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「やあ、こんなところで会うなんて奇遇だね」
そう言って近づいてきた彼はこちらの肩を叩いてきた。
突然のことに戸惑っていると、彼は自己紹介を始めた。
彼の名前はグレンといい、この屋敷の主人であるグレン卿の弟であり、同じく後継者として育てられているそうだ。
彼は剣術が得意で、今日も訓練のためにここへ来ていたらしい。
そこで偶然にも俺と会ったというわけだ。
それにしても本当によく似ているなと思った。
髪型と髪の色が違うだけで、後は瓜二つと言っていいほどだ。
そう思いながら見つめていると、彼は不思議そうに首を傾げていた。
その様子を見て我に返った俺は慌てて謝罪した。
しかし、当の本人は特に気にしていない様子だったのでホッと胸を撫で下ろした。
その後、お互いに自己紹介を済ませてから他愛もない話をしているうちに時間が過ぎていき、気づけば夕方になっていた。
そろそろ帰ろうと思い立ち上がると、グレン卿が声をかけてきた。
「もう帰るのかい? もう少しゆっくりしていったらどうだい?」
そう言われたが、これ以上長居するわけにもいかないので丁重にお断りすることにした。
「いえ、大丈夫です。それにあまり遅くなると家の者が心配するので」
そう言うと、彼は残念そうな表情を浮かべた後で渋々納得してくれたようだった。
そして帰り際にもう一度挨拶を交わすと、屋敷を後にしたのだった。
翌日、いつものように冒険者ギルドへ顔を出すと、受付嬢から声を掛けられた。
「おはようございます、リュートさん」
彼女は笑顔で挨拶してきたので、こちらも微笑みながら返事をする。
「おはよう、アリアさん」
そのままカウンターに近づくと、一枚の依頼書を差し出してくる。
「こちらをどうぞ。昨日、薬草採取の依頼を受けた方が戻ってきたのですが、その際に追加で納品されたものなんです」
見ると、そこには見覚えのある植物が描かれていた。
たしか、昨日の帰りに寄った森で見かけたものだ。
その時は気にも留めなかったが、まさかこんな形で再会することになるとは思いもしなかった。
まあ、これはこれで好都合かもしれないなと思いながら依頼を受注することにする。
「じゃあこれを受けるよ」
そう言って手渡すと、彼女は笑顔を浮かべて受け取ってくれた。
それから準備を整えると、早速出発することにした。
目的地は街を出て北に向かった先にある森の中だ。
そこは先日、魔物に襲われた場所でもあるため、再び襲われる可能性があるということで調査を依頼されたのだ。
「よし、それじゃあ行こうか」
そう言って歩き出すと、皆もついてきた。
しばらく歩いているうちに辺りが薄暗くなってきたので、ここで野営をすることになった。
テントの準備をしていると、ふいに声をかけられた。
振り向くとそこにいたのはグレンだった。
彼はにこやかに微笑んでいたが、なぜか嫌な予感を覚えた。
そしてそれは的中することになる。
なんと彼は自分を嫁にしたいと言ってきたのだ。
もちろん自分は男だしそんなことできるはずがないと思うのだが、どういうわけか本気らしい。
どうしたものかと考えていると、突然背後から声が聞こえてきた。
驚いて振り返るとそこには1人の少女が立っていた。
彼女はこちらを見て微笑むと言った。
「初めまして、マスター」
そう言うと深々と頭を下げてきた。
どうやら俺のことをマスターと呼んでいるようだが一体どういうことなのか分からなかった。
困惑していると彼女が説明してくれた。
曰く、自分はある人物によって作り出された存在であり、その人物の願いを叶えるために生み出されたのだという。
そしてその願いというのが自分の所有者になって欲しいというものだったそうだ。
「うーん、なるほどねぇ……」
話を聞いた限りでは悪い子ではなさそうだと思ったが、まだ完全に信用できたわけではないので警戒しつつ質問を続けることにした。
「それで、その所有者っていうのは具体的にどうすればいいんだ?」
そう尋ねると、彼女は嬉しそうに答えた。
「はい、簡単なことです。私と契約してください。そうすれば私はあなたの忠実な下僕となります。
ご主人様の命令には絶対服従となりますので、なんでもお申し付けください」
そう言って跪くと頭を下げる。
なんだか変な感じだけど仕方ない。
とりあえず話だけでも聞いてみようかなと思い、彼女の申し出を受け入れることにした。
すると、その瞬間、俺の身体に異変が起こった。
全身が熱くなり、心臓が激しく脈打つような感覚に襲われる。
やがて視界がぼやけてきて意識が遠のいていくのを感じた。
最後に見えたのはこちらに手を伸ばす少女の姿だった。
次に気がつくと目の前には心配そうに顔を覗き込む少女がいた。
慌てて起き上がろうとするが、身体が重くて動かない。
そこでようやく気づいたのだが、どうやらベッドに寝かされているようだった。
周囲を見回すとどこかの部屋の中のようだ。
ここはどこだろうと思っていると、目の前の少女が話しかけてきた。
「よかった、目が覚めたんですね」
そう言って安堵の表情を浮かべる少女を見て、俺は戸惑いを覚えると同時に違和感を覚えた。
というのも目の前にいる少女はどう見ても女の子にしか見えないからだ。
しかもかなり可愛い部類に入るのではないだろうか?
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