勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音

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その様子を見た俺は安心させるように手を握ってやると、少しだけ表情が和らいだ気がした。
「よって、これより魔王軍による襲撃を行うものとする、なお、今回の作戦においては、俺と、そこにいる元魔王のエルナが指揮を取ることになる、以上、解散!!」
その言葉を聞いた瞬間、その場は騒然となった。
無理もないことだろう、何せ相手はあの悪名高い魔王なのだから、警戒しない方がおかしいのだ。
しかし、だからといってこのまま黙っているわけにもいかない、意を決して話しかけてみたところ、意外にも友好的に接してくれたので助かった。
だが、それも束の間のことで、すぐに態度が豹変すると、襲いかかってきたのである。
突然のことに驚いたものの、何とか躱すことができた。
それから何度か攻撃を繰り返すうちに、相手の動きが鈍ってきたことに気づいたので、一気に畳み掛けることにする。
こうして、俺達は無事に勝利することができたのだが、これで終わりではないということを思い知らされることになるとは、この時の俺には知る由もなかった。
数日後、王都にて開かれた表彰式において、新たな王が誕生したことを宣言されたことで、この国の歴史が大きく変わることになったのであった。
ちなみに、その隣には何故かアリアの姿があったという。
何でも、彼女も正式にこの国の国民となったらしい。
しかも、王妃として迎え入れられたというのだ。
それを聞いた時は流石に耳を疑ったものだが、実際に謁見の間で彼女と再会した時には、既に身籠っていることが分かったため、
もはや何も言えなくなってしまった。
その後、彼女は無事出産すると、女の子を出産して、その子はアルディアと名付けられることになった。
名前は二人で決めたもので、由来はラテン語で、意味は絆を意味するらしい。
また、男の子の方は、アステリアと名付けられた。
この子には、将来、立派な王に育ってほしいという思いが込められているそうだ。
そんなこんなで、現在、俺たちは新しい生活を始めるために、新居の準備を進めているところだ。
と言っても、元々、荷物は少ないので、そこまで時間はかからないだろうと思っていたのだが、いざ始めてみるとこれがなかなか大変だった。
というのも、アリアが張り切ってしまったせいで、どんどん家具やら何やらが増えてしまったからだ。おかげで作業はなかなか進まず、
俺は一人で魔王城に戻ると溜息を付いた。
「魔王様、お話がございます」
兵士に言われて戸惑ってしまう。
「え? はい、なんでしょう?」
思わず敬語になってしまうと、兵士たちの表情が変わったような気がした。
「いえ、実はですね、最近、この辺りで怪しい人物が現れたとの報告がありまして」
そう言われて、思い出すことがあった。そういえば、この前、変な奴に襲われたっけな、まさかあれのことだろうかと思っていると、どうやら当たりだったようだ。
「そいつの特徴を教えてくれないか」
尋ねると、彼は一枚の紙を取り出して読み上げ始めた。
その内容によると、黒いローブを着た人物が目撃されているらしい。
性別は不明で、フードを被っていたため顔は見えなかったとのこと。
ただ、身長はかなり高く、体格もがっしりしていたらしく、俺はそこまで聞いて勢い良く立ち上がった。
「どうかされましたか?」
俺はクロードの墓の場所を目視して悟った。
「あの馬鹿親父め」
そう叫ぶとそのまま走り始める。
背後から制止の声がかかるが無視をする。
そして墓地へと辿り着くと周囲を見回す。
そして、そのまま墓石に手をかざすと
サクリファイス幻惑解除
そう唱えると墓石の有った場所の霧が晴れて行く。
墓石は開かれていた。
そして棺は空っぽだった。
父親は魔族を大切にしていた、この状態で行くところは……。
アリアが危ない。
そう思った瞬間にはもう体が動いていた。
急いで転移魔法を唱えると彼女の屋敷まで飛ぶのだった。到着すると扉を乱暴に叩く、反応はない、ならば強行突破だと扉を蹴破ると中に押し入った。
中ではメイドたちが悲鳴を上げているのが見えたが俺の目には彼女しか映っていなかった。
二階へ駆け上がると寝室に飛び込んだ。そこに居たのはやはりと言うべきか予想通りの人物だったが予想外でもあった。
何故ならそこには全裸の少女が横たわっていたのだからである。
俺は一瞬思考が停止した後慌てて目を逸らすとその少女はゆっくりと起き上がると言った。
「あらぁ~来ちゃったんですかぁ~」
そう言って笑みを浮かべる少女を見て頭が痛くなった俺は額に手を当てながら尋ねた。
「お前は誰だ?」
「随分と、無粋では無くて? 愛しい、我が子よ」
それで気づく彼女の手に首が握られている事に、
「父さんアリアは悪くない」
「そう? では、我が子に問うわ、彼女が悪くないのなら、誰が悪いのかしら?」
「父さん、ごめん、ごめんなさい」
俺は必死に謝るが、許してもらえない、それどころか余計に怒らせてしまったようだ。
俺は必死に許しを乞うが無駄のようだ。
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