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俺に構わず続ける彼女に戸惑いつつも黙って
聞いていることしか出来なかったわけなのだが、
それでもお構いなしとばかりに喋り続けていたりするわけで、
どうしたらいいのかと頭を悩ませていた時のことであった。
突如として現れた人影を目にした俺達は一斉に警戒態勢に
入った訳だが、しかし次の瞬間そいつはとんでもないことを
言い出したではないか……!
(なっ何だこいつは……!
一体どこから出てきたと言うんだ……?
まさか魔法か何かを使ってきたのか?
それともスキルによるものか、いやそれよりも何故ここに居るんだっ、おかしいだろ普通だったら真っ先に気付くはずじゃ、
それなのにこいつは一切気配を感じさせなかったぞ、どうなっているんだいったいどうなってやがるんだよクソッ!!)
内心パニックに陥っていたもののそれを表に出さないように
努めて冷静に振る舞うように努めたのだがそれが功を
奏したらしく相手もまたこちらの様子を窺っているだけの
ようである。
そこで、思い切って話しかけてみることに決めた。
(よし、行くぞ)
そう決意するとゆっくりと深呼吸をしてから再び口を
開くと言葉を紡ぎ出した。
その瞬間目の前の人物がビクリと肩を震わせたように
見えた。
が恐らく気のせいだろう、きっと自分の思い過ごしに違いない。
気を取り直してから改めて話しかけようとして、ふと気付いたことがあったので確認してみる事にした。
もしかしたら違うかも知れないしな……そう思った為である。
ようするにそういう事なのである。
そして案の定そうだった訳であるが、
ここまで来ると最早疑いようもないレベルにまでなっていると
言っても過言ではないであろう。
俺はため息を着くと、諦めて覚悟を決めることにした。
もうこうなったらとことんやってやるさ……!!
そう心に決めると早速行動に移すべく、
俺は行動を起こすことにしたのだ。
先ず最初に行ったことは情報収集であった。
というのも、今の俺の状況では満足に出歩くこともまま
ならない上に、仮に出来たとしてもすぐに捕まってしまう
恐れがあるからだ。
なので慎重に慎重を重ねて行動する必要があると考えたのである。
俺は魔王・リュートだ、確かに俺一人なら、
この程度余裕だろうが、ここには人間族しかいないからなぁ……。
どうしようかと悩んでいると、少女が話し掛けてきた。
俺は少女の方に向き直ると返事をした。
どうやら怪我はないようだな、ひとまず安心といったところだな。
後はここからどうやって逃げるのかを考える必要があるが、
「その前に一つ聞きたい事があるんだけどいいかな?」
そう尋ねると、こくりと頷いて続きを促して来た。
それを確認した後で俺は質問を投げかけた。
なぜこんな事をしたのか、どういうつもりだったのかと
問い詰めたのだが、彼女は黙り込んでしまって何も答えなかった。
その様子を見て、やはり何かあったのではないかと
考えているところに彼女が突然顔を上げて叫んだ。
俺は、驚いて硬直してしまったが、何とか気持ちを落ち着かせて尋ねる事にしたのだった。
「どうしたんだよ急に大声出して、びっくりするじゃないか!」と文句を言うように言ったのだが、どうやら聞こえて
いないようで、ぶつぶつ言いながら何かを呟いているだけだった。よく見てみると、その瞳には涙が溜まっており、
今にも零れ落ちそうなほどになっていた。
それを見て、ますます心配になった俺は声をかけようと
したその時、ようやく気が付いたようだった。
慌てて取り繕うように笑顔を作るとこう言った。
「ううん、何でもないの。それより、本当にごめんなさい。
謝って済む問題じゃないのは分かっているのだけれど、でも、どうしても謝らないと気が済まなくて……」
そう言う彼女の声は震えていた。
よほど後悔しているのだろうということが伝わってきた。
そんな彼女に対して、俺は言った。
「もういいよ、済んだことだしな」
そう言いつつも内心ではかなり複雑な気持ちだったが、
表には出さないように気をつけながら、俺は話題を変えることにした。
俺は最近何をしているのか、とか遊んでいるのかとか、聞いていると、その後しばらく他愛もない話をした後、
別れることになった俺たちは、それぞれの家路についた。
家に帰る途中、何度も後ろを振り返って、ミレイの姿を探す。
その度に、胸が締め付けられるような気持ちになる。
それは決して不快なものではなく、むしろ心地良い
くらいのものだったけれど、同時に寂しさもあった。
そんな感傷に浸りながら歩いているうちに、いつの間にか
自宅に到着していたようだった。
中に入ると、母が出迎えてくれた。
母は俺の顔を見ると驚いたように目を見開いた後、
優しく微笑んで、抱きしめてくれた。
母の温もりを感じながら、自分が生きている事を実感できたような気がしたがそれも束の間の事だった。しばらくすると落ち着いたのだろうか、身体を離すと言った。
「お帰りなさいませご主人様!」
と元気よく挨拶をしてくる様子を見ていると何だかこちらまで元気になれるような気がして嬉しくなったものだ。
そんなことを考えている間に、母の手が頭に乗せられている事に気付き見上げるようにして視線を合わせてくるのを
見ているうちに恥ずかしくなって目を逸らそうとした時に
「父さんはなんで母さんを、連れて逃げなかったのかな……」
そんな疑問を口にした時、ふいに背後から抱きしめられる感触がして振り向くと、そこにはフィリアの姿があった。
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