱ強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
「異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!」の続編です! 前編を引き継ぐストーリーとなっておりますので、初めての方は、前編から読む事を推奨します。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

処理中です...