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「あ、あの、お父様」
「どうした、改まって」
「僕は勇者パーティーを追放されたんです、もう、戦う理由がありません」
そう言うと父は考え込む素振りを見せると、しばらくして口を開いた。
「なるほど、分かった、だが、お前の意思はどうであれ、魔王である以上、お前は戦わねばならない、たとえ、それがどんな相手であっても」
「えっ!?」
「そうだ、例え、かつての仲間であったとしても、躊躇なく殺せ、でなければ、お前が殺される事になる」
「そんな!!」
「当然だろう? 今のお前はただの人間なんだから」
そう言われて絶句してしまった。
そのまま頭を撫でられるとそっと引き寄せられる。
「強くあれ、リュート、その時が来たら、父さんが一騎打ちしてやる」
耳元で囁かれる声にドキドキしながら頷くと、満足したように離れられた。
その後は二人で狩りをして楽しんだ後帰宅した。
それから数日後、とうとうその時はやって来た。
「さて、行くぞ、リュート」
そう言われたので黙って付いて行くと城の門に辿り着いた。
そこで門番に止められると父が名乗ると通された。
そのまま中へ進んでいくと一人の少年が立っていた。
(こいつが……)
そう思って見ていると向こうから話しかけられる。
「貴方が新しい後継者の方ですか?」
俺は頷くと少年が聞いてきた。
「へぇー、大人なんですね、僕はフェリオ、あんたが来る前は、僕が後継者だったんですよ」
「おっ、フェリオ、如何した? 魔王学園は楽しいか?」
「ええ、お陰様で」
その会話を聞いているうちに怒りが込み上げてきた。
(何こいつ? いきなり出てきてマウント取ってきやがって!)
そんな感情を押し殺していると、突然、目の前に拳が迫ってきた。
咄嗟に回避しようとしたが間に合わず顔面に食らうと吹き飛ばされてしまう。
「痛ってぇ」
鼻を押さえて立ち上がると、父が言った。
「おいおい、やりすぎだぞ」
「すみません、でも、そっちが先に手を出したので、おあいこですよ」
『何もしてねぇよ』
そう思い言いそうになるのをこらえると
「ああ、リュートこちらはフェリオ、俺の息子だ、お前みたいに拾ったわけじゃないぞ」
そう言いながら笑う父はどこか楽しげで嬉しそうだった。
そんな父を見ているとふと思い出す事があった。
(あれ? そう言えば、この人達って僕の事を知らないんだっけ?)
そう考えると、少し悪戯心が湧いてきたのでやってみる事にした。
「初めまして、僕はリュートです」
そう言いながらお辞儀をしてみると驚いた様子でこちらを見てくるので、内心で笑いながらも平静を装っていると、
急に笑い出した。
何事かと思っていると彼はこう宣言してきた。
「面白い、だったら勝負しようじゃないか! どちらが真の魔王に相応しいかを!」
「いいだろう、受けて立つ!」
そう言って武器を構える二人を見て思った。
(これ絶対勝てるわけないじゃん!!)
こうして戦いは始まったのだが……結果から言うと負けてしまった。
「父さん、強すぎ」
そう言った俺をクロードは見下ろしながら言った。
「当たり前だろ? これでも一応魔王やってるからな」
そう言われて落ち込む俺にフェリオは言う。
「ま、いいさ、君も頑張ってね、期待してるよ」
それだけ言って去っていく彼を見送るとクロードは言った。
「まぁ、気にするな、あいつも、若いなりに色々あるんだろう、さてと、リュート」
「な、なんですか」
急に声のトーンが下がった気がする。
そう思っていると真面目な表情で言った。
「今日からお前の特訓を始める、まずは体力作りからだ」
その言葉に俺は顔をひきつらせた。
(しまった、完全に忘れてた……)
そう思った時には後の祭りだった。
「ちょっともう無理」
俺は今、魔王の作り出した空間の中に閉じ込められている。
酸素も薄く、暑いと感じれば寒くなる。
「どうした? そこから出ないと食事にありつけないぞ」
そういわれて仕方なく出る事にする。
(くそぉ、絶対に強くなってやる)
とはいえ、空間から出る何て芸当出来るはずもなくて
「父さん、ギブアップ、助けて」
と言うと助けてくれるのでなんとか生き延びているがこのままではいつか死ぬだろう。
「ほら、何時まで寝ているんだ、起きなさい」
頬を叩かれて目を覚ます。
魔王の寝室だと気づき慌てて転げ落ちれば
「何してんだよ、リュート」
「父さん、死ぬかとまで思ったんだよ」
そう抗議すれば、呆れ顔で見られたので睨み返すと溜め息を吐かれた。
「全く、だらしない奴だなぁ」
「うるさいよ、そもそもなんで起こしてくれないんだよ」
そう文句を言えば笑って返された。
「あははっ、だってその方が面白そうだしな」
そんな父を見ながら思わず笑ってしまうのだった。
そんな生活を続けて2年ほど経ったある日のこと。
いつものように剣を振っていると父がやってきた。
「おーい、リュートそろそろ旅に出ないか?」
突然の事で呆然としていると父は続けた。
「そろそろ、お前も、俺と一緒に行ける頃だろう? さっ、行こうか」
「やだ」
「は?」
「いやだ」
「何でだよ」
「行きたくないから」
「お前なぁ、いい加減にしろ」
「だって嫌なものは嫌だもん」
「子供かよ、ったく仕方ないな、それじゃあ、力ずくでも連れて行くぞ」
「いいよ、返り討ちにしてあげるから」
こうして父と息子の喧嘩が始まった。
俺はクロードから放たれる魔法をひたすら躱していた。
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