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「嫌だと言ったら?」
それに対し彼女は答えた。
「そうね、それなら仕方が無いわね」
そう言った次の瞬間、彼女の体から黒いオーラのようなものが噴出してきた。
「な、なんだ?」
それを見た俺は驚いた。
なぜなら、そこに立っていたのは普段の彼女ではなかったからだ。
その姿はまさに漆黒のドレスに身を包んだ黒の女王そのものだったからだ。
そんな彼女を見て恐怖を覚えるものの、同時に魅了されて身動きが取れなくなっていた。
「この姿で、貴方をお仕置きする気は無かったのだけど、いちいち、解くのもめんどくさいし、オーナー、仮眠室お借りさせて頂けるかしら?」
すると店主らしき人物が姿を現したかと思うと言った。
それは俺のよく知る人物だった。
(あれはアモンじゃないか)
なぜ彼女がここに? そんなことを考えているとアモンが話しかけてきた。
「いいですよ、ルーティア様、あ、防音魔法は張って下さいね、悲鳴なんて、ナンセンスなモノ聞かれると客足が遠のきますので」
「有難う、さて、マリア、鞭貸してもらってもいい?」
それは愛用している、戦闘の用の鞭で、マリアが首をかしげながら差し出すとそれを受け取り
「さ、リュート、いらっしゃい、奥でたっぷり姉さんとお話ししましょうね、あ、マリア、出てくるまで覗かないでね」
そう言われて、俺は店の奥にある部屋へと連れていかれた。
 部屋に入り、二人きりになるとルーティアは俺のことをベットの前のスペースに正座させられた。
「さて、この姿で貴方を叱る日が来るとは、なんで、姉の言う事が聴けないのかしらね」
(いや、どう考えても理不尽すぎるだろ)
そんなことを考えていたのだがどうやら顔に出ていたらしくルーティアが言う。
「その顔は不服のようね、まぁいいわ、まずはその腐った性根を叩き直してあげるわ!」
鞭を解くと軽く床を打ち据える。
「いい音、そうだ、なんかあの日を思い出すわね、小屋のこと覚えているかしら?」
ぞっと背筋が凍るような感覚を覚えた俺は必死に首を振るも、彼女は許してくれなかった。
彼女は俺を膝の上に乗せるとその小さな体で包み込むように抱き締めて囁いた。
その吐息はとても暖かく心地よいものだった。
「大丈夫よ怖くないから、お姉ちゃんに任せてくれれば悪いようにはしないから安心してね、それとも痛い方がいいかしら?」
そう言いながら鞭を構えるのを見て俺は観念した。
(あぁ終わった……短い人生だったなぁ)
そんな事を考えていると彼女はゆっくりと語りかけるように言ってきた。
「貴方は私のこの姿が嫌い?」
(別に嫌いなわけではないけど……)
しかし、彼女は続ける。
「答えて、でないとまた酷いことするわよ」
そう言いながら俺の体を弄り始めた。
その動きは、まるで壊れ物を扱うかのような繊細な動きで俺の体を隅々まで触り尽くしてきた。
(うぅ……変な気分になる。やめてくれよ)
心の中でそう思うものの口に出すことは許されない。
すると今度は耳元で囁いてきた。
「ほら正直に言ってごらん」
(駄目だ、逆らえない……)
そう思いつつ、俺は首を縦に振った。
「あら、悪い子、少し叩いてみましょうか?」
そう言いながら左腕に鞭を有り降ろされる。
(うっ!)
痛みに顔が歪むが声を押し殺して耐える。
その様子を見ていた彼女は満足げに微笑んだ。
それから暫くして解放された時には全身痣だらけになっていた。
だが、不思議と嫌な気持ちはしなかった。
むしろ心地良さまで感じていたのだ。
そんな俺の反応に気付いたのかルーティアは言った。
「あら? もしかして痛かった? それとも気持ちよかった?」
(そんなこと聞かれても答えられるわけがない)
「親子なので、変な気は起こさないでね、それと」
そう言いながら雰囲気が元に戻る。
そこに居たのは父・クロードの姿であった。
それを見たリュートは思わず安堵してしまう。
(良かった、元に戻ってくれたんだな)
そう思っていたのだが……
次の瞬間腕を掴まれると無言でベットの上に組み敷かれる。
「やめ、父さん」
必死になって抵抗するも力では勝てない。
すると父は耳元でこう囁いてきた。
「悪い事をして御免なさいは? リュート」
その言葉を聞いた時、俺の中で何かが音を立てて崩れていった。
気が付くと俺は土下座をしていた。
その姿を見て満足げな表情を見せるとこう言った。
「これからは父さんの言うことをよく聞くんだぞ」
(そうだ、俺には従うしか選択肢がない)
そう思うと俺は自然と体が動いてしまう。
そして気がつくと跪いて頭を下げてしまっていた。
(俺は何をしているんだ)
そんな思いとは裏腹に体は勝手に動き出してしまったのである。
そしてそのまま魔王城を後にすることになった。
帰り際ふと気になって聞いてみることにした。
「ねぇ父さん、なんで俺を勇者に売ったの?」
それに対して父さんは答えた。
「お前が奴等の手に落ちれば、いずれ魔族が滅ぼされてしまうからだよ」
(そうか、そういう事だったのか)
つまりは、最初から見捨てられていたのだ。
(分かっていた事なのに)
そんな事を考えていたのだが、ふいに声をかけられたので振り向く。
「え、何それ、剣術大会?」
俺は不思議そうに父親に問いかけていた。
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