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「ど、どうかされましたか?」

私の問いかけを聞いた彼ですが真剣な表情をしておりまして、少しばかり怖くなってきたんです。
それから彼は私の方を向かないままに告げてきます。

「あのな……。こういう事ははっきりと言うんだが、今の俺の気持ちとしては、まだ時期尚早だと考えている。
俺達は出会ってからそこまで時間が経っていないから、夫婦関係になれるのかどうかは正直言って不安があるんだ。
だけどな、これだけは言えるぞ。俺は絶対にメリシアを嫌いになったりしないからな。それだけは忘れんなよ?
あともう一つだけ……。この世界に来たばかりの頃は確かに混乱していたけど、今では違う。
だからこそ思うことがあるんだよ。…………今すぐでなくとも良いが、 その……。なんだ、結婚を前提に付き合わないと、
色々と問題が起きかねないから……。その辺りの事はよく考えておいてくれないかな。
それともあれかい、俺の事が信じられないってのかね……。そうならば悲しいぞ……。
もしそうなのであれば、無理強いはせずに、諦めるとするが……」

その言葉を聞くと、私は慌てて彼の言葉を遮りました。
そうじゃないと否定しておいたのです。

「違います!  ルヴァスを信じていない訳じゃありません!
ただ、貴方は素敵な男性で私よりも魅力的な女性が沢山います。
私なんかではとても釣り合いが取れないと感じるんですよ。
だってそうでしょう?  私は貴族出身で王族の暮らしにすら慣れてないし、マナーなども知らないのです。
ですが貴方の妻になれば、生活に困るような事は無いと分かっています。
でも、私みたいな者が貴方と結ばれるには相応しいとは思えないんですよ。
きっと貴方に嫌な思いをさせてしまうのは間違いないです。
ですけど私は、ルヴァスを他の誰にも渡したくないんです……。たとえ相手が自分の婚約者であろうとも、
ルヴァスの側に居続けるのは譲れなくなってきているんです。でもルヴァスの気持ちを考えると胸が苦しくなるの……。
でも諦めたくもない……。だから私はルヴァスに嫌われても仕方ないと理解しながらも、こうしてお願いをしたわけだけど」

ルヴァスの反応は意外すぎるものだったの。
彼は、何故かとても呆れた顔をしたまま、私を叱咤してくるの。
その事で私が反論しようとした瞬間にルヴァスが口を開いてきて、私を咎め始める。

「馬鹿を言うんじゃ無い!  どうしてそういう発想になるんだ。
大体、貴族の生まれで無い奴が相手では駄目とか言い出したら、平民生まれの女もダメってことになるじゃないか!
そんなのナンセンス過ぎる!  そもそもメリシアは貴族としての振る舞いを完璧にこなせるのか。仮にそうであったとしてもだ、
礼儀作法は必要だが最低限の物で十分なんだ!  メリシアみたいに大仰に振る舞うのは逆効果でしかない。
そう考えると、やはりメリシアは今まで通りの自然な感じでいた方が良い」

そう力強く語っています。
それを耳にしている私は、嬉しいような申し訳ない気分になっていましたが、何とか笑顔を浮かべることには成功していました。
そしてその笑みは、上手く出来ていたらしくて、ルヴァスを納得させる事に成功したのですよ。
その後は彼との会話を楽しむことが出来て、幸せを感じていられたので良かったと思える時間となり、やがて就寝する事に。
ちなみにその時には当然の如くベッドの上で横になっており、彼は隣に居るんですけど……。
その時にふと思った事があるのよ。
(あぁ……。またいつもの癖が出てしまったわ……。いけない事なのに)
そう考えつつ寝たふりをしていたんだけど、しばらくして目を覚ますとルヴァスの姿は既に無くなっていたわ。
なので、すぐに起き上がった私は服を着替えてから外に出た。
そして、彼が何処にいるのかを探し回っていくと、直ぐに見付ける事が出来た。
それは街灯の明かりが届いている場所だったの。
なので彼に見つからないように注意しながら様子を見守る事にしました。
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