勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる～魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する～

192.

そこで改めて彼女の姿をよく見てみるとやはり別人にしか見えないなと感心させられるばかりだったな。
それほどまでに完璧な変装をしていると言えるだろう。
それに何より声が違うというのが大きいな。
これならそう簡単にバレることはないだろうと思えるくらいには完璧に近いものと言っていいだろう。
「いや本当に凄いとしか言いようがないわこれ」
あまりのクオリティの高さには感嘆の声しか出てこない程である。
するとそれを聞いて気を良くしたのか得意げな表情を浮かべる少女の姿があったりする訳だがその反応も、
また微笑ましいもので見ているだけで癒されるような気分になるんだよなぁ～。
などと思っているうちに思わずニヤけてしまっていたらしくそれを見た彼女が不思議そうな表情をしていたのを見て我に帰ると、
共に恥ずかしさを覚えてしまい顔を背けることしか出来ないまま黙り込んでしまうことしか出来なかったのだ。
「ねえってば聞いてるの？」
ふと声をかけられ我に返った時には目の前に少女の顔があって驚いてしまったぜ。
あまりにも近すぎるものだからドキッとしたんだけど、それと同時に恥ずかしくなってきてしまったので反射的に離れようとしたんだが、
何故かそれができなかったせいで余計に密着度が増してしまったような気がして焦る一方だったのだ。
そんな状態の俺にお構いなしといった様子で話しかけてくる少女だったがその内容は全く頭に入ってこない状態だったよ。
何故なら緊張しすぎて心臓がバクバクいってるせいだからな、
そんな状況の中なんとか落ち着かせようと深呼吸を繰り返している間に次第に冷静さを取り戻してきたおかげで、
どうにか平静を取り戻すことができたのでホッと胸を撫で下ろすことが出来たぜ。
それにしてもさっきのは何だったんだろうな……
まるで本物の女性を相手にしてるかのような錯覚を覚えたんだがあれは気のせいだったのか……？
いや待て冷静に考えてみるとそもそも相手は男じゃないか！
どうしてそんな風に感じたんだろうと考えるまでもなく答えは明白だったなだってこいつはどこからどう見ても
女にしか見えんしな見た目だけなら美少女と言っても差し支えないだろうと思うくらいの美貌の持ち主でもあるわけだし
そう考えると先程の違和感の正体にも納得がいったというものだなうんうん良かったこれで謎は全て解けたぞやっぱり俺の勘違いに
過ぎなかったということだな安心したらなんだか気が楽になってきたなこのままずっとこうしていたい気分だなと思いながらさらに
強く抱きしめてみるとそれに応えるように彼女も背中に手を回してきたではないか！
「えへへぇ～」
嬉しそうに笑いながらすり寄ってくる姿に愛しさがこみ上げてくるのを感じながら頭を撫でていると
気持ちよさそうに目を細めていてその様子を見ているとこっちまで幸せな気分になれるというもので
あるよな幸せだなぁ～と思っていた矢先の事であった。
不意に扉が開いて何者かが入ってきたのだ。
一体誰なんだと思ってそちらの方に視線を向けるとそこに立っていた人物を見て驚いたぜ！
なんとそこにいたのは何と俺の妹ミーシャだったからだ。
何故こんなところにいるんだと思った瞬間ハッとなった俺は慌てて取り繕うとするも時既に
遅しという感じで見られてしまっており言い訳する暇もなく完全にバレてしまっていたようで
呆れたような視線を向けられていたんだが全く動じずに平然とした態度のまま歩み寄ってきたかと思う。
いきなりビンタを食らう羽目になってしまったんだが当然の如く避けられるわけがなかったわけで見事に喰らってしまったのだった。
「最低ですね」
冷たく言い放つ彼女に対して反論の余地もなかったことから黙って受け入れるしかなかった。
（うう、どうしてこんなことに）
そう思いながら項垂れるしかない自分だった。
しかし、そんなことを気にすることなく近づいて来たかと思うとおもむろに抱きついてきて胸に顔を埋めるような
体勢になったのだがその際にふわりと漂ってきた甘い匂いを感じた途端頭がクラっとしてしまうほどの衝撃を受けてしまったのだ。
というのも相手が女の子の姿をしていたということもあるのだが、
それ以前に元々女の子が好きだったこともあって尚更興奮してしまったからである。
更に追い討ちをかけるかのように甘い吐息を吹きかけられてしまえば耐えられるはずもなくあっさりと陥落してしまいそうになるほどであった。
（やばい！　このままじゃ流される！　早く離れないと！）
そう思い必死に堪えようとするのだが、その度に激しく責められるのでどうすることも出来ずにいる内に限界を迎えようとしていたその時だった。
突然扉が開いたかと思えば見覚えのある人物が入って来たのを見た俺は驚愕せざるを得なかったんだなぜならその人物とは俺が知っている相手でもあったからだ。
「あれ、何でこんな所にいるんだよ」
そう、彼女は元・勇者パーティーの戦士だったのだ。
「リュート、魔王辞めたの？」
本当にムカつく奴だ。
こっちは真面目にやってるのに、いちいち絡んでくるなよとイライラしながらも我慢しつつ、答えることにした。
「そうだけど、何か文句あるわけ？ どうせ、あんた達みたいに強いわけじゃないんでね、悪いかよ」
吐き捨てるように言うと、そのまま立ち去ろうとするのだが、後ろから呼び止められた。
振り返ると奴はニヤニヤしながらこう言ってきたんだ。