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(誰だ……?)
そう思った直後、思い出した。
(そうだ、確かこの人は……)
そう思ったところで再び声をかけられる。
「ねぇ、聞いてるの?」
そう言われて我に返ると、慌てて返事をする。
「あ、すみません、ちょっと考え事をしていました」
少女は呆れたようにため息をついた後、再び話し始めた。
「もう一度聞くけど、あなたの名前はなんていうのかしら?」
その問いに正直に答えるべきか迷ったが、嘘をつくわけにもいかないので素直に答えることにした。
彼女は嬉しそうに笑った。
クロードは疑問に思ったのだが、なぜ喜んでいるのだろう?
不思議に思っていると、少女が口を開く
「じゃあ改めて、これからよろしくね」
そう言って右手を差し出してくる。
握手を求めているのだと気づいたので握り返すと、さらに強く握られたような気がした。
(痛いんですけど!?)
そう思いつつも我慢していると、やっと離してくれた。
(ふぅ~助かった)
安堵していると、少女が話しかけてくる。
「そういえば名前を聞いていなかったわね」
そう言われたので名乗ることにする。
「俺はクロードといいます」
「クロードか……いい名前ね」
そう言って微笑んでくれた。
その表情を見てドキッとする。
(可愛いな……)
そんな事を考えていると、不意に名前を呼ばれた。
「クロード!」
「なんですか?」
聞き返すと、彼女は少し恥ずかしそうにしながら言う。
「えっと……これからもよろしく」
そう言って手を差し出された。
(もしかして……)
一瞬期待してしまったが、すぐに思い直す。
(そんなわけないよな)
だが、それでも嬉しかった。
だから、しっかりと手を握り返した。
こうして、リュートは新しい生活を始めるのだった。
リュートは魔王城での生活を楽しんでいた。
最初は不安だったが、今は安心して暮らせている。
それに、ミレイやルーティアと仲良くなれたのは嬉しい誤算だった。
そんなある日、リュートは夢を見た。
それは、かつての仲間の夢だった。
彼らはリュートのことを裏切り者だと罵っていた。
リュートは必死に弁明するが、誰も信じてくれない。
それどころか、石を投げつけてくる始末だ。
そこで目が覚めた。
リュートは起き上がると、鏡の前に立つ。
そこには、自分の姿が映っていた。
その姿は、かつての仲間と同じものだった。
しかし、今のリュートは彼らとは違う。
何故なら、リュートは人間だからである。
それなのに、どうしてこんな夢を見るのか? それは、リュートが未だに心のどこかで、彼らを仲間だと思っているからかもしれない。
リュートは考えるのをやめて、ベッドに戻った。
それから数日が経過したある日のこと、リュートはルーティアに呼び出された。
何の用だろうかと思いながら部屋に入ると、彼女は言った。
「あなたに話があるんだけどいいかしら?」
そう言われて頷くと、彼女は話し始めた。
その内容とは、リュートを引き取りたいというものだった。
突然の申し出に驚くが、すぐにその理由を聞くことにした。
すると、彼女は答えた。
「父親としての責任を取りたいからよ」
その言葉を聞いて納得した。
「待ってくれよ、父さん、ルーティアにならないっていってったじゃないか」
「確かにそう言ったわ、でも、もう限界なのよ」
「よくわからないこと言うなよ」
「そうね、ごめんなさいね」
そう言って立ち去ろうとするので慌てて止める。
「待ってよ、まだ話は終わってないよ」
しかし、彼女は首を左右に振る。
「悪いけど、これ以上話すことはないわ」
そう言って立ち去るので、追いかけようとするが足に力が入らず転んでしまう。
それを見てルーティアが言う。
「無理しないで、怪我してるんだから大人しくしてなさい」
そう言われたので諦めることにした。
しばらくして、ミレイがやってきた。
彼女は心配そうに声をかけてくる。
「大丈夫?」
そう聞かれたので頷く。
ミレイは安心したような表情を見せた。
それからしばらく歩いて行くと、前方に人影が見えた。
よく見るとそれは女性のようだった。
彼女はリュートを見ると優しく微笑んだ。
そして、手を差し伸べてきた。
その手を取ると、女性が自己紹介を始めた。
彼女の名前はミレイというらしい。
彼女の名前はリュートは知らないが、その名前には聞き覚えがあった。
「まさか……」
リュートは思わず呟く。
すると、その呟きが聞こえたらしく彼女が尋ねてきた。
「どうかしたの?」
その声を聞いて確信した。間違いない、この声は彼女のものだ。
そう思うといてもたってもいられなくなり、彼女に向かって駆け出す。
そのまま抱きつくと、驚いたような声が聞こえた気がしたが気にしないことにした。
しばらくすると落ち着いたようで、彼女から離れる。
彼女は不思議そうな顔をしていたが、やがて言った。
「どうしたの?」
その言葉に答えるために口を開いた。
「会いたかったです」
「えっ!?」
いきなりそんなことを言われて戸惑っているようだったが、構わず続ける。
「ずっと探してました」
そう言うと彼女は困ったような表情をする。
(どうしたんだろう?)
不思議に思っていると、彼女は聞いてきた。
「あの……人違いじゃないでしょうか?私はあなたのことを知らないのですが……」
それを聞いてショックを受けたが、なんとか平静を装って答えた。
「いえ、間違いありません」
(やっぱり覚えてないんだな……)
そう思ったが、ここで諦めるわけにはいかない。
なんとか思い出してもらう方法はないかと考えていると、ふとあることを思い出した。
「そうだ! これを見てくれますか?」
そう言って自分のステータスを見せる。
それを見た瞬間、彼女の顔が変わったような気がした。
どうやら何か思い出したようだ。
なので聞いてみることにする。
「どうですか?」
すると、彼女は申し訳なさそうに言う。
「ごめんなさい、わからないわ」
やはりダメだったようだ。
(仕方ないか……)
そう思いながら帰ろうとすると声をかけられた。
振り返ると彼女がこちらを見ていた。
その顔はどこか悲しげだった。
何かあったのだろうかと思っていると、突然抱きしめられた。
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