勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる～魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する～

118.

そして、自分の失言に気づいたのか慌てた様子で謝罪の言葉を口にした。
そんな彼女の反応を見たことで、なんとなく察しがついた。
おそらく過去に何らかの関わりがあるのだろう。
だが、ここでそれを聞くわけにもいかないため、あえて気付かないフリをして誤魔化すことにした。
それに今はそれよりも大事なことがあるからな。
そう思って視線を戻すとアリアと目が合ったので微笑みかけてみることにした。
すると彼女も微笑み返してくれたので嬉しくなってさらに笑みを深くした。
その時ふとアリアの表情がいつもと違うことに気付いた。
具体的にどこが違うのかと聞かれると困るのだが、何となく違和感を感じたのだ。
そこで思い切って本人に尋ねてみることにした。
俺が質問を投げかける前に彼女が先に口を開いた。
「あら、もう終わりですか？では次は私が相手をしましょうかね」
と言って立ち上がりかけた彼女を手で制して止めると首を横に振った。
まだ話は終わっていないからだ。
「いや、待ってくれ。もう一つ聞きたいことがあるんだがいいか？」
俺がそう言うと不思議そうな顔をした彼女だったが黙って続きを促してくれたのでそのまま話を続けることにする。
その前に確認しておきたいことがあったので彼女に質問をすることにした。
その内容とは先程言いかけたことについてである。
なぜ自分が追い出されたのかその理由を知るために尋ねたのだ。
もし教えてくれるのであれば聞いておきたいと思ったからである。
俺の問いに対して彼女は少し考える素振りを見せたもののやがてゆっくりと首を縦に振った。
どうやら話してくれるつもりらしいと判断した俺は礼を言って頭を下げると改めて話を聞く態勢を取った。
それを見て頷いた後、話し始めた彼女に耳を傾けることにする。
「実は、貴方には少し特殊な事情がありまして、それが原因で皆さんとの関係が悪化してしまったのです」
と前置きした上で、彼女は説明してくれた。曰く、そもそもの原因は俺の種族にあったらしい。
なんでも、吸血鬼という種族は非常に珍しく、その中でも純血種と呼ばれる者は更に希少価値が高いそうだ。
そのため、多くの者が求める存在であり、中には無理やり手に入れようとする者も現れるため、危険に晒されることも少なくないという。
そういった背景もあって、俺を匿うことを決めたそうだが、それと同時にある問題が生じたのだという。
それは、他の仲間たちとの折り合いがつかなくなってしまったことだ。
最初は些細なすれ違いから始まったものだったが、それが次第に大きくなっていき、ついには修復不可能な状態になってしまったのだと聞かされた。
正直、そんな話は聞きたくなかったが、今さら聞かなかったことにはできなかった。
結局、最後まで話を聞かされることになったのだが、最後にアリアがこんなことを言い出した。
どうやら俺に伝えたいことがあるようだ。
一体なんだろうと思いながら待っていると、アリアはゆっくりと深呼吸をしてから話を始めた。
それを聞いているうちに段々と嫌な予感がしてきたが、もう遅いということはわかっていたので諦めるしかなかった。
そして、アリアの口から出た言葉は予想通りの内容だった。
要約すれば、今後は別行動をするので放っておいてほしいということだった。
つまり、仲間としては一緒にいるが、それ以外の関係にはなりたくないということだ。
「わかった、約束する。だから、これからも一緒にいてくれよな！」
そう宣言すると、笑顔で応えてくれる彼女が愛おしく思えた。
そして、これからは一人で旅をすることになると思うと少し不安になったが、
今更考えても仕方ないと思い直した。
そして、翌朝、目を覚ますと隣に彼女が寝ていることに気づいた。
昨夜のことは夢ではなかったんだなと思いつつも幸せそうな寝顔を見ているとなんだか微笑ましく思えてくる。
（可愛いな）
そう思いながら見つめているうちに自然と手が伸びて頭を撫でていた。
サラサラとした髪が指の間をすり抜けていく感触が心地良い。
しばらく続けているうちに目が覚めてきたようで、
うっすらと瞼が開かれていき目が合った瞬間ドキッとすると同時に恥ずかしくなってきたので咄嗟に手を引っ込めた。
その様子を不思議そうに見ていたが、特に追及してくることはなく安心した。
その後、朝食を済ませた後、俺たちは町を出て再び歩き始めた。
目指す場所はとりあえず北に向かって進む予定だ。
途中で道が分かれば右へ左へと進んでいくつもりだ。
道中、何度か魔物に襲われることもあったが、難なく撃退することができた。
ちなみに、今戦っている相手はオークの群れだった。
豚の頭を持つ人型の化け物で、知能は低いが力が強く、
武器の扱いにも長けているため油断はできない相手でもある。
中でも、一際大きな個体がいて、そいつが群れのリーダー格のようだ。
こいつを倒せば統率を失い、烏合の衆となるだろう。
そうなれば、後は楽勝だ。
そんなことを考えているうちに、戦闘が始まった。
まずは小手調べとばかりに、火球を放ってきた。
しかし、俺には通用しない。
魔法で障壁を展開して防ぐと、お返しとばかりに雷撃を放った。
直撃を受けた敵は黒焦げになり、息絶えていた。
それを見た残りの連中は怖じ気づいたのか、背を向けて逃げ出そうとするも、逃がすつもりはない。