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それから数日が経過したある日のこと……俺のところに一人の男性が訪ねて来て私にこんな依頼を持ちかけてきたのだった。
それを受けるべきかしばらく悩んでいるうちに結局押し切られる形で引き受けてしまったんだけど、
まぁいいやって開き直ることにしたのでした。
ちなみにその依頼というのは、とある場所の調査で、そこは昔、ある貴族の屋敷があったそうで今は放置され朽ち果てた
建造物がそのままの姿を残しているのだそうだ。
確かに魔物が棲みついていて危険度も高そうだし、それもあって依頼を受ける人が誰もいなかったんだろうなって思う。
そんなことを思いながら早速その場所へと向かってみたんだけど……そこで見たものは全く予想していなかったものだったのだ。
―地下には洞窟のようになっていて広々とした空間になっていて手付かずの自然が広がり天然の要塞のような役割があるようだった。
それに加えて地下には湧水があるのか水が流れていたりもしたんだけれどね?
とにかく、いかにもな雰囲気だったものだからリュート達は大興奮してしまったんだよね。
(うちの子達ってこういう場所が大好きなんだ)
それを知った時は微笑ましい気持ちになったんだけど、同時に少し複雑な気分にもさせられたね?
なんでもお姉ちゃんいわく冒険者っていうのは危険を承知で探索に臨む人達のことを言うんだって教えてもらったんだけど、
そういう事なら仕方ないよねって思ったよ。
とは言え何もないままというのも時間が勿体無いので俺達は軽く周囲を散策することにしたんだけどね。
ダンジョンの中を歩くというのは予想以上に危険な行為なので私たちも色々と考えさせられたね。
しばらく進むと通路の横に看板のようなものがあったんだけど、
そこには地下迷宮への入口があると記されていたのだ。
その先に広がる闇を見た瞬間、私は恐怖を感じた。
地下深くに潜っていくというのはそれだけでもかなりのリスクがあるというのに、
それに加えて周りには人っ子一人いないという状況はとても不安でしかないし、同時に寂しさも感じられたしね?そして何より気になったのが……
足元に魔法陣らしき紋様が描かれていることだ。
しかもかなり大きくて複雑な形状をしていたから踏み抜いてしまったらひとたまりもないだろうと思ったほどだから俺の不安は更に募っていったんだけれども、
その魔法陣からは強い魔力のようなものを感じることができたから余計だったんだ。
それと同時に何か嫌な予感がしていたんだよね……ただの杞憂ならいいんだけどね?
それはともかくとして先に進むことにしたんだけど、案の定というかなんというか、
「危ないから下がっていてね」
と言ってルミエールが前に出た。
その言葉を聞いた俺は
「? なんでしょうか?」
と聞き返したが、彼女は微笑みながらこう答えた。
「じゃあ手始めにー」
と言い、斧を構えるとその先端を俺に向けたのである。
それを見た瞬間、血の気が引いていくのがわかった。
同時に頭の中で警鐘が鳴り響いているのも感じたが体が動かない。
どうやら恐怖で動けないようだ、そして俺の目の前にはルミエールが迫ってきているのだった―竜人となった姿を見てしまったらリュートの身体は萎縮してしまうのではないかと考える一方、逆に強くなってくれているのでありがたいと思うのも事実だった。
(どうしたものかな……)
と思っている間に彼女たちは近づいてきていたため、
とりあえず俺はエリシュカに注意するように促しておくことにするのだった。
俺の中では、その名前こそがもっとも不吉なものである。
俺は、これから先の未来がどうなるかまったく想像できなかったので不安に苛まれていたのである。
そんな俺の思いをよそに、話はどんどん進んでいく。
俺はその言葉を受けてますます頭が混乱してしまったのだ。
だが、ここで立ち止まっていても仕方がないと思ったのでとりあえず歩き出すことにしたのだった。
しばらく歩いていると前方から何か音が聞こえてきたため、俺達は身構えることにするのだが、どうやらそれは足音のようだった。
誰かがこちらに向かってきているようだと判断した俺達は警戒を強めることにするが、そこでルミエールが口を開いたのである。
彼女は笑いながら言ったのだった。
「大丈夫! もう安心していいんだよ? 私が来たからね!」
そう言ってウインクをする彼女だったが俺には何が何だかさっぱりわからなかったし何が大丈夫なのかもわからなかったため、
困惑するしかなかったのであった―そんな中、レオノーレは、
(グレイス様……?)
と呟くと何かを思い詰めたような表情を浮かべていた。
そのことに気付いた俺は彼女の様子が気になったので声をかけてみることにしたのだが、そこで予想外の出来事が起きたのである。
なんとレオノーレが突然走り出したかと思うとそのまま飛び掛かってきたからだ!
「なっ!?」
驚いた俺が声を上げるよりも早く彼女は俺の首筋に噛み付いたのである。
鋭い痛みと共に血液が流れ出ていく感覚に襲われる中、俺は必死で抵抗しようとしたものの力及ばず押し倒されてしまうのだった―
俺が倒れたことで周囲を見回してみると皆が呆然とした表情で立ち尽くしていたのが見えたため、これは不味いと思った俺は咄嗟に叫んだのだ。
「みんな、逃げろ!」
その言葉を聞いた仲間達はハッとした表情になると一斉に走り出した。
そしてそれを見た俺も慌てて起き上がるとその後を追いかけるように駆け出したのだった。
レオノーレに噛み付かれた時に流した血のせいで意識が朦朧としていた俺はなんとか意識を保とうとするものの徐々に薄れていくのを感じた。
目の前が真っ暗になりかけたその時だった。
突然視界が開けたかと思うと目の前に見覚えのある人物が現れたのだ。
それは俺がずっと会いたいと思っていた人だったのである。
「父さん」
「よぅ、我が子よ、随分と苦戦しているようだな」
「うん、今のままじゃ勝てないかもしれない。だから父さんの力を貸して欲しいんだ」
俺はそう言って頭を下げた。
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