33 / 236
33.
しおりを挟む
辺りを見回すと隣にはルーティアが眠っていた。
「怖かった、俺の体内の血液なんで、元に戻っているの?」
そう呟きながら自分の体を確認する。
どうやら傷一つ残っていないようだ。
「あら、起きたの」
「父さんが蘇生したの?」
「瀕死ギリギリまで追い込んだから、死んだと思ったのね、生きているわよ、私が回復魔法で全開にしてあげたのですからね」
その言葉を聞くと安堵の息を漏らす。
それと同時に申し訳ない気持ちにもなる。
(俺がもっと強ければこんなことにはならなかったのに)
そんなことを考えているとルーティアは言った。
「まぁ、今回は私もやり過ぎたわ、ごめんなさいね」
それを聞いて慌てて頭を下げる。
それを見たルーティアは少し驚いたような顔をすると、優しく抱きしめてくれた。
(あぁ、温かい)
そんな感想を抱いていると耳元で囁かれた。
「大丈夫よ、私は貴方の味方だから安心して頂戴」
それだけ言うと離れて行く。
(あれ? いつもと違う、父さんいい匂い)
そんなことを思っていると、頭を撫でられて、思わず笑みがこぼれてしまう。
だが、すぐに真顔になると、リュートはこう言った。
「それで、これからどうするの?」
そう聞かれたルーティアは答える。
「そうね、まずは魔王城を取り戻す為に力を蓄える必要があるわね」
それからというもの、修行の日々が始まった。
まず最初に始めたのは、基礎体力の向上だ。
ランニングから始まり、腹筋背筋スクワットなど、様々なトレーニングを行う。
最初の内は辛かったが、徐々に慣れていくうちに楽しくなってきた。
「ねぇ、と、父さん、その、たまには二人で買い物に行きたい」
そう提案すると、笑顔で頷いてくれる。
それから数日後、街へと出かける事になったのだが……。
二人は変装すると街に繰り出した。
そして向かった先は服屋である。
そこで選んだ服を着て店を出る二人だったが、その際に店の店員に話しかけられる。
どうやらカップルと思われたらしい。
否定しようとしたが、その前にルーティアが先に答えた。
「ええ、そうよ、私達、付き合っているのよ、だから邪魔しないでちょうだい」
そう言うと、二人はその場から立ち去った。
その後、食事を済ませると、宿に戻り、体を清めると、ベッドに横になる。
そして、俺はルーティアにこう聞いた。
「父さんから見て母さんってどんな人だったの?」
「とても優しい人よ」
即答で答えられたので少し驚く。
てっきりもう少し悩むと思っていたからだ。
しかし、それ以上に気になることがあった。
(優しかったのならなぜ、一緒に住まなくなったんだろう)
「どうして、一緒に暮らさないの?」
そう尋ねるとルーティアは答えた。
「母さんは優しいけど、ウマが合わなかったからね、そんな事より」
そう言うといきなり姿が元に戻る。
「そんなこと、普段は聞かないのに、どうしたのかな?」
そう言われて顔が赤くなるのを感じた。
(確かにそうだ、いつもならこんな事聞かなくても分かるはずなのに)
そう思いながら俯くとクロードがそっと微笑むと
「何か食うか?」
そう言いながら魔法でステーキを作り出す。
それを見て目を輝かせるリュートに皿を渡すと、フォークとナイフを手渡してくる。
それを受け取ると、早速食べ始める。
すると、口の中に肉汁が広がり、幸せな気分になる。
そのまま一気に平らげると、満腹になったので、部屋に戻ることにした。
そんなリュートを見て微笑みながら見送ると、
「お前は、ルーティアの時の方が砕けてないか?」
その様に聞かれても動じずに答える。
「たしかに、クロードである父さんよりは、放しやすいかな」
そう答えると俺は苦笑する。
「そうか? 俺は息子と話せるほうが好きだぞ、ルーティアは偽りの姿なのだからな」
そんな事を言う父に対して疑問をぶつけてみる事にした。
「じゃあ、本当の姿って何なの?」
その問いに父は答える。
「それは秘密だな」
そう言ってはぐらかされてしまった。
その事にショックを受けていると父が言う。
「そんなに落ち込むな、いつか教えてやるさ」
そう言って頭を撫でてくる父の手は温かく心地よかった。
それからしばらく経ち、俺はようやく戦えるようになった。
そして今、俺は旅に出ようとしていたのだ。
それを引き止めたのは他でもない父だった。
「待ちなさい、どこに行くつもりなのですか」
そう言われて俺は振り返る。
そして、決意を込めて言った。
「魔王を倒しに行く」
それを聞いたルーティアは驚きの声を上げる。
「この父を倒したいのなら、今すればいいじゃない」
思い出した、俺の父親は魔王である。
そして、俺を倒せば名実ともに最強の存在となるのだ。
だが、そんな気はなかった。
なぜなら、俺の目標はあくまでも魔王を倒す事ではなく、魔王になることだからだ。
その為には力が必要だ。
だからこそ、ここで倒すわけにはいかないのである。
しかし、父親である、クロード=ルーティアに認めてもらう必要がある。
そのためにはどうすればいいのだろうか?
答えは簡単だ。
実力を示すしかないだろう。
相手は最強の一角を担う人物であり、そう簡単に勝てる相手ではないことはわかっている。
それでもやらねばならないだろう。
覚悟を決めて剣を構えると、そのまま斬りかかる。
あっさりと避けられてしまった。
「怖かった、俺の体内の血液なんで、元に戻っているの?」
そう呟きながら自分の体を確認する。
どうやら傷一つ残っていないようだ。
「あら、起きたの」
「父さんが蘇生したの?」
「瀕死ギリギリまで追い込んだから、死んだと思ったのね、生きているわよ、私が回復魔法で全開にしてあげたのですからね」
その言葉を聞くと安堵の息を漏らす。
それと同時に申し訳ない気持ちにもなる。
(俺がもっと強ければこんなことにはならなかったのに)
そんなことを考えているとルーティアは言った。
「まぁ、今回は私もやり過ぎたわ、ごめんなさいね」
それを聞いて慌てて頭を下げる。
それを見たルーティアは少し驚いたような顔をすると、優しく抱きしめてくれた。
(あぁ、温かい)
そんな感想を抱いていると耳元で囁かれた。
「大丈夫よ、私は貴方の味方だから安心して頂戴」
それだけ言うと離れて行く。
(あれ? いつもと違う、父さんいい匂い)
そんなことを思っていると、頭を撫でられて、思わず笑みがこぼれてしまう。
だが、すぐに真顔になると、リュートはこう言った。
「それで、これからどうするの?」
そう聞かれたルーティアは答える。
「そうね、まずは魔王城を取り戻す為に力を蓄える必要があるわね」
それからというもの、修行の日々が始まった。
まず最初に始めたのは、基礎体力の向上だ。
ランニングから始まり、腹筋背筋スクワットなど、様々なトレーニングを行う。
最初の内は辛かったが、徐々に慣れていくうちに楽しくなってきた。
「ねぇ、と、父さん、その、たまには二人で買い物に行きたい」
そう提案すると、笑顔で頷いてくれる。
それから数日後、街へと出かける事になったのだが……。
二人は変装すると街に繰り出した。
そして向かった先は服屋である。
そこで選んだ服を着て店を出る二人だったが、その際に店の店員に話しかけられる。
どうやらカップルと思われたらしい。
否定しようとしたが、その前にルーティアが先に答えた。
「ええ、そうよ、私達、付き合っているのよ、だから邪魔しないでちょうだい」
そう言うと、二人はその場から立ち去った。
その後、食事を済ませると、宿に戻り、体を清めると、ベッドに横になる。
そして、俺はルーティアにこう聞いた。
「父さんから見て母さんってどんな人だったの?」
「とても優しい人よ」
即答で答えられたので少し驚く。
てっきりもう少し悩むと思っていたからだ。
しかし、それ以上に気になることがあった。
(優しかったのならなぜ、一緒に住まなくなったんだろう)
「どうして、一緒に暮らさないの?」
そう尋ねるとルーティアは答えた。
「母さんは優しいけど、ウマが合わなかったからね、そんな事より」
そう言うといきなり姿が元に戻る。
「そんなこと、普段は聞かないのに、どうしたのかな?」
そう言われて顔が赤くなるのを感じた。
(確かにそうだ、いつもならこんな事聞かなくても分かるはずなのに)
そう思いながら俯くとクロードがそっと微笑むと
「何か食うか?」
そう言いながら魔法でステーキを作り出す。
それを見て目を輝かせるリュートに皿を渡すと、フォークとナイフを手渡してくる。
それを受け取ると、早速食べ始める。
すると、口の中に肉汁が広がり、幸せな気分になる。
そのまま一気に平らげると、満腹になったので、部屋に戻ることにした。
そんなリュートを見て微笑みながら見送ると、
「お前は、ルーティアの時の方が砕けてないか?」
その様に聞かれても動じずに答える。
「たしかに、クロードである父さんよりは、放しやすいかな」
そう答えると俺は苦笑する。
「そうか? 俺は息子と話せるほうが好きだぞ、ルーティアは偽りの姿なのだからな」
そんな事を言う父に対して疑問をぶつけてみる事にした。
「じゃあ、本当の姿って何なの?」
その問いに父は答える。
「それは秘密だな」
そう言ってはぐらかされてしまった。
その事にショックを受けていると父が言う。
「そんなに落ち込むな、いつか教えてやるさ」
そう言って頭を撫でてくる父の手は温かく心地よかった。
それからしばらく経ち、俺はようやく戦えるようになった。
そして今、俺は旅に出ようとしていたのだ。
それを引き止めたのは他でもない父だった。
「待ちなさい、どこに行くつもりなのですか」
そう言われて俺は振り返る。
そして、決意を込めて言った。
「魔王を倒しに行く」
それを聞いたルーティアは驚きの声を上げる。
「この父を倒したいのなら、今すればいいじゃない」
思い出した、俺の父親は魔王である。
そして、俺を倒せば名実ともに最強の存在となるのだ。
だが、そんな気はなかった。
なぜなら、俺の目標はあくまでも魔王を倒す事ではなく、魔王になることだからだ。
その為には力が必要だ。
だからこそ、ここで倒すわけにはいかないのである。
しかし、父親である、クロード=ルーティアに認めてもらう必要がある。
そのためにはどうすればいいのだろうか?
答えは簡単だ。
実力を示すしかないだろう。
相手は最強の一角を担う人物であり、そう簡単に勝てる相手ではないことはわかっている。
それでもやらねばならないだろう。
覚悟を決めて剣を構えると、そのまま斬りかかる。
あっさりと避けられてしまった。
0
お気に入りに追加
124
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
勇者パーティーのハーレム要員ハーフエルフに転生したんだけど、もう辞めさせてくれないか
みねバイヤーン
恋愛
勇者パーティーの接待ハーレム要員として転生した、ハーフエルフのエリカ。陰キャの日本男子を勇者として持ち上げて、だまくらかすのはイヤになった。そんなとき、また陰キャの日本男子が勇者召喚されたのだが──。
(異世界ハーレム好きな方は読まない方がいいです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる