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気がつくと、朝になっていたらしく、窓から差し込んでくる朝日の眩しさに目を細めているとクロードの姿が視界に入ってくる。
それを見た途端一気に眠気が吹き飛んだ俺は起き上がると同時に挨拶を交わした。
「おはよう、父さん」
そう言って笑いかけると彼も返してくれたのでほっとした気持ちになった後に、朝食の準備に取りかかることにした。
しかし、立ち上がろうとした時に気づいてしまうことがあったのだが、どうやら昨日までの自分は男だったはずなのに女になっていることに、
今更ではあるが気づいたことで、これからどうすればいいのだろうかと考えていた時である。
ふと思いついたのは魔法を使えばいいのではないかということだったので早速試してみることにして心の中で念じてみたり、
唱えたりしていると少しずつだが感覚的にわかるようになってきていたような気がしている内に徐々に慣れてくると、
スムーズに出来るようになったことで嬉しくなったりもしたわけだが、そんなことをやっている内に、
時間が経ってしまっていたような気がしなくもないというか、
気のせいじゃなかったのかもしれないと思ってしまい反省していたのだが、
その時にはすでに遅く、 準備はとっくに終わっていた上に時間も押している状態だったこと。
それらを知ったことでショックを受けていた。
ただ、それ以上に衝撃を受けたのが食事の時のことで、 なぜか隣に座ってきたニーナの姿に動揺しつつも話しかけようとするも、
クロードの無言の圧力に押されて大人しく座っているしかなかったことを思い返すとため息しか出なかったが、
そんな時に唐突に言われた言葉のおかげで気分が楽になったのは言うまでもないが、
その内容を聞いて納得してしまった自分もいるのでなんとも言えない気分だったのは、ここだけの話だ。
あれから数日が経ったわけだが、相変わらず家から出ることは出来ずにいた。
それもこれも全てニーナのせいだと思っているが今は仕方ない。
というのも現在、俺達は旅に出ているからだ。
旅の目的というのが俺のレベルを上げるためという名目だが本当は違うのではないかと思う。
なぜなら、俺達以外に誰も同行者がいないからだ。
そのことをクロードに尋ねると、ニーナの父親でもある彼は笑いながら言うのだ。
お前が気にする必要はないと言われては何も言えなかったし、何よりもニーナが喜んでいる様子だったので、それでいいと思った。
だけど、ニーナが時折向けてくる悲しそうな眼差しの意味をこの時の俺はおろか、クロードでさえ気付くことは出来なかった……。
ニーナの話では、俺の父親にあたる人物は人間の街にいるそうでそこを目指して歩いている。
その街の名前を聞いた時、どこかで聞いたことがあるような気がしたので尋ねてみたが思い出せないので気にしないことにした。
そうして歩き続けること数時間後、ようやく目的の場所にたどり着いたのだがそこは、かなり賑わっていて賑やかなところだった。
街並みを見ながら感慨に浸っているとクロードが言うには、ここからが俺の修行の場らしいのだが未だに信じられないでいたりする。
とりあえず宿屋を探すことになり見つけた宿で一泊してから翌朝になって出発することになるのだがここで問題が発生することになるなんて誰が想像できただろうか……。
「あれ? これって、クロード……じゃない?」
そこで目にしたのは一枚の絵である。
それを手に取りまじまじと見つめているとニーナから説明を受けるのだが、この絵のモデルになった人物が、 今ここにいるクロードなのだとか……。
その事実に驚きながらも、クロードを見ると何故か照れているようだったのでそっとしておこうと思いその場を後にすると街中を歩いてみることにする。
そんな中、すれ違う人達の視線を感じる気がするのは気の所為ではないはずだ。
「それにしても本当に可愛いよなぁ」
不意にかけられた声に振り返るとそこには知らない男の姿があった。
その男はニヤニヤしながらこちらに近づきながら言った。
すると俺の身体に手が伸びてきて、触れられた瞬間、ぞわっとするのを感じたが振り払うこともできずされるがままになっていた。
(やばい、気持ち悪い……)
そう思っているうちに男は、顔を近づけてきたのだが嫌悪感でいっぱいだった。
顔を背けようとしたものの出来なかったので、我慢することにしたのだが、男が何をしようとしていたのか気付いた時には手遅れになっていたようだった。
(くそっ……こんなところで!)
悔しく思っている間に男の唇が近づいてきて触れるか触れないかわからない程度の位置にまで迫ってきたその時、
背後から声がしたかと思うと、 目の前にあった男の顔が消えた。
「えっ?」
何が起きたのかわからなかったので呆然としていると誰かが助けてくれたようだ。
その人はとても美しい女性だったが、同時に怖いとも思った。
だからなのだろうか……、気がつけば逃げ出していたのだが、追いかけられることなどなかった。
その日の夜、俺はある夢を見た。
夢に出てくる女性はどことなく母親の面影があるような気がするがきっと勘違いだろう。
そんなことを考えながら目を覚ますとすぐに部屋を出て、外へと向かう。
「どこに行くのですか?」
突然声をかけられたことに驚きつつも振り返り見るとそこにいたのはやはり母だった。
なんでこんなところにいるんだと思いながら固まっていると母が微笑みながら声をかけてきた。
「どうしたのですか? そんな顔をして……」
その言葉に思わず聞き返してしまう。
どうして生きているのか、あの時、父は死んだはずなのにと思ったがそれは違った。
父が死んだのは間違いなかったのだ。
その証拠に目の前に立っている母は若返っておりどう見ても二十代前半にしか見えない上に髪の色や顔立ちも同じであるため間違いないと言える。
そして父が死に自分が後継者として選ばれた経緯についても教えてもらったところで自分の中に眠る魔力の存在を知ることになったのである。
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