勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音

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振り向くとそこにはレイナの姿があった。
どうやら昼食の誘いに来たらしい。
断る理由もなかったので了承すると彼女は嬉しそうな笑顔を浮かべながら俺の手を引っ張って歩き出した。
その様子はまるで子供のようで微笑ましく思えた。
しばらく歩いているうちに目的地に到着したらしく扉を開けて中に入るとそこは食堂のようだった。
席に着くと早速料理が運ばれてきたため食べ始めることにした。
メニューは肉料理が中心のようでどれも美味しかったためあっという間に平らげてしまった。
「ふぅ、美味かったぜ」
そう言うと彼女は嬉しそうな表情を浮かべていた。
そして食後のデザートとして果物が出てきたためそれを食べていると、突然彼女が話しかけてきた。
「そういえば、あなたっていつもその姿でいるつもりなの?」
その問いに一瞬ドキッとしたが平静を装って答えることにした。
「まあ、そうだな。こっちの方が色々と都合がいいからな」
本当は別に理由があるのだが今は話すつもりはないため適当に誤魔化しておくことにする。
それを聞いた彼女は少し考える素振りを見せた後、何かを思いついたような表情を見せた後にこんなことを言ってきた。
「だったら、私が魔法をかけてあげましょうか?」
唐突な提案に戸惑ってしまったが、詳しく話を聞いてみることにした。
要約するとこういうことらしい。
まず最初に、自分に変装するための幻術をかけるそうだ。
その後で彼女に姿を変えることで完全な別人になりきることができるという。
ただし、あくまでも見た目だけしか変えることはできないため口調や仕草などは変えられないらしい。
それでも十分すぎるほどの効果はあると思うので試してみる価値はあると思った。
そこで試しにやってもらうことにした。
まずは自分の姿を思い浮かべて頭の中にイメージを描くことから始める。
(よし、こんな感じかな?)
目を閉じて集中していると徐々に意識が遠のいていくような感覚に襲われた。
目を開けるとそこに映っていたのは間違いなく自分だったがどこか違和感があった。
「うーん、ちょっと違う気がするんだよな……」
思わず声に出してしまったが、自分でもよく分からなかったためとりあえず鏡の前に立ってみることにする。
そこに映っているのは確かに自分の顔のはずなのになぜか他人の顔のように見えてならなかった。
そこでふと気づいたことがあった。
自分の髪の色が銀色になっているのだ。
そのことに驚いていると、頭の中で声が響いた気がした。
まるで直接話しかけられているかのような不思議な感覚だった。
〈あなたは誰?〉
そう問いかけると返事が返ってきた。
それは紛れもなく自分の声だったが、口調が違っていた。
しかも、その声はどこか聞き覚えのあるものだった。
そこでようやく気付いたのだが、今喋っているのは自分ではなく目の前の鏡に映った人物だということに気が付いた。
だが、不思議と違和感はなかった。
まるで昔からそうだったかのように自然と受け入れられている自分がいることに驚きつつも納得していた。
(そうか、これが本当の俺なんだ……)
そう思うと何だか嬉しくなってきた。
これからは堂々と女として生きていくことができるのだから、
そんなことを考えていると、不意に背後から声をかけられた。
驚いて振り返るとそこにいたのは、銀髪の少女だった。
年齢は10歳くらいだろうか?幼い顔立ちをしており、一見すると可愛らしい少女といった感じだが、その瞳には強い意志を感じさせる光があり、
凛とした佇まいからは気品すら感じられるほどだった。
彼女は私の前まで来るとじっと見つめてきた。
私は戸惑いながらも自己紹介をする事にした。
「あ、あの……私の名前はリリアといいます。今日からこちらでお世話になる事になりました」
緊張しながら挨拶すると、彼女はニッコリと笑って言った。
「よろしくね、リリアちゃん、私のことはお姉ちゃんって呼んでくれていいからね!」
そう言って手を差し出してきたので握手をすると優しく握り返してくれた。
その手はとても温かくて心地良かった。
それからしばらくして、ようやく落ち着いてきたところで改めて部屋の中を見回してみると意外と広く感じることが分かった。
部屋の隅の方には大きなベッドが置かれており、その上にはぬいぐるみがたくさん置かれているのが見えた。
よく見ると全て同じ種類の物のようだ。
ピンク色のうさぎや水色のくまなど種類は様々だったが、どれも可愛らしく見えるものばかりだった。
中でも特に目を引いたのは白い猫のぬいぐるみだった。
大きさはそれほど大きくはないが毛並みがとても綺麗だった。
思わず見惚れているとレイナさんが説明してくれた。
「その猫ちゃんはね、幸運を呼ぶって言われてるんだよ?」
そう言われて見てみると確かにそんな気がしてきた。
この猫を抱いて眠ると悪夢を見ずにぐっすり眠れるという言い伝えがあるらしい。実際、その効果はかなり高く、
実際に使った人達からも好評だったようだ。
私も興味があったので一つ買って帰ることにした。
代金を支払って店を出ると、ちょうどお昼時だったので近くのカフェに入って昼食を摂ることにした。
注文を済ませると料理が来るまでの間、レイナさんと話をすることにした。
話題はやはり今日のクエストについてだった。
「それにしても、今日の仕事は簡単でしたね」
彼女は微笑みながらそう言った。
確かに今回の仕事は楽勝だったかもしれない。
しかし、相手は低級とはいえ魔物だ。
油断はできないと思い、気を引き締め直すことにした。
それからしばらく歩いているうちに目的地に到着したようだ。
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