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「どうだい?」
「美味しいです」
「よかった」
王子は満足げに笑った。
その後もしばらく他愛のないことを喋っていたが、やがてアイリスが本題を切り出す。
「殿下、一つお聞きしたいことがあるのですが」
「なんだい? 遠慮なく聞いてくれたまえ」
「殿下は王位をお継ぎにならないのですか?」
「ああ、そのことか」
王子は困り果てたという様子で頭を掻いた。
「実を言うと、そのことで悩んでいたんだ」
「そうでしたか」
「うん。正直言うと、このままでもいいんじゃないかって思ってる。幸い、
この国は平和だし、今のままでも十分にやっていけるからね」
王子の言葉に嘘はないようだった。
「殿下のお気持ちはよくわかりました」
「わかってくれたかい?」
「はい」
アイリスは立ち上がる。
「では、私はこれで失礼致します」
「もう帰ってしまうのかい? せっかく来たのに、もっとゆっくりしていけばいいのに」
「申し訳ありませんが、この後所用がございまして」
「そっか。じゃあ仕方ないな」
王子は残念そうに言った。
「そうだ。もし良かったら、今度は二人でどこかに出掛けよう」
「考えておきます」
アイリスはそれだけ言い残すと、王子の部屋を出て行った。
「ふう」
廊下に出たアイリスは小さく溜め息を漏らす。
(まさか、こんなことになるなんて……)
アイリスは王子の誘いを断るのにかなり苦労していた。
というのも、王子がしつこく誘ってくるからだ。
最初はやんわりと断っていたのだが、だんだんとエスカレートしていき、
最終的にはアイリスが折れる形になってしまった。
(まあいいわ。あの男には少し痛い目にあってもらわないと)
アイリスは密かに闘志を燃やす。
(それにしても、この地図は一体……)
アイリスは王子の部屋で見つけた地図のことを思い出す。
(もしかしたら、あれに何か秘密があるのかもしれない)
アイリスは考える。
(明日、行ってみればわかるでしょう)
アイリスはそのまま自室に戻ると、旅支度を始めたのだった……。
翌日、指定された時間に城へ向かうと、すでに王子が待っていた。
「やあ、待ってたよ」
「殿下、私に何の御用でしょうか?」
アイリスは冷たくあしらう。
「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ」
王子は苦笑を浮かべながら言った。
「まずは場所を変えよう」
二人は近くの喫茶店に入った。
「アイリス、好きな物を頼んでくれて構わないよ」
「ありがとうございます」
アイリスはメニュー表を見ながら注文する物を考える。
(うーん。どれもおいしそうで迷っちゃうわね。ここは無難にケーキセットにしておこうかしら)
結局、アイリスはショートケーキとカフェオレを頼むことにした。
(さて、それでは話を聞きましょう)
店員が立ち去った後、アイリスは単刀直入に切り出した。
「それで、一体どんな要件なのですか?」
「実は君に見せたいものがあるんだ」
王子は鞄から地図を取り出した。
「これを見てごらん」
アイリスは言われるままに地図を広げると、ある一点を指さした。
「これは?」
「実は、ここから先は僕も行ったことがないんだ」
「殿下も行ったことがない場所に、どうして私を連れて行こうとするんですか?」
「それはだな……」
王子は声を潜めて囁いた。
「それは、そこにあるものを手に入れる為さ」
「あるもの?」
「そう。とても貴重なものらしい」
王子は身を乗り出して続ける。
「何でも、手に入れることができた者は神に祝福されると言われている」
「神様に?」
「ああ」
王子は深く首肯する。
「美味しいです」
「よかった」
王子は満足げに笑った。
その後もしばらく他愛のないことを喋っていたが、やがてアイリスが本題を切り出す。
「殿下、一つお聞きしたいことがあるのですが」
「なんだい? 遠慮なく聞いてくれたまえ」
「殿下は王位をお継ぎにならないのですか?」
「ああ、そのことか」
王子は困り果てたという様子で頭を掻いた。
「実を言うと、そのことで悩んでいたんだ」
「そうでしたか」
「うん。正直言うと、このままでもいいんじゃないかって思ってる。幸い、
この国は平和だし、今のままでも十分にやっていけるからね」
王子の言葉に嘘はないようだった。
「殿下のお気持ちはよくわかりました」
「わかってくれたかい?」
「はい」
アイリスは立ち上がる。
「では、私はこれで失礼致します」
「もう帰ってしまうのかい? せっかく来たのに、もっとゆっくりしていけばいいのに」
「申し訳ありませんが、この後所用がございまして」
「そっか。じゃあ仕方ないな」
王子は残念そうに言った。
「そうだ。もし良かったら、今度は二人でどこかに出掛けよう」
「考えておきます」
アイリスはそれだけ言い残すと、王子の部屋を出て行った。
「ふう」
廊下に出たアイリスは小さく溜め息を漏らす。
(まさか、こんなことになるなんて……)
アイリスは王子の誘いを断るのにかなり苦労していた。
というのも、王子がしつこく誘ってくるからだ。
最初はやんわりと断っていたのだが、だんだんとエスカレートしていき、
最終的にはアイリスが折れる形になってしまった。
(まあいいわ。あの男には少し痛い目にあってもらわないと)
アイリスは密かに闘志を燃やす。
(それにしても、この地図は一体……)
アイリスは王子の部屋で見つけた地図のことを思い出す。
(もしかしたら、あれに何か秘密があるのかもしれない)
アイリスは考える。
(明日、行ってみればわかるでしょう)
アイリスはそのまま自室に戻ると、旅支度を始めたのだった……。
翌日、指定された時間に城へ向かうと、すでに王子が待っていた。
「やあ、待ってたよ」
「殿下、私に何の御用でしょうか?」
アイリスは冷たくあしらう。
「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ」
王子は苦笑を浮かべながら言った。
「まずは場所を変えよう」
二人は近くの喫茶店に入った。
「アイリス、好きな物を頼んでくれて構わないよ」
「ありがとうございます」
アイリスはメニュー表を見ながら注文する物を考える。
(うーん。どれもおいしそうで迷っちゃうわね。ここは無難にケーキセットにしておこうかしら)
結局、アイリスはショートケーキとカフェオレを頼むことにした。
(さて、それでは話を聞きましょう)
店員が立ち去った後、アイリスは単刀直入に切り出した。
「それで、一体どんな要件なのですか?」
「実は君に見せたいものがあるんだ」
王子は鞄から地図を取り出した。
「これを見てごらん」
アイリスは言われるままに地図を広げると、ある一点を指さした。
「これは?」
「実は、ここから先は僕も行ったことがないんだ」
「殿下も行ったことがない場所に、どうして私を連れて行こうとするんですか?」
「それはだな……」
王子は声を潜めて囁いた。
「それは、そこにあるものを手に入れる為さ」
「あるもの?」
「そう。とても貴重なものらしい」
王子は身を乗り出して続ける。
「何でも、手に入れることができた者は神に祝福されると言われている」
「神様に?」
「ああ」
王子は深く首肯する。
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