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「愛していますわ……」
私が小さく呟くと義兄様は満足げに笑いながら私を抱き寄せて来て私達は眠りにつくのであった。
朝を迎えると私はメイドのアンナに手伝ってもらいながら服を着替え、朝食をとるために食堂へと向かう。
義兄様はすでに席についており、
「今日も可愛いなリリアナ」
と言ってくれました。私ははにかみながら礼を言うと義兄様の隣に座って食事を始めます。
今日のメニューはパンと野菜のスープでした。
一口食べてみると普通に美味しいのでホッとしていると義兄様が私を見ながら尋ねて来る。
「リリアナ。いつも思うんだけど君は料理できるの?」
義兄様の言葉に私はドキリとする。
この世界に来る前の私は前世の記憶を持っているだけでなく、この国の悪役令嬢でもあった。
だから私は一応はある程度の家事ができるのだがこの屋敷にいる使用人達は私よりも遥かに上手なのです。
「わたくしなど大した事はありませんわ。
皆の方が凄いのです。わたくしの家の料理人が作っていたものと同じ味で驚いてしまったぐらいですわ」
私はどうにか誤魔化そうと必死になって答えました。
すると義兄様は考え込むようにしてから言った。
「へーそうなんだ。今度食べたいな。いいよね?」
まさかの言葉に私の心臓が激しく高鳴り始める。
何故ならこの言葉の真意とは……そう考えていると義兄様が私に近づき耳元で言う。
「それじゃあ楽しみにしてるね」
それだけを言い残すと義兄様は椅子に戻る。
「義兄様、私は……」
私が問いかけようとしたその時、義兄様は手を上げてメイドを呼びつけると
私達の元にやって来たメイドに私にこう言ってきた。
「今すぐ厨房に行ってシェフに伝言を伝えてくれ。リリアナは普段あまり料理をしないと言っていたはずだ。
それを確認してから君の判断で食事を用意させてくれないかな?
あとリリアナが調理場に立つ時は俺に事前に伝えておくれ」
義兄様はそれだけ言うと後は黙々と食べるだけになってしまった。
私は一体何を聞かれてしまったのか分かりませんでした。しかしこれである程度の予想は出来る。
「もしかして義兄様は私の事を……いえ、そんなことはありませんわ」
私は小さく首を振って義兄様を見つめるが義兄様はこちらに目を向ける事はなかった。
やっぱりこれは私の思い上がりかも知れません。
だって義兄様は私を本当に可愛がってくれているし、今までの言動に嘘はないと信じています。
なのに、どうして胸が痛いのでしょう?
その日から義兄様は時々私の手料理を食べたいと言い出してきました。
メイド達の腕前が格段に上がった事で私の出番は無くなっていったのですがたまに思い出したかのように
義兄様は私に言いつけてきました。その度に私は恥ずかしくなります。
そしてある日の事だった。
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