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そう考えると非常に大変な旅路になりそうだが、彼らが決意を固めた今、もはや引き返すことはできないのだ……。
そうして俺達の旅が始まった!
魔王になるための旅が、ここから始まるんだ。だからもう、立ち止まらない。進み続けるだけだ。
勇者パーティーを追放された俺は魔王と人類の敵になった。
そうして〈魔の帝国〉へと旅立った俺達だったが、道中では様々なトラブルが発生した。
途中で立ち寄った街で出会った人々が全員凶暴化していたこともあったし、モンスターに襲われて大怪我をしたりすることも少なくなかった。
しかしそんな中でも俺たちは何とか生き延びることができたし、旅の中で得た経験や知識を元に様々な問題を解決することができた。
しかしそんな旅路の中で一つだけ気がかりなことがあった。
それは〈エルフ族〉の存在についてだった。
彼らの村や街に行くたびに俺は彼らに出会うことができたが、彼らは皆俺に友好的に接してくれたし、中には仲良くなれた人もいた。
しかしそれでも彼らと出会うたびに嫌な予感を感じていたのは事実だ。
というのも、彼らは勇者召喚の儀式に関わっていたという噂があったからだ。
実際俺が彼らに感じた印象も決して良いものではなかったので、疑いの目を持って接していた部分もあったのだが、
その真相を確かめる術もなく時間だけが過ぎていった。
そんな中でも俺たち旅する者達の旅は続き、様々なトラブルに見舞われながらも目的地である
〈スラグシー帝国〉へと辿り着いたのだった……。
「勇者、かぁ……」
と小さく呟く。
先ほど出会った少年の事を思い出しながら思わず苦笑する。
彼もまた自分と同じく勇者として異世界に召喚された少年の一人であった。
そして同時に自分との共通点を持っている相手でもある。
しかしそれ故に、あまり深く関わりたくない相手でもあった。
何せ、彼が私に向ける感情は憎悪と敵意だけだ。
初対面であるにもかかわらずそのような感情をぶつけられれば誰だって良い気分はしないだろうし、
私だって同じ気持ちだ。
だから彼と仲良くなれる自信はないのだが、それでもお互いの正体を知っている以上無視することもできないので困ったものである。
そんなことを考えているうちに不意にため息が漏れたので、気持ちを切り替えて図書館へと向かうことにしたのだった。
「ここか」
と俺は呟く。そして入り口から中に入ると、そこには膨大な量の本が並べられていた。
その光景を見て圧倒されつつも、まずは目的の本を探すことにした。
「これと、これと、これ……かな?」
と言いながら手に取った本を見る。それは魔法に関する書物であり、 魔法の才能を目覚めさせる方法が載っているという情報を元に探しに来たものだった。
〈混沌の女神教〉という怪しい教団について調べようと思ったのも、それが理由である。
この教団は世界の破滅を目論んでおり、
そのために様々な手段を講じているらしい。
そんな教団に対して効果的な攻撃手段がないのかを調べたかったのだが、残念なことにあまり有益な情報は得られなかった。
それでも諦めるわけにはいかないので今後も調査を続けるつもりだが、現状では何とも言えないというのが正直なところである。
「リュート様、魔王城にご帰還なさいますか?」
とルナフが声をかけてきたので、俺は少し考えてから答える。
「いや、今日はもういいかな。たまには早く帰るのも悪くないだろう」
と伝えると、彼女は微笑んで言った。
「承知いたしました、それでは馬車を手配いたしますので、少々お待ちくださいませ」
こうして俺たちは帰路につくことになった。
そして翌日、いつもの通り俺は魔の帝王になるための研究をしていたのだが、そこに思わぬ来客があった。
俺が研究をしている部屋の扉がノックされ、続いて聞き慣れた声が聞こえてきたのだ。
「私だ、入ってもいいか?」
と聞かれたので、俺は少し考えてから答えた。
「ああ、入ってくれ」
と返事をすると、扉を開けて入ってきたのは見覚えのある人物だった。
それは紛れもなく、かつて俺を追放した勇者一行の一人、魔道士のレティシアだった。
そして彼女の後ろには二人の少女が控えているのがわかった。
彼女達の名前はたしかルナフとルイナと言ったはずだ。
二人とも魔王城でメイドとして働いている人物である。
そんな彼女達だがなぜここに来たのだろうか?
そんな疑問を抱きつつも話を聞くためにソファーへと案内する事にしたのだが……どうやらその必要はなかったようだ。
「突然の訪問、すまない、リュート。実は君に相談があって来たんだ」
とレティシアが言った。
どうやら彼女も彼女なりに魔王としての責任を果たそうとしているようだ。
俺は頷き、話を聞くことにしたのだった。
「そうか、それで相談というのは?」
と尋ねると、彼女は真剣な表情で答えた。
「私とルナフとルイナの3人で話し合って決めたのだが、君に魔王の後継者として推薦したいと考えているのだ」
それを聞いた瞬間、俺は思わず絶句してしまった。
なぜなら俺は追放された身であり、今更戻るつもりはないからだ。
それに俺には新しい夢があるし、そもそも自分は実力不足だと考えているため誰かを後継者に指名するつもりもない。
だから断ろうと思ったその時だった。
俺の返事を待たずに彼女は話を続けたのだ。
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