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まず、どこで寝ればいいのかという問題が発生したのだ。
当然ながら、同じベッドで寝るわけにはいかないだろう。
かといって、床に布団を敷いて寝るというのも現実的ではない気がする。
どうしたものかと考えていると、突然手を引かれたので振り返ると、そこにはアリアが立っていた。
彼女は俺の手を掴むと、そのまま歩き出した。
どこへ行くつもりなのかと思っていると、寝室まで連れてこられてしまった。
そこでようやく理解したのだが、
「あのぉー、まさかとは思うんですけど、ここで寝るつもりですかぁ……?」
おそるおそる問いかけると、返ってきた答えは意外なものだった。
どうやら正解だったらしい。
しかも、一緒のベッドで眠るつもりのようだ。
そんな馬鹿なと思ったが、今更断るわけにもいかないと思い諦めることにしたのだった。
翌朝目が覚めると目の前に美少女の顔があった。
驚いて声を上げそうになるもなんとか堪えることができたようだ。
(危なかった……それにしても綺麗だな……)
そんなことを考えているうちに目が覚めてきたようで、段々と意識が覚醒して
きたところで昨日のことを思い出した。
(そうだった……昨日……)
そう考えているうちに恥ずかしくなってきたので頭を振って考えを振り払った
ところで改めて目の前の少女を観察してみることにした。
「んむぅ」
気持ちよさそうに眠っているようだが、時折口元から涎を垂らしているので拭いてあげることにする。
ティッシュを取りに行こうかと思ったが、起こすのも悪いので自分の服の袖口で拭ってあげた。
すると、くすぐったかったらしく身じろぎをした後で目を開けた。
まだ寝ぼけているのかぼーっとしていたが、やがて焦点があってくるとハッとしたような表情になった。
それから顔を真っ赤にして俯いたまま動かなくなってしまったので頭を撫でてやるとビクッと身体を震わせたが、
しばらくすると落ち着いたようだった。
しばらくしてからようやく顔を上げたと思ったら、今度は急に泣き出してしまったのだ。
どうしたのかと聞くと、どうやら怖い夢を見たらしい。
内容は教えてくれなかったがよほど怖かったのだろうということは伝わってきたので慰めてやることにしたのだが、
「よしよし、もう大丈夫だから泣かなくていいんだぞ」
と言いながら頭を撫でていると次第に落ち着いてきたのか泣き止んでくれたのだった。
その後しばらく抱き合っていたのだが、不意にお腹の音が鳴ったことで我に返った俺達は朝食の準備をするために台所へ向かったのだった。
今日のメニューは何にしようかなと考えつつ冷蔵庫を開けてみると中には卵やハムなどが入っていたので
サンドイッチを作ることに決めた俺は早速調理に取り掛かることにしたのだった。
まずはフライパンを火にかけて温めておく間にボウルの中に小麦粉を入れてよくかき混ぜてから溶き卵を少しずつ加えていき、
さらにパンを細かくちぎって加えたら塩こしょうで味付けしてから最後にバターを加えてよく混ぜ合わせるのだ。
出来上がったものをまな板の上に取り出して包丁を使って半分に切ったら片方ずつ手に持って食べやすい大きさになるように
カットして皿に盛り付けると、次はスープの準備に取り掛かった。
鍋に水を入れてお湯を沸かした後で乾燥させた野菜と干し肉、そして先程作ったゆで卵を入れると数分煮込んでから味を整えるために
調味料を加えることにした。完成した料理をテーブルに並べると、ちょうど起きてきたアリア達がやって来たので一緒に食べることにしたのである。
食事を終えた後は食器を片付けた後で身支度を整えると玄関に向かうことにした。
今日は冒険者ギルドに行って依頼を受けるつもりなのだ。
ちなみに、装備に関しては問題ない。
元々使っていたものは全てアイテムボックスの中にあるからだ。
なので、いつでも取り出せるようになっている。
また、お金に関しても問題はない。
なぜなら、今まで稼いだ分は全てギルドカードに入っているからだ。
そんなわけで準備を終えると家を出ることにする。
すると、後ろから声をかけられたので振り向くとそこにはルミナスの姿があった。
どうやら見送りに来たらしい。
「行ってらっしゃいませ、ご主人様」
そう言ってお辞儀をする彼女に対して、俺も挨拶を返すことにする。
「ああ、行ってくるよ」
それだけ言うと、手を振って歩き出す。
すると、彼女も手を振り返してくれたのが見えた。その笑顔はとても可愛らしく見えた。
それから数分後には無事に目的地に到着した。
「ここが、王都か……」
思わず声が出てしまうほどに立派な街並みが広がっているのを見て圧倒されていた。
そして、これから自分が住むことになる場所へと向かうことにした。
そこは、貴族街と呼ばれる区画にある屋敷だった。
中に入ると、執事らしき人物に出迎えられた。
彼は、俺を部屋に案内してくれた後で、この家の主を呼びに行ったようだ。
その間に部屋の中を見回すことにした。
流石と言うべきか、かなり豪華な造りになっているようだ。
調度品なども高級そうなものばかりで、見ているだけでも飽きないくらいだ。
そうやって眺めているうちに、部屋のドアがノックされたので返事をすると、一人の男性が入って来た。
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