上 下
40 / 236

40.

しおりを挟む
(どうしたんだろう……?)
不思議に思っていると、ルーティアが話しかけてきた。
「どうかしたの?」
それに対して、クロードは何でもないと答えると、ルーティアに手を引かれたのでそのままついていった。
ルーティアの家に着くと、彼女は中に入っていったので後に続いた。
家の中に入ると、そこは綺麗に掃除されていた。
それを見て感心していると、ルーティアが声をかけてきた。
「どうしたの?」
その言葉に、素直に思ったことを口にする。
「いえ、綺麗な部屋だなと思いまして」
ルーティアは少し照れた様子で答えた。
「ありがとう、でも、あなたも手伝ってくれるんでしょう?」
そう言われて驚くと同時に嬉しくなった。
(俺がこの人の力になれるんだ……)
そう思うとやる気が出てきた。
なので早速行動に移すことにする。
まずは部屋の片付けから始めることにした。
二人で手分けして作業を進める。
しばらくすると、部屋は綺麗になったので休憩することにした。
一息ついていると、不意に声をかけられた。
振り向くとそこにはミレイがいた。
彼女は真剣な表情をしていたが、やがて口を開いた。
その内容とは驚くべきものだった。
彼女がルーティアの妹だということが判明したのだ。
「どうして黙っていたんですか?」
そう尋ねると、彼女は申し訳なさそうに答えた。
「ごめんなさい、騙すつもりはなかったの」
そう言われて、とりあえず信じることにした。
しかし、気になることがあったので聞いてみることにした。
「じゃあ、なんで教えてくれなかったんですか?」
すると、彼女は言いにくそうにしていたが、やがて話し始めた。
「実は、私はあなたに嫉妬していたのよ」
そう言われて戸惑う。
「どういうことですか?」
聞き返すと、彼女は説明してくれた。
なんでも、彼女は幼い頃から優秀だったらしく、周囲から期待され続けてきたそうだ。
そんな生活を続けていたある日、とある出来事がきっかけで自分が特別な存在だと思い込んでしまうようになったという。
それ以来、自分の力を証明するために努力してきたのだが、ある時を境にそれが空回りするようになったらしい。
その結果、周りからは疎まれるようになり孤立してしまったのだという。
そんな中、唯一の味方になってくれたのがミレイだったらしい。
そんなある日のこと、二人は偶然にも同じ場所で倒れている人を見つけたそうだ。
しかもその人物は女性だった。
助けるために駆け寄ったところ、村人だったわけだ。
リュートである俺も、今はただの子供に過ぎないので何も出来ないのだが、だからといってこのまま見捨てるわけにもいかないと
思った俺は声をかけた。
「大丈夫ですか!?」
声をかけてみたものの返事がない。
ただ意識を失っているだけのようだが、このままだと危険な状態だと判断した俺達は、すぐに医者に見せることにした。
幸いすぐ近くに診療所があったので駆け込んだが、診察の結果特に命に別状はなく安静にしていれば問題ないということだった。
ホッと胸を撫で下ろす俺達に対して、医者が話しかけてきた。
『君達がこのお嬢さんを連れてきたのかい?』
その問いに頷き返すと、さらに続けた。
『そうか……それなら良かったよ』
そして事情を説明し始めた。
なんでも数日前から連絡が取れず行方不明になっていたようで、それで探していたところに偶然発見したということらしい。
話を聞いていると急に眠気に襲われてしまい、なんとか我慢しようとしたが限界が来てしまったのか眠ってしまったようだ。
次に目を覚ました時には既に日が暮れていた。
急いで家に帰ることにしたが、俺はルーティアの姿の父親の事を思い出し、何で元の姿に戻らないんだろう?
と思いルーティアに聞いた。
「そういえば何で元に戻らないの?」
すると、彼女はこう答えた。
「それは……ちょっと、理由があった」
その答え方に違和感を覚えたがそれ以上は聞かなかった。
代わりに別のことを聞いてみた。
「そういえば俺の服とか荷物はどうなったのかな?」
そう質問すると、ルーティアは不思議そうな顔をした後で思い出したようだった。
「それなら大丈夫よ、全部ここにあるわ」
そう言って鞄を見せてきた。中には着替えや携帯食料などが入っていた。
それらを見て安心するとお礼を言った。
それからしばらくの間休んでいたがそろそろ出発することになった。
ちなみに服装なのだが、なぜか今の格好のままでいいと言われてしまった。
(どういうことなんだろう?)
そんなことを考えているうちに目的地に到着したようだ。
そこは一軒の小さな家だった。
ここがルーティアの家なのだろう。
中に入るとリビングに案内された。
そこで待っているように言われたので大人しく座って待つことにする。
しばらくしてルーティアが戻ってきた。
その手には飲み物の入ったカップを持っている。
それを受け取ると礼を言う。
するとルーティアは微笑みながら頷いた。
それからしばらくは談笑していたのだが、ふと気になったことがあるのでルーティアに尋ねてみることにした。
それは何故自分を養子として迎え入れたのかということだ。
それを聞いて彼女は答えた。
「あなたは私の命の恩人なのよ」
それを聞いて首を傾げた。心当たりがなかったからだ。
それを見た彼女はクスリと笑って教えてくれた。
あの男達に襲われた時に助けてくれたらしい。
そのお礼にとのことだった。
(あれっ?)
その時、不思議な事に気づいた。
(この人、なんで俺のことを知ってるんだ?)
そのことを尋ねると彼女は少し驚いたような顔をした後で答えてくれた。
なんとルーティアは俺のことを知っていたのだ。
初めて会った時、彼女が名乗った名前でわかったのだという。
(そういえばあの時、自己紹介していなかったな……)
そう思って謝罪した。
だが彼女は許してくれて笑顔を見せてくれる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

勇者パーティーのハーレム要員ハーフエルフに転生したんだけど、もう辞めさせてくれないか

みねバイヤーン
恋愛
勇者パーティーの接待ハーレム要員として転生した、ハーフエルフのエリカ。陰キャの日本男子を勇者として持ち上げて、だまくらかすのはイヤになった。そんなとき、また陰キャの日本男子が勇者召喚されたのだが──。 (異世界ハーレム好きな方は読まない方がいいです)

処理中です...