悪役令嬢は穢れを知らない~溺愛王子に処女を奪われて、淫蜜と愛蜜の狭間で~

一ノ瀬 彩音

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「それで、君は興味を持ってくれるかな?」
「そうですね……」
アイリスは考え込む。
「もちろん、無理強いするつもりはないけどね」
「わかりました。そこまで仰るならお供させて頂きます」
「ありがとう!」
王子は顔を輝かせた。
「で、いつ出発するのですか?」
「そうだな。早い方がいいだろうから、早速今日の夜に出発しよう」
「今夜ですか?」
「ああ。馬車は用意してあるから心配いらない」
「そうですか」
アイリスは小さく嘆息すると、窓の外を見た。
「雪が降ってきたみたいですね」
外を見ると、ちらほらと白いものが舞っている。
「そういえば、今年の初雪だっけ」
王子は頬杖を突きながら呟いた。
「確か、去年より早く降るって言ってたような気がします」
「そうなんだ」
それからしばらくして、二人が店を出る頃にはすっかり暗くなっていた。
「よし、準備はいいかい?」
「はい」
アイリスは荷物を抱えると、王子と共に馬車に乗り込んだ。
やがて、目的地に着くと、王子は降りて辺りを見回した。
「ここが目的の場所か……」
そこは、山奥にある小さな村だった。
「さあ、行こっか」
「え、ちょっと……」
アイリスは王子に腕を引っ張られる形で、村の中へと足を踏み入れた。
村は静まり返っていて、人っ子一人見当たらない。
「誰もいないじゃないですか」
「そりゃあ、皆寝てるからね」
「なんでわざわざ起こさなかったの?」
「だって、起こすなって言われたもん」
「誰に?」
「村長に」
「どうして?」
「なんでも、夜中にしか現れないらしい」
「どういうこと?」
アイリスは首を傾げる。
「僕にも詳しいことはわからない。ただ、そういう言い伝えがあるらしくてね」
「へぇ」
アイリスは納得いかないといった表情で相槌を打った。
「ところで、一体どこに向えばいいのですか?」
「この道をまっすぐに進んでいけばいいみたいだよ」
王子が指し示した先には、一本の道があった。
二人は並んで歩き始める。
「ねえ、本当にこんなところにその『宝物』があると思うかい?」
「さぁ、どうかしらね」
二人はしばらく黙って歩いていたが、やがて王子の方から話しかけてきた。
「そういえば、アイリスはどう思う?」
「どうって、何の話?」
「王位を継ぐことについてだよ」
「ああ、その件ね」
アイリスは面倒臭そうに答える。
「別にどうでもいいと思うけど」
「そうか。やっぱり、そう思うよね」
王子はホッとしたように言った。
「僕は父上のように立派な国王になれる自信がないんだよ」
「でも、王になるつもりはないんでしょ?」
「ああ。僕は自分の力で王座を勝ち取ってみせる」
王子は拳を握って力説した。
「ふぅん」
アイリスはあまり関心がなさそうに返事をする。
「でも、父上は僕のことを後継者にしようと考えているみたいなんだよな」
「あら、それは困ったわね」
「そうなんだよ。だから、アイリスには僕の為に力を貸して欲しいんだ」
「わかったわ」
アイリスは小さく溜め息をついた。
「ただし、条件があります」
「なんだい?」
「もし私が協力することで、殿下が王位をお継ぎになることになっても、
私は一切口出ししないということです」
「それはかまわないけど、そんなことでいいのか?」
王子は拍子抜けした様子で訊ねる。
「ええ」
アイリスは静かに答えた。
やがて、二人は一軒の家に辿り着いた。
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