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「ほう、言ってみろ、聞いてやろうじゃないか」
その言葉に頷き返すと、自分の考えを口にした。
「まず一つ目は、絶対に人間に危害を加えないこと、二つ目は、配下となった以上、命令には絶対服従すること、
三つ目は、他の魔族達と仲良くする事、最後に四つ目は、俺と敵対する行動を取らないことだ、これらを守ってくれるなら構わないよ」
それを聞いた父の顔がパッと明るくなったように見えた。
「そうか! やってくれるのか、感謝するぞ、これで私も安心して隠居できるというものだ」
そう言って喜ぶ父の姿を見て、複雑な気分になった。
とはいえ、いつまでも感傷に浸っているわけにもいかないので、気持ちを切り替えて行動を起こすことにした。
まずは、拠点となる場所を探さなければならないと思い、出かける準備を始めた。
と言っても荷物らしいものは持っていないので、身軽なものだ。
それに服装も普段着のままだし問題ないだろう。
そう判断して玄関に向かったところで、後ろから声を掛けられた。
振り返るとそこには母の姿があった。
母は心配そうな表情でこちらを見つめていたが、目が合うと微笑んでくれた。
その笑顔を見て安心した俺は、行ってきますと言って家を出たのだった。
家を出てしばらく歩くと、街の入口が見えてきた。
そこから外に出ると街道に沿って歩き始める。
目指す場所は特に決めていないが、そのうち見つかるだろうと楽観的に考えていた。
森の中に入り、道なき道を進んでいくと、不意に開けた場所に出た。
そこには小さな泉があり、水面が太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。
それを見て思わず見惚れていると、突然背後から声をかけられた。
振り向くとそこには一人の女性が立っていた。
年齢は20代前半くらいに見えるが、実際はもっと上かもしれない。
髪は長く金色に輝いており、瞳は青色をしている。
顔立ちは非常に整っており、美人といって差し支えないだろう。
スタイルも良く、胸は大きく腰回りは細く、お尻は小さくキュッと上がっている。
まさに理想的な体型と言えるだろう。
そんな彼女を見ていると、なんだかドキドキしてくるのを感じた。
(いやいや、何を考えているんだ俺は!?)
慌てて頭を振ることで邪念を振り払おうとするが上手くいかないようだ。
そんなことを考えているうちにいつの間にか目の前に来ていた彼女に顔を覗き込まれてしまったため心臓が跳ね上がるような感覚に襲われた。
しかしそれも束の間のことですぐに離れてくれたことに安堵すると同時に少し残念な気持ちにもなった自分に驚きを覚えたのだった。
(何考えてるんだよ俺は!)
心の中で叫ぶものの答えは出ないままだった。
すると今度は耳元で囁かれた言葉に背筋がゾクッとする感覚に襲われると共に下腹部の奥の方が熱くなるような錯覚に陥った。
「ふふ、可愛い反応ですね」
そう言って微笑む彼女に対して俺は何も言えずにただ黙って見ていることしかできなかった。
それからしばらくの間見つめ合っていたが、やがて恥ずかしくなってきたので目を逸らすと、彼女も察したようでそれ以上は何もしてこなかった。
それからしばらくは沈黙が続いたが、やがて彼女が口を開いた。
「ねえ、そろそろ行きましょうか」
そう言われて我に返った俺は、頷いて答えると彼女の後に続いて歩き始めた。
それからしばらく歩いた後、街に到着した俺達は早速中に入ることにした。
中に入った後は、まず宿を探すことにする。
幸いにもすぐに見つかったので部屋を取ると、荷物を下ろして一息ついた後で街に出ることにした。
「さて、これからどうしようか?」
そう聞くと彼女は答えた。
「そうですね……とりあえず観光でもしましょうか」
そう言いながら歩き出す彼女を追いかけて隣に並ぶようにして歩いていくのだった。
街の中を散策していると色々な店があったりして見ていて飽きなかったりする。
そんな中で気になったものがあれば覗いてみたりするのだが全く興味を惹かれるものは無かった。
そうして歩いているうちに広場のような場所に辿り着いたのだがそこでふと足を止めたのだ。
何故ならそこに人だかりが出来ていたからである。気になって近づいてみると何やら騒ぎが起きているようだった。
よく見ると、数人の男達に囲まれている少女の姿が見えた。
どうやら揉め事のようだったので仲裁に入るべく近づくことにした。
そして声を掛けると一斉に視線がこちらに向いたのが分かった。
全員の視線が俺に集まる中で最初に声を上げたのは少女の方だった。
彼女は驚いたように目を丸くしていたが、やがてハッとした表情になるとこう言ってきたのだ。
「助けてください!」
と言われてしまえば放っておくわけにもいかず仕方なく助けることにしたのである。
取り敢えず事情を聞くために近くの喫茶店へと入ることにしたのだが、席に着くなり質問攻めにあってしまった。
何でも彼らは冒険者であり、依頼を終えて帰る途中だったらしいのだが途中で仲間とはぐれてしまい途方に暮れているところに
俺達の姿を見つけたので声を掛けたということだった。
そこでお礼も兼ねて一緒に食事をすることになったというわけだ。
ちなみに彼女が一人でいた理由は単純に道に迷ったからということらしい。
それを聞いて納得したところで改めて自己紹介をする事にした。
「えっと……私はリリアと言います」
そう言うとペコリとお辞儀をした。
それを見た俺も慌てて名乗ることにしたのだ。
「あ、ああ、こちらこそよろしくな」
そう言って手を差し出すと握り返してきたのだがその手はとても柔らかく温かかった。
(女の子の手ってこんなに柔らかいんだな……)
そんな事を考えながら見つめていると視線に気づいたのか顔を赤くして俯いてしまう姿がとても可愛かったので
思わずドキッとしたしまったほどだ。
そんなことを考えているうちに料理が来たので食べることにしたのだがこれがまた絶品だったのだ!
あまりの美味しさに感動すら覚えるほどであった。
その後はデザートまで堪能したところで会計を済ませると店を出ることにした。
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