勇者パーティーを追放された俺は辺境の地で魔王に拾われて後継者として育てられる~魔王から教わった美学でメロメロにしてスローライフを満喫する~

一ノ瀬 彩音

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「初めまして、勇者パーティーの若者よ」
そう言って、俺の手を取る。
「お会いできて光栄です」
そう言って微笑む姿は美しく、とても優しそうだった。
俺は、思わず見とれてしまった。
だが、すぐに我に返ると、慌てて手を振りほどく。
「そ、その、ありがとうございます」
顔を赤らめながら礼を言う俺に、女神様はくすりと笑みを零した。
「貴方は勇者パーティーを追放されましたね?」
唐突に尋ねられ、俺は言葉に詰まる。
そんな様子を見て、女神様は再び問いかけた。
「もう一度聞きます。貴方は勇者パーティーを追放されたようですね?」
「……はい」
仕方なく頷くと、彼女は満足そうに頷いた。
「そうですか。では貴方のこれからを伝えます、辺境の地に向かいそこで少女と過ごしなさい、以上です」
それだけ言うと、女神様は姿を消した。
俺は言われた通り辺境の地に向かう事にした。
「何もそんな所に行かなくても」
不満そうな表情を浮かべるアリシアに、ソフィアが言う。
「仕方がないでしょう? あの女神様の御告げなのですから」
その言葉に納得したのか、アリシアは黙ってしまう。
そんな二人を横目に見つつ、俺は皆に別れを告げる。
「今までありがとう、みんな元気で」
こうして、俺は辺境の地に行く事になったのだった。
のちに、勇者パーティーとは、もう一度遭いたいする事となる、今度は敵として……。
俺は今、辺境の地に向かっている。
「魔物か」
俺は武器を構えた。
スライムであろーが、ゴブリンであろうが、決して油断はしない。
一撃で確実に仕留めるのだ。
そして、俺は辺境の地に差し掛かったあたりで、異変を感じた。
「王国の旗が出ていない?」
その事に違和感を覚えつつも、とりあえず進んでみることにする。
「止まれ! 何者だ?」
門番らしき男が問いかけてくる。
「俺はリュート、旅をしている者だ」
そう告げると、彼は警戒を緩めずに言った。
「身分を証明するものはあるか?」
「これでいいか?」
そう言って、王家の紋章を見せると、男は驚いたように目を見開いた。
「これは失礼しました」
慌てて頭を下げる男に対して、俺は気にするなと言う。
「それより、この近くに村はないか?」
「それでしたら、2km先にあります、『アクトの村』ですが、そこは今、魔王軍領土でして」
その言葉に驚く。
まさか、ここまで来ているとは思わなかったからだ。
どうやら、この村は危ないらしいので引き返すことにしようと思う。
しかし、その前に一つやっておくことがある。
「すまないが村長を呼んでくれないか?」
俺がそう言うと、その男は怪訝な顔をした。
「何故ですか?」
「挨拶しておきたいんだ」
すると、男の顔色が変わった。
「なりません!」
大声で怒鳴られる。
「いいか? あの方は魔王に村を売った売人なんだぞ!? そんな奴に、どうして会いに行かねばならないのだ!」
どうやら、何か誤解があるようだ。
だから俺は、なるべく丁寧に説明することにした。
「落ち着いてくれ、まず、俺は確かに勇者パーティーにいた人間だが、今はただの一般人なんだ」
「信じられるか!」
「だったら、俺の剣を見せてやるよ」
そう言って、腰に提げていた剣を手渡す。
「これで分かってくれただろ?」
「ううむ……」
まだ納得していないようだが、取り敢えずは理解してくれたみたいだ。
俺はそのまま、村の中へと入っていくのだった。
村の中に入った俺は、早速村長の家を訪ねることにした。
途中何人か村人に会ったのだが、皆よそよそしい感じだった。
やはり噂のせいだろうか?
(まぁ、気にする必要もないだろう)
そう思い直して、村長の家を探す。
やがてそれらしきものを見つけ中に入ってみると、そこには年老いた老人がいた。
恐らく彼が村長なのだろうと思い話しかける。
「こんにちは」
すると、相手は怪訝そうな顔をして答えた。
「おや、見かけない顔ですな?」
その言葉の通りなので、
「村長さんですか」
「いえ、村長はこの子です」
見ると、小さな女の子がこちらを見ていた。
年齢は6歳くらいであろうか?
こんな幼い子が村長だと聞いて驚いていると、女の子が言った。
「お兄ちゃん誰?」
不思議そうに首を傾げて聞いてくる姿に癒されるも、まずは自己紹介するべきだろうと思い名乗る。
「俺はリュートっていうんだ」
「リュートお兄ちゃんだね!」
満面の笑みでそう答える少女に和みながら問いかける。
「君は何て名前なのかな?」
すると少女は元気よく答えた。
「私の名前はユリアだよ!」
そんなやり取りをしていると、明らかに殺気を感じる。
「なぁ、この村、可笑しくないか?」
俺の発言に、二人は首を傾げた。
(ああそうか、気づいていないんだな)
俺は確信した。こいつらは完全に洗脳されているのだと。
その証拠に、二人の目には光が宿っていない。
このままではマズイと判断した俺は、即座に逃げ出すことにした。
だが、回り込まれてしまったようだ。
退路を塞がれてしまい逃げ場を失った俺に、二人が迫ってくる。
「さぁ大人しくしろ」
「言うことを聞いてくれたら痛いことはしないからね」
「何するんだよ」
「お兄ちゃんは、これから、スローライフを私とするんだよ」
そう言われて驚いたが、別に悪い気はしなかったので了承した。
こうして、俺とリシアのスローライフが始まったのだった……。
翌日から、俺に対する村の人達の態度が一変した。
これまでは余所者を見るような目を向けていたが、今では好意的な態度になっている。
(一体どうなっているんだ?)
不思議に思っていると、近くにいた少女が話しかけてきた。
名前は確かユアだったか……? 昨日、教会の前で出会った少女である。
彼女は嬉しそうに話してくる。
「ねぇリュートさん、今から遊びに行かない?」
そう言ってくる彼女に対して、俺は首を振った。
「悪いけど遠慮しておくよ」
すると、彼女は悲しそうな顔をする。
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