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普段は入れない、作戦指令室だ。
「どうなさいました?」
「俺さ、ここに来てから、ずっとここだけは入れてもらえなかったんだよ、緊張する」
すると男は笑って言った。
「大丈夫ですよ、ここに入れる人間は限られていますから」
そんな話をしていると、一人の少女がやって来た。
「あ、いたいた!」
そう言いながら近寄ってくる少女。
彼女は言った。
「もう! お兄さまったら、勝手にどこか行っちゃうんだからぁ」
そんな愚痴を零しながら近づいてくる少女はアリアそっくりだったがよく見ると別人だと分かる。
髪の色が違うのだ。
彼女の髪はピンク色をしているのに対してアリアの髪色は銀髪なのだ。
そんな事を考えていると、少女が言った。
「あら? 貴方は?」
「こちらは、リュート・エルジオル様、クロード・エルジオル・ヴァンデリア様のご子息です」
それを聞いた少女は納得した様子で言った。
「ああ、貴方がそうなのね」
その言葉に驚くも少女は続けて言う。
「初めまして、魔王軍の五将の一人、青のアギトと申します」
それを聞いて驚いたものの冷静に対応する。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
それから、俺達は自己紹介を済ませると本題に入った。
一通り話を聞いた後、結論を出すことにした。
その結果を伝える為に父に連絡を取る。
(父さんならきっと分かってくれるはずだ)
「いちいち連絡しなくていい、お前を信じている」
しかし返ってきた答えは予想外のものだった。
(えっ!?)
戸惑う俺に父は言う。
「どうした? もういいのか?」
慌てて返事をする俺。
しかし、その言葉は届いていなかったようで父は一方的に話を続ける。
それを聞いているうちに段々と腹が立ってきた。
(何だよそれ……)
そう思った瞬間、俺の意識は途切れた。
~数時間後~ 気がつくとベッドの上で寝ていた。
どうやら夢を見ていたようだ。
(それにしてもリアルだったな……)
そう思いながら起き上がると部屋を出る。
(あれ?)
ゆっくりと部屋を出るとアリアが
「お早う御座います、リュート様、さ、兵士会議が始まりますわ、魔王の間に」
そう言って微笑む彼女に見惚れながらも頷くのだった……。
魔王の間に入ると俺は促されて、玉座に座る。
マリアがその横に立てばいよいよ、兵士会議が始まる。
(ゆ、夢じゃない?)
俺はそわそわしてきた。
後継者だなんて、今日まで口先だけのゴロ遊びだと思っていたのである。
それがまさか本当になるなんて思わなかったのである。
(よしっ!)
気合を入れると前を向く、するとそこにあわただしく入って来る兵士が居た。
「何」
「魔王様、じゃなかった、リュート様に至急お伝えしたい事が」
兵士がそう言うとアリアは言った。
「わかった、報告をお願いします」
「はっ、城の高台より、勇者のレイドパーティーを確認しました」
その言葉にざわつく室内。
そんな中で、一人冷静な様子のアリアは言った。
「分かりました、すぐに行きましょう」
そう言うと兵士達を連れて部屋を出て行くアリア達。
そんな彼女達を見送ると俺は思った。
(どうしてこうなったんだろうなぁ)
そんなことを考えているうちに時間が過ぎていった。
~数分後~ 戻ってくる彼女達を見て思うことといえば一つだけだった。
(どうしてこうなったのか)
そんな事を考えつつアリア達の後に続く。
そして向かった先は城の最上階にある展望台だった。
そこから見える景色はとても綺麗だった。
人数多いいな、如何しよう父さんが留守なのに……。
そんな不安を抱きつつも俺は見守る事にした。
(というか今更だけど何で俺がこんな場所に居るんだ?)
ふと疑問に思ったことを聞いてみたくなったので聞いてみることにする。
そして、質問をしてみるも帰ってきた言葉は予想していないものだった。
なんでも今回来たのはリーダーである剣聖とその仲間だという話だそうだ。
ちなみに何故、俺がこの場にいるのかという質問に対しては答えてくれないみたいだ。
それどころか、俺を除け者にして話し込んでいる始末だ。
(はぁ、なんか寂しいな)
そんなことを考えていたら声をかけられた。
振り向くとそこには見覚えのある顔があった。
そこにいたのは妹のアリアだった。
その姿を見てホッとするも直ぐに我に返る。
なんで妹がこんなところに居るのだろうと思ってしまったからだ。
そんな俺の気持ちなどお構いなしに話しかけてくる妹はこう言った。
「お兄ちゃん、久しぶり」
そう言われてようやく思い出した。
(あっそうか俺って今魔王代行なんだった)
改めて自覚して見ると不思議な感覚に陥る。
だが不思議と悪い気はしなかった。
(いや違うだろ俺!!)
そう思い直して頭を振ると、俺はアリアに言った。
「久しぶりだなアリア、元気にしていたか?」
すると彼女は嬉しそうに答えた。
「うん、元気だよ!」
(そっか良かった)
俺は心の中で安堵する。
すると、突然、彼女が聞いてきた。
「ところで、さっきから気になっていたんだけど、そこの人達は誰?」
そう言って指差したのは、先ほどから俺達の様子を伺っていた五人組のことだった。
~数分後~ 事情を説明した結果、なんとか納得してくれたみたいで安心した。
だが、まだ油断はできないと思った矢先の出来事だった。
突如、地面が大きく揺れたかと思うと巨大なドラゴンが現れたのだ。
それを見た瞬間に理解した。
(これはまずいかもしれない)
そう感じた時には遅かった。
突如として現れた黒い竜は咆哮を上げると同時に炎を吐き出したのだ。
間一髪の所で躱したものの既に満身創痍の状態になっていたのだ。
(くそっ! こうなったら仕方ない!)
覚悟を決めた俺は叫ぶように言った。
「皆んな逃げろ!」
その瞬間、一斉に逃げ出す仲間達を見ながらも俺も逃げる準備をする。
俺は魔王軍に指示を求められて戸惑う。
父さんは居ない、このタイミングで攻めて来たのなら、狙いは間違いなく魔王城だろう。
だとしたらどうすればいい?
いや考えるまでもない、答えは一つしかないだろう。
(だったら!)
そう思うと俺は魔王城を出ることにした。
まずは街の人々に避難を促す為、走り出すも背後から聞こえてくる轟音に足を止めてしまう。
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