上 下
152 / 236

152.

しおりを挟む
しばらくすると、アリアはゆっくりと目を開け始め、ぼんやりとした表情でこちらを見てきました。
まだ寝ぼけているのか、焦点が定まっていない様子です。
その様子を見ていると、なんだか微笑ましくなってきました。
そんなことを考えているうちに、
「おはようございましゅ……」
ようやく意識がはっきりしてきたのか、挨拶を返してくれました。
その様子を見て安心したので、朝食の準備をするために台所に向かいます。
今日のメニューは何にしようかなと考えていると、不意に後ろから声をかけられました。
振り返ると、そこには笑顔のアリアの姿がありました。
どうやら元気になったようで何よりですね。
そう思いながら、挨拶を返すと彼女も返してくれました。
その後、二人で協力して料理を作ることになりました。
とは言っても、簡単なものしか作れませんけどね……。
それでもないよりはマシでしょうし、何よりも楽しいですから問題ないのです!
それに、こうやって誰かと料理をするのは久しぶりなのでとても新鮮味を感じますね。
そんなことを考えながら、準備を進めているとあっという間に完成しました。
テーブルに並べて席に着くと、早速食べ始めることにしましょう。
うん、我ながら上出来ではないでしょうか!
美味しいですよ!
これなら満足してもらえるはずです!
そう思って彼女の方を見ると、驚いたような表情をしていることに気づきました。
どうしたんでしょうか……?
疑問に思っていると、彼女が話しかけてきました。
「あの、これ、どうやって作ったんですか……?」
そう言われて、一瞬戸惑いましたが、すぐに答えることができました。
「ああ、これは俺が自分で考えたんだよ。こう見えても、料理には自信があるんだぜ?」
自慢げに言うと、彼女は感心した様子でした。
そして、その後も色々と質問されましたが、全て答えてあげましたよ!
どうやら俺の回答が気に入ったらしく、しきりに感心していましたね。
そんな風に褒められると、
「いやあ、それほどでもねえよ!」
と言って照れてしまいますよ……!
まあ実際その通りなんですがねw そんなやり取りの後、俺たちは食事を終えました。
そして片付けが終わると、いよいよ出発する時間になりました。
玄関を出るとき、見送りにきたアリアが言いました。
「気をつけてくださいね」
という言葉に対して、俺は笑顔で答えました。
そして手を振りながら別れを告げると、そのまま街を出て行きました。
目的地までは遠いですが、頑張って行きましょうかね!
そう決意を固めたその時、背後から声をかけられたような気がしました。
振り返ってみると、そこにいたのはなんとアリアだったのです!
驚いて固まっている俺に構わず話しかけてくる彼女の言葉を聞いていると、どうやら俺のことを追いかけてきたらしいということが
分かりました。
「私もついていきます……!」
と言われてしまいましたが、さすがにそれはまずいと思い断ろうとしたのですが、
どうしても引き下がってくれませんでした……仕方ないので連れて行くことにしたんですが、
これからどうなることやら……心配しかありません。
そんなわけで仕方なく同行を許すことにしたんですけれども……
やっぱり不安しかないんですよね、これが。
しかし、ここで揉めても仕方がないですし、今は諦めることにしましょうかね。
というわけで、渋々ながらも了承することにしたわけですけど、問題は山積みなんですよねぇ。
まずは住む場所の確保ですよね、あとは生活費を稼ぐ手段も必要になるかもしれません。
そう考えると、やはり冒険者になるのが一番手っ取り早いかもしれませんね。
そうと決まればさっそく行動開始といきましょうか。
こうして、俺達は冒険者ギルドへと向かうことになったのである。
受付嬢に案内されて奥の部屋へと通されると、そこには一人の男性が待っていた。
彼は俺達に気づくと、立ち上がって出迎えてくれた。
「ようこそいらっしゃいました、私が当ギルドの支部長を務めている者です」
そう言って頭を下げる男性に向かってこちらも自己紹介をすることにする。
「初めまして、私はリュートと申します」
「同じく、ルミナスといいます」
二人揃って挨拶をすると、相手も同じように返してきた。
「こちらこそよろしくお願いします」
それからしばらくの間、世間話をしていたのだが、途中で話題を変えることにしたようだ。
「ところで、お二人はどのような目的でこの街へ来られたのですか?」
その質問に、どう答えたものか迷ってしまったが、正直に話すことに決めた。
「実は、私達はある目的があって旅をしている最中なのですが、路銀が尽きてしまいまして、それでこの街に立ち寄らせていただいた次第でございます」
俺がそう言うと、相手は納得したように頷いた後、続けて質問をしてくる。
「なるほど、そうでしたか。ちなみに、お二人はどちらの出身なのでしょうか?」
その言葉に、俺は思わず黙り込んでしまう。
というのも、今の俺たちに出身地など存在しないからだ。
何故なら、つい先日まで住んでいた村は既に滅びてしまったからである。
そのことを説明するわけにもいかず困っていると、代わりに隣の女性が答えてくれた。
「私たちは遠方にある小さな村の出身でして……恥ずかしながら故郷を失ってしまったのです。
そこで、各地を転々としながら生活していたところ、この王都に流れ着いたという訳です」
その言葉に、俺は内心で驚いていた。まさか、そこまで詳しく設定を考えてくれているとは思わなかったのだ。
だが、おかげで怪しまれずに済んだようである。
それを聞いた男性は同情するような表情を浮かべていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

勇者パーティー追放された解呪師、お迎えの死神少女とうっかりキスして最強の力に覚醒!? この力で10年前、僕のすべてを奪った犯人へ復讐します。

カズマ・ユキヒロ
ファンタジー
解呪師マモル・フジタニは追放された。 伝説の武器の封印を解いたあとで、勇者パーティーに裏切られて。 深い傷と毒で、死を待つばかりとなったマモル。 しかし。 お迎えにきた死神少女との『うっかりキス』が、マモルを変えた。 伝説の武器の封印を解いたとき、体内に取り込んでいた『いにしえの勇者パーティー』の力。 その無敵の力が異種族異性とのキスで覚醒、最強となったのだ。 一方で。 愚かな勇者たちは、魔王に呪いを受けてしまう。 死へのタイムリミットまでは、あと72時間。 マモル追放をなげいても、もう遅かった。 マモルは、手にした最強の『力』を使い。 人助けや、死神助けをしながら。 10年前、己のすべてを奪った犯人への復讐を目指す。 これは、過去の復讐に燃える男が。 死神少女とともに、失ったはずの幼なじみや妹を取り戻しながら。 結果的に世界を救ってしまう、そんな物語。

クラス転移、異世界に召喚された俺の特典が外れスキル『危険察知』だったけどあらゆる危険を回避して成り上がります

まるせい
ファンタジー
クラスごと集団転移させられた主人公の鈴木は、クラスメイトと違い訓練をしてもスキルが発現しなかった。 そんな中、召喚されたサントブルム王国で【召喚者】と【王候補】が協力をし、王選を戦う儀式が始まる。 選定の儀にて王候補を選ぶ鈴木だったがここで初めてスキルが発動し、数合わせの王族を選んでしまうことになる。 あらゆる危険を『危険察知』で切り抜けツンデレ王女やメイドとイチャイチャ生活。 鈴木のハーレム生活が始まる!

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

器用さんと頑張り屋さんは異世界へ 〜魔剣の正しい作り方〜

白銀六花
ファンタジー
理科室に描かれた魔法陣。 光を放つ床に目を瞑る器用さんと頑張り屋さん。 目を開いてみればそこは異世界だった! 魔法のある世界で赤ちゃん並みの魔力を持つ二人は武器を作る。 あれ?武器作りって楽しいんじゃない? 武器を作って素手で戦う器用さんと、武器を振るって無双する頑張り屋さんの異世界生活。 なろうでも掲載中です。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

パーティーを追放された落ちこぼれ死霊術士だけど、五百年前に死んだ最強の女勇者(18)に憑依されて最強になった件

九葉ユーキ
ファンタジー
クラウス・アイゼンシュタイン、二十五歳、C級冒険者。滅んだとされる死霊術士の末裔だ。 勇者パーティーに「荷物持ち」として雇われていた彼は、突然パーティーを追放されてしまう。 S級モンスターがうろつく危険な場所に取り残され、途方に暮れるクラウス。 そんな彼に救いの手を差しのべたのは、五百年前の勇者親子の霊魂だった。 五百年前に不慮の死を遂げたという勇者親子の霊は、その地で自分たちの意志を継いでくれる死霊術士を待ち続けていたのだった。 魔王討伐を手伝うという条件で、クラウスは最強の女勇者リリスをその身に憑依させることになる。 S級モンスターを瞬殺できるほどの強さを手に入れたクラウスはどうなってしまうのか!? 「凄いのは俺じゃなくて、リリスなんだけどなぁ」 落ちこぼれ死霊術士と最強の美少女勇者(幽霊)のコンビが織りなす「死霊術」ファンタジー、開幕!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

処理中です...