天然王妃は国王陛下に溺愛される～甘く淫らに啼く様～

2.

それは、二人の側室のうちの一人、
『クレイア』の幼馴染にして親友の『アリエ・フォント・マイスエンデ侯爵令嬢』である。
彼女はクレイアがゼウスに抱かれる所を見ていて、二人が結ばれるのは時間の問題だと思っていた。
だからこそ邪魔をするべく、この日を待っていたのだ。
自分の愛するゼウス王の正妃になる為に
どうせ奪うのなに仲良しなクレイアを悪者にすればいい……。
それに作動するようにうなじの所に盗聴器を仕掛けておいたので、あとはクレイアとゼウスの会話を聞いて それをネタに揺さぶればいい。
そして、案の定
「クレイア様！　これはどういう事ですか！？」
と怒り心頭で現れた彼女の侍女に呼び出される。
クレイアは慌てて弁明しようとするが、
「私には言い訳など聞きたくありませんわ！　何故貴方があの男の側に居るのです！」
と問い詰めてくる彼女。
クレイアはその言葉に涙目になりながら
「だって、私の事を大切にしてくれるから……だから……」
と呟くように言うと、更に激昂して
「それがいけないというのですよ！　正妃に成りたいのでしょ？　ならちゃんとしてくださいませ」
と言い放つ。
その言葉にクレイアは泣き出してしまった。
それを見た侍女は、流石に言い過ぎたかと反省する。
そして、ちゃんと話し合おうと持ちかけたのだった。
翌日、クレイアは自分の部屋で悩んでいた。
昨日の出来事のせいで、自分がどうすれば良いのか分からなくなってしまったのである。
取り敢えず今日は部屋から出ない事に決めたのだが、それでも一人きりというのは寂しく感じてしまう。
その時だった、部屋のドアをノックする音が聞こえる。
誰だろうと扉を開けるとそこには意外な人物が立っていた。
そう、あの侍女だったのだ。
彼女は何故か申し訳無さそうな顔をしながら、
「昨日の事は本当に申し訳ありませんでした……でもどうしても貴方の事が心配で……」
そう言ってくる彼女に、少しだけ警戒を解く私。
だけど彼女が何をしに来たのかが分からない以上油断はできないと思い、扉を締めようとしたら彼女に止められてしまう。
「待って下さい！ 　貴方に見せたいものがあるんです」
と言って部屋の中に入ってきた彼女は一冊の本を取り出した。
それは私が書いた小説であった。
その本を彼女に渡すと、読んで欲しいと頼まれてしまう。
少し困惑しつつも渡されたものを読む私。
内容はよくあるようなもので、平民出身の女の子がこの国の王女に見初められて結婚をするというものだった。
しかも、女の子はその王子の寵愛を一身に受けていて、とても幸せそうだった。
読み終わった私に、感想を聞いてくる彼女。
「どうでしたか？」
その問いに答える私。
「凄く面白かったです」
それを聞いた彼女は嬉しそうに微笑んでいた。
その後、私は彼女と色々な話をした。
どうやら彼女も私と仲良くなりたいらしい。
私も最初は疑っていたが、今ではすっかり打ち解けてしまっていた。
そんな中、ふと私はある疑問をぶつけてみる事にした。
「そういえば貴女のお名前はなんて言うのですか？」
すると彼女は驚いた表情を見せたあと、微笑みながら答えてくれる。
「そうでしたね、まだ名乗っておりませんでしたわね……
私はアリエと申しますのよ。以後お見知り置きを」
そう言った彼女の顔を見ながら私は思う。
やっぱりどこかで見た事がある気がするんだよねー まあ気のせいだろうと思う事にしたのだけれども……
私は今日も今日とて、大好きなあの人の事を想う。
あの人は私を救ってくれた人でもあり、大切な方でもある。
そんな彼の事を考えていると、自然と顔がにやけてきてしまう。
ああ、早く会いたいなあ……
そんな事を考えながら、私は今日の仕事を始める事にした。