勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音

文字の大きさ
上 下
109 / 236

109.

しおりを挟む
翌日、再び冒険者ギルドを訪れた俺達だったが、ギルドマスターからの呼び出しを受けて支部長室へと向かった。
ノックをすると中から返事が聞こえてきたので扉を開けると、そこにはアリアの姿があった。
彼女はこちらに気づくと手を振ってきたので、こちらも振り返すと部屋の中へと入っていった。
部屋に入ると、早速用件を聞くことにした。
「それで、今日は何の用ですか?」
尋ねると、彼女は一枚の紙を差し出してきた。
受け取って見てみると、それは契約書のようだった。
「実はね、あなたにお願いがあって来たのよ」
その内容に目を通してみると、そこに書かれていたのは予想外のものだった。
内容はこうだ。この少女を預かって欲しいというものだった。
もちろん報酬も出るらしい。
何故こんなことを言い出したのか不思議に思ったが、ひとまず話を聞いてみることにした。
話を聞く限りだと特に問題はなさそうな感じだったからだ。
ただし、いくつか条件があるとのことだったが……、
「わかったわ、引き受けましょう」
そう言うと、契約が成立した証として握手を交わした。
これで晴れて仲間になったわけだが、ここで問題が発生することとなった。
それは、彼女が魔族であるということだ。
もし、その事実がバレてしまえば大変なことになることだろう。
最悪の場合、討伐対象にされてしまうかもしれない。
そう考えると、とても不安になってきた。
しかし、今更引き返すこともできないので覚悟を決めるしかなかった。
そして、数日後、ついに出発の時がやってきた。
見送りにはアリアと彼女の母親、それと一部の冒険者達が来ていた。
その中には、フィリアの姿もあった。
彼女は笑顔で手を振っているのが見えた。
「じゃあ、行ってくるよ」
そう言って馬車に乗り込むと、ゆっくりと動き出した。
目指す場所はここから西にある港町で、そこから船に乗って別の大陸に向かう予定となっている。
しばらく進むと国境が見えてきた。入国審査を受けるため列に並ぶこと数時間、ようやく自分達の番が来たので手続きを済ませると、
いよいよ町の中へと入ったのだった。
そこは活気のある町で、多くの人々で賑わっていた。
大通りを歩いていると、あちこちから声をかけられるので、その度に立ち止まって対応していた。
そんな中、ふと路地裏に目を向けると、何やら怪しげな雰囲気を感じた。
気になった俺はそちらに向かって歩いていくと、そこには一人の少女が倒れていた。
慌てて駆け寄ると、
「大丈夫か!?」
声をかけるが返事はない。よく見ると酷い怪我を負っており、息も絶え絶えの状態のようだ。放っておけば間違いなく死んでしまうだろうことは
容易に想像できた。
(くそっ! どうすれば良いんだ!?)
必死に考えを巡らせていると、あるアイデアが浮かんだ。
これならいけるかもしれないと思い実行することにした。
父・クロードが見せてくれた眷属にする魔法、そう思い咄嗟に唱える。
「我、この者を眷属として求め願う、ソウル・ファミリア」
すると眩い光が彼女の身体を覆うと傷が癒えて
「えっ、なにこれ、痛くない、なんで、どうして、私、生きてるの?」
と、自分の身体を見て驚く彼女、どうやら成功したようだ。
俺は安堵すると同時に、自分がやったことに恐怖を覚えた。
人を殺した訳ではないとはいえ、眷属にしてしまう魔法、自分もかけられたからこそわかる、これは悪魔の魔法であると、彼女が目を覚ますと
「俺が分かる?」
「魔王リュート様、我が主様ですわ」
「死にそうだったから、命を繋ぎ止める為に、君を俺の眷属にした、だから今日から君は家族だよ」
「嬉しい……です」
泣きながら抱きついてくる彼女を優しく抱き返すと、初めて魔王らしい事をしたなっと思った。
眷属に認定しているものは居なかったし、作る気は無かったのだ。
しかし、してしまった事は仕方ない、俺はそう思い返してそのまま彼女を抱き上げて歩き出した。
「ま、魔王、ここにおいででしたか」
そう言えばここは俺の領土何だっけっと思い頷いた。
「その、盗賊が、魔王を出せっと」
「はぁ、分かった、行くよ」
俺は仕方なく、フィリアと手を繫いで歩いて行った。
門の前に行くと、門番らしき兵士が槍を構えていた。
俺はそれを無視して中に入ると、兵士は慌てて止めようとするが、無視して歩き続けた。
途中、何人かの村人とすれ違ったが、皆一様に頭を下げていた。
そうして、広場に出ると、大勢の人々が集まっていた。
彼らは口々に、
「魔王様だ!」とか、「あれが魔王か」などと、言っている。
中には、石を投げてくる者もいたが、それらは全て障壁によって弾かれてしまった。
それを見て、皆が唖然とする中、俺は堂々と前に出て口を開いた。
「魔王のリュートだ、今日はお前達に話があって来た」
俺がそう告げると、ざわめいていた群衆が一瞬で静まり返った。
全員がこちらに注目しているのを確認して、言葉を続ける。
「先日、ここにいるフィリアが襲われた、幸いにも未遂に終わったが、もしもの事を考えると、このまま放置しておく訳にはいかないと判断した」
そこで一旦言葉を切ると、今度は隣にいるフィリアを紹介することにした。
彼女は緊張しているのか、少し震えているようだったが、それでもしっかりと前を向いていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

処理中です...