上 下
44 / 236

44.

しおりを挟む
その後の話によれば、母のお腹の中には新しい命が育っておりいずれは、その子が生まれてくるそうだがそれまでの間は、
二人で暮らしていくこととなり色々と不安はあったがこうして一緒に過ごせると思うと嬉しかった。
それと同時にクロードに対する想いにも改めて気付かされる事になり複雑な心境でもあった。
(結局、俺はどちらを選ぶべきなんだろう……?)
そう思い悩み始めた頃、クロード達がやってきた。
彼女達が訪ねてきた理由はわかっているつもりだが、その前に言っておかなければならないことがある。
なのでまずはそちらを優先する事にした。
そのために俺はある場所へと向かった。
その場所で待ち受けていたのは、 クロード達ではなく父の仇であった魔物の首領だったのである。
そう、ここはかつて住んでいた家であり、現在は魔物の巣窟となっている場所でもあった。
「待っていたよ、クロード」
そう言って嬉しそうに微笑む姿を見て苛立ちを覚えつつも冷静さを保つように努めたが無駄だったようだ。
何故なら既に限界だったからだ……。
しかし奴はお構いなしに話しかけてくる。
それに対して返事をせずに無視を決め込んでいたらいつの間にかいなくなっていたようで、ホッとする間もなく今度は背後から声が聞こえてきたと
思ったら奴が現れたのだった。
よりにもよって女の姿に戻っているものだから余計に腹が立ったのだが相手はそんなことを、知るはずもなく一方的に喋り続けていて正直うざかった。
なので無視してやり過ごすことを決めてひたすら黙っていたところ不意に奴が話しかけてきたのだ。
それもいきなりキスされそうになっていたのでとっさに避けることに成功したが、
それでも執拗に追ってくる相手に恐怖を抱きながらなんとか逃げようと考えていたところで後ろから抱きしめられてしまった。
「ニーナ!」
驚いて名前を呼んだのだが返事はない。
代わりに返ってきたのは別のものだった。
しかも聞き覚えのある声で名前を呼ばれた気がしたが声の主を確かめようとするよりも先にクロードに助けを求めようと手を伸ばした瞬間、
その手を掴んできて抱き寄せると再び唇を重ねられたのだった。
それからしばらくして解放されるも、まだ息苦しさは残っていたので荒い呼吸をしていると、それを見た彼が言う。
「ごめん、大丈夫?」
そう言って手を差し伸べてくるも今はそれどころではないのでやんわりと断りつつ呼吸を整えるとゆっくりと立ち上がり歩き出す。
それに釣られるようにニーナも一緒について来ようとしたがクロードによって止められていたのを見て、ホッとしたような残念なような、
複雑な気分になりながら歩いていると途中で休憩することになった。
「ごめんね」
ニーナに謝罪しつつその場に座り込んでいたのだがそこで彼女は言った。
どうやら先程のことらしいのだが気にすることはないと言うつもりだったが言葉にできなかったために頷くだけに
留めるも伝わっていない様子だったが、まあいいかと思った時に異変が起こる。
急に目眩に襲われてしまったのだ。
その原因はすぐにわかったがどうしようもなかった。
何せ自分の身体が徐々に縮み始めているのだ。
そのことに焦っているとニーナが慌てて駆け寄ってきたので咄嗟に離れるように、
促すが聞いてもらえなかっただけでなく逆に強く抱きしめられて困惑してしまう。
クロードとニーナは何か言い合っているようだが声が遠くに聞こえているように感じ、頭がクラッとなって来た頃に、
ようやく収まったのだが安堵したことで身体の力が抜けていき倒れそうになったのでそのまま意識を失った。
次に目を覚ました時、視界に入ってきた人物の顔を見て安心した後で周囲を見回してみるが見覚えのない部屋にいるので、
戸惑っていると不意に声をかけられて顔を上げるとそこには二人の美少女がいた。
それを見て誰なのか聞こうとすると不意に眠気が襲って来て抵抗しようとしたが間に合わず眠りについてしまった……。
2話 あれからどのくらい経ったのだろうか、時間感覚が麻痺してしまっているのかわからなくなっていたが今はそんなことよりもこの身体を
元に戻さなくてはという気持ちで一杯だったのだが、肝心のクロード達の姿が見えないことに気付いて途方に暮れていると
唐突に部屋の扉が開かれたので目を向けてみるとそこには一人の少女がいた。
その姿はどこか懐かしく思えるもののどこで会ったのか全く思い出せないため悩んでいると少女はこちらに近づいて来ると笑みを浮かべながら話しかけてくる。
「久しぶりね」
その言葉に首を傾げてしまうものの何も思い出せずに考え込んでいると、そんな様子を見た彼女が答える。
「私はリスタ=ルベリドと言います、よろしくお願いいたしますわ」
そう言われて自己紹介されていないことに気付き名乗ることにする。
そうしてお互いの名前を知ることが出来たのだが彼女の様子が変わったことに気付いたものの理由がわからずに戸惑ってしまう中、
質問してみると答えてくれたので納得してしまった。
その理由について説明してもらう中で理解できたのは以下の事だった。
1つ目は今の彼女の姿が偽りであるという事実だが、これは以前見せてもらった時と違いすぎるということから察することができた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者パーティー追放された解呪師、お迎えの死神少女とうっかりキスして最強の力に覚醒!? この力で10年前、僕のすべてを奪った犯人へ復讐します。

カズマ・ユキヒロ
ファンタジー
解呪師マモル・フジタニは追放された。 伝説の武器の封印を解いたあとで、勇者パーティーに裏切られて。 深い傷と毒で、死を待つばかりとなったマモル。 しかし。 お迎えにきた死神少女との『うっかりキス』が、マモルを変えた。 伝説の武器の封印を解いたとき、体内に取り込んでいた『いにしえの勇者パーティー』の力。 その無敵の力が異種族異性とのキスで覚醒、最強となったのだ。 一方で。 愚かな勇者たちは、魔王に呪いを受けてしまう。 死へのタイムリミットまでは、あと72時間。 マモル追放をなげいても、もう遅かった。 マモルは、手にした最強の『力』を使い。 人助けや、死神助けをしながら。 10年前、己のすべてを奪った犯人への復讐を目指す。 これは、過去の復讐に燃える男が。 死神少女とともに、失ったはずの幼なじみや妹を取り戻しながら。 結果的に世界を救ってしまう、そんな物語。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

無能テイマーと追放されたが、無生物をテイムしたら擬人化した世界最強のヒロインたちに愛されてるので幸せです

青空あかな
ファンタジー
テイマーのアイトは、ある日突然パーティーを追放されてしまう。 その理由は、スライム一匹テイムできないから。 しかしリーダーたちはアイトをボコボコにした後、雇った本当の理由を告げた。 それは、単なるストレス解消のため。 置き去りにされたアイトは襲いくるモンスターを倒そうと、拾った石に渾身の魔力を込めた。 そのとき、アイトの真の力が明らかとなる。 アイトのテイム対象は、【無生物】だった。 さらに、アイトがテイムした物は女の子になることも判明する。 小石は石でできた美少女。 Sランクダンジョンはヤンデレ黒髪美少女。 伝説の聖剣はクーデレ銀髪長身美人。 アイトの周りには最強の美女たちが集まり、愛され幸せ生活が始まってしまう。 やがてアイトは、ギルドの危機を救ったり、捕らわれの冒険者たちを助けたりと、救世主や英雄と呼ばれるまでになる。 これは無能テイマーだったアイトが真の力に目覚め、最強の冒険者へと成り上がる物語である。 ※HOTランキング6位

勇者パーティー追放された支援役、スキル「エンカウント操作」のチート覚醒をきっかけに戦闘力超爆速上昇中ですが、俺は天職の支援役であり続けます。

カズマ・ユキヒロ
ファンタジー
支援役ロベル・モリスは、勇者パーティーに無能・役立たずと罵られ追放された。 お前のちっぽけな支援スキルなど必要ない、という理由で。 しかし直後、ロベルの所持スキル『エンカウント操作』がチート覚醒する。 『種類』も『数』も『瞬殺するか?』までも選んでモンスターを呼び寄せられる上に、『経験値』や『ドロップ・アイテム』などは入手可能。 スキルを使った爆速レベルアップをきっかけに、ロベルの戦闘力は急上昇していく。 そして勇者一行は、愚かにも気づいていなかった。 自分たちの実力が、ロベルの支援スキルのおかげで成り立っていたことに。 ロベル追放で化けの皮がはがれた勇者一行は、没落の道を歩んで破滅する。 一方のロベルは最強・無双・向かうところ敵なしだ。 手にした力を支援に注ぎ、3人の聖女のピンチを次々に救う。 小さい頃の幼馴染、エルフのプリンセス、実はロベルを溺愛していた元勇者パーティーメンバー。 彼女たち3聖女とハーレム・パーティーを結成したロベルは、王国を救い、人々から賞賛され、魔族四天王に圧勝。 ついには手にした聖剣で、魔王を滅ぼし世界を救うのだった。 これは目立つのが苦手なひとりの男が、最強でありながらも『支援役』にこだわり続け、結局世界を救ってしまう。そんな物語。 ※2022年12月12日(月)18時、【男性向けHOTランキング1位】をいただきました!  お読みいただいた皆さま、応援いただいた皆さま、  本当に本当にありがとうございました!

異世界で作ろう「最強国家!」

ハク
ファンタジー
黒上 優斗は暴走車に跳ね飛ばされ死亡した。だが目を覚ますと知らないとこにいた。豪華な場所で右側には金髪美女がいる。 魔法が使えない優斗ことユート・オリビアは現代兵器やその他特殊能力で国を建国し様々な困難に立ち向かう! 注意! 第零章ではまだ国家を建国しません……おそらく! 本作品は「小説家になろう」「カクヨム」に投稿しております 2021年5月9日 アルファポリスにも投稿開始!

俺だけ異世界行ける件〜会社をクビになった俺は異世界で最強となり、現実世界で気ままにスローライフを送る〜

平山和人
ファンタジー
平凡なサラリーマンである新城直人は不況の煽りで会社をクビになってしまう。 都会での暮らしに疲れた直人は、田舎の実家へと戻ることにした。 ある日、祖父の物置を掃除したら変わった鏡を見つける。その鏡は異世界へと繋がっていた。 さらに祖父が異世界を救った勇者であることが判明し、物置にあった武器やアイテムで直人はドラゴンをも一撃で倒す力を手に入れる。 こうして直人は異世界で魔物を倒して金を稼ぎ、現実では働かずにのんびり生きるスローライフ生活を始めるのであった。

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

処理中です...