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「あれっ? 君は確か……」
そう言いながら近づいてくる人物を見て思い出した。
そう、その人物とは昨日知り合ったばかりの魔法使い見習いのサラという娘だ。
そして彼女と一緒にいるのは戦士風の男だった。
彼もまたこちらを見ていたので軽く会釈をするとあちらも返してくれたので
一安心といったところだろうか。
そんなことを考えている間に彼女達の方もこちらに気付いたらしく声をかけてくるのが見えたので近づいて行くと、
まず最初に口を開いたのはやはりと言うべきかやはりと言うか予想通りではあるが僧侶の娘の方であった。
彼女は開口一番こう言ったのである。
「こんにちは、初めましてですよね? 私の名前はリミスと言います!」
そう言って元気よく頭を下げる姿につられてこちらも頭を下げ返してしまった。
そんなやり取りをしている間ずっと無言だったもう一人の少女がようやく口を開きかけたその時、先に言葉を発した者がいた。
それは言うまでもなく目の前の少女の片割れでありもう片方でもある存在、すなわち僧侶の美少女エルナトであり、
その名を口にした瞬間に反応を示したのは言うまでもなかった。
(なるほどそういうことか)
二人の関係性については何となく察するものがあったがあえて口にはしないことにすることに決めた。
余計なことを言えば面倒な事態になりかねないと判断したからだ。
そうなるとどうしたものかと考えることになるわけだが、
「それじゃあ、行きましょうかっ♪」
楽しそうに笑う彼女を見ていて思うことがあった。
(ああ、そうか……こいつは俺と似ているのかもしれないな)
とそう思った瞬間、自然と笑みが溢れてくるのを感じた。
それはまるで鏡写しのような錯覚を覚えるほどだったが不思議と嫌な気持ちではなかった。
むしろ心地よいとさえ思えたほどだ。
だからこそなのかもしれないが、俺は無意識のうちに口を開いていた。
自分でも何を言おうとしているのかわからなかったが、気が付けば言葉が出ていたのだ。
それはある意味で衝動的なものだったのかもしれない。
あるいは本能的な何かによるものだったのか。いずれにせよ止められなかったのだ。
だから、次の瞬間にはこう言っていた。
その言葉を聞いた二人は揃って目を丸くしていたが無理もないことだろうと思う。
「ねえ、一緒に来ない?」
一瞬の間をおいて返ってきた答えは意外なものだった。
「……うん、いいよ。ついてく」
意外にもあっさりと承諾してくれたことに驚きつつも喜んでいる自分がいることに気付いて苦笑するしかなかった。
(まあ、いいか……)
こうして新たな仲間を得た俺たちは次の街を目指して旅を続けることになった。
そして、その道中で立ち寄った村や町で依頼をこなしつつ路銀を稼ぐ日々が続いたある日のこと、事件は起こった。
その日、俺たちが向かった先は森の中にある遺跡だった。
元々は何かの神殿だった場所らしく、かなり大きな建物だったが現在は見る影もなく荒れ果ててしまっていた。
周囲に人影はなく、
「ここは魔物の巣窟になっていて危険ですから、絶対に近寄らないようにしてくださいね」
などと村の人が話していたことを思い出す。
その時は、ただの噂話程度にしか思っていなかったのだが、実際に足を踏み入れてみるとその意味がよくわかった。
なにしろ、そこら中に罠が仕掛けられていたり、凶悪な魔獣が徘徊していたりするのだから、
命がいくつあっても足りないような状況だったのである。
幸いにも、ここまでの旅の中で培ってきた経験のおかげで、なんとか切り抜けることができたものの、
もし一人だったら確実に死んでいただろう。
それほどまでに危険な場所だった。
だが、そんな過酷な環境に身を置いていたからこそ、俺たちの絆はますます深まっていったように思う。
「ふぅ……やっと着いたな。それにしても、予想以上に時間がかかってしまったな。大丈夫か、二人とも?」
俺は後ろを振り返りながら声をかけた。
すると、すぐさま返事が返ってくる。
どうやら大丈夫そうだ。
その様子を確認した俺は安心して前を向くと、目の前に広がる光景を前にして思わず息を呑んだ。
そこにあったのは大きな扉だった。
おそらくこの先が目的の場所だということだろう。
意を決して足を踏み出すと、ゆっくりと開いていく扉の向こうから眩い光が溢れ出してくるのがわかった。
それと同時に聞こえてくる声がある。
(ようこそいらっしゃいました。私は女神エリスと申します。貴方達の活躍ぶりを見せていただきましたが、素晴らしい成果を上げているようですね。
そこで、ご褒美として、特別な力を授けようと思います。さあ、こちらへいらして下さい)
頭の中に直接響いてくるような声に従って進んでいくと、やがて視界が開けてきた。
そこは真っ白な空間で、周囲には何も存在しないように思えたが、よく見ると一人の女性が佇んでいることに気付く。
その姿は美しく、それでいてどこか神秘的な雰囲気を漂わせていた。
その美しさに目を奪われていると、彼女が口を開く。
その声はとても澄んでいて心地よく、聞いているだけで心が安らいできたような気がした。
それからしばらくの間、彼女と話をした後で、最後に名前を尋ねられた。
それに対し、自分の名前を告げると、相手は笑顔で頷いてくれた。
その瞬間、目の前が真っ白になり、意識が遠のいていった。
気がつくと、ベッドの上で横になっていた。
窓から差し込む朝日によって目が覚める。
起き上がって周囲を見回すと、自分の部屋だということがわかった。
昨日のことは夢だったのだろうかと思っていると、扉がノックされる音が聞こえてきた。
返事をすると、メイドさんが入ってきて朝食の準備ができたことを伝えてくれる。
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