16 / 102
16.
しおりを挟む
それは以前、宮瀬さんから聞かされた内容のことだったのですが、あの場にいた人たちの中で一人だけ名前を思い出せなかったことをずっと後悔していたので、
思い切って訊いてみることにしたのですが、やっぱり思い出すことはできませんでした。
そんな時、タイミング良く扉が開き、そちらに視線を向けると、そこにはスーツ姿の男性がいて、
私のことをジッと見詰めたまま動こうとしないものだから不審に思っていると、おもむろに口を開いたと思ったら、こんなことを言ってきたのです。
「君、名前は何て言うのかな?」
突然のことに驚きながらも、正直に答えることにした私は、自分の名前を告げると、男性は納得した様子で頷きながら、さらに続けてこう言ってきました。
どうやらこの男性こそが、今回のパーティーの主賓である大企業の御曹司だったようです。
しかも、名前だけではなく、年齢や家族構成といった個人情報までも教えてくれましたが、私はそれどころではありませんでした。
何故なら、いきなり抱き寄せられてしまった上に、強引に唇を奪われてしまったからです。
突然の出来事に対応できなかった私は、成す術もなく蹂躙されていくことになりますが、
それを望んでいたのも事実なのでした――。
「美羽さん、こっちを向いてくれないか」
(えっ!?)
思わず声のする方を向くと、そこには彼の姿があったのですが、その表情は今まで見たこともないくらい穏やかで優しく微笑んでいて、
それだけで胸がキュンとなるような感覚を覚えてしまいましたが、そんな彼を見ていたら自然と涙がこぼれていました。
そして、それと同時に安心感を覚えたことが引き金となったのか、それまで我慢してきていた感情が溢れ出すかのように泣き出してしまいました。
(あぁ、そうか、この人はもうとっくに覚悟を決めていたんだ)
だからこそこんなにも穏やかな表情で、私に微笑みかけてくれたんだということがわかり、ますます彼のことが好きになってしまったのは言うまでもありませんね。
その後、落ち着いたところで改めてお礼を言い、
「ありがとうございます」
感謝の気持ちを伝えるとともに、深々と頭を下げました。
すると、彼は気にするなと言ってくれて、すぐに話題を変えようとしてきたんですけど、
その時の彼の表情がどこか無理をしているように見えてしまい、気になったものの、これ以上訊くことはできなかったので諦めるしかありませんでした。
ただ、代わりに違うことを聞いてみることにしました。
というのも、彼の様子がおかしくなった原因については何となく予想できていたので、
おそらく原因はこの前出会った人物じゃないかと思ったわけですよ。
思い切って訊いてみることにしたのですが、やっぱり思い出すことはできませんでした。
そんな時、タイミング良く扉が開き、そちらに視線を向けると、そこにはスーツ姿の男性がいて、
私のことをジッと見詰めたまま動こうとしないものだから不審に思っていると、おもむろに口を開いたと思ったら、こんなことを言ってきたのです。
「君、名前は何て言うのかな?」
突然のことに驚きながらも、正直に答えることにした私は、自分の名前を告げると、男性は納得した様子で頷きながら、さらに続けてこう言ってきました。
どうやらこの男性こそが、今回のパーティーの主賓である大企業の御曹司だったようです。
しかも、名前だけではなく、年齢や家族構成といった個人情報までも教えてくれましたが、私はそれどころではありませんでした。
何故なら、いきなり抱き寄せられてしまった上に、強引に唇を奪われてしまったからです。
突然の出来事に対応できなかった私は、成す術もなく蹂躙されていくことになりますが、
それを望んでいたのも事実なのでした――。
「美羽さん、こっちを向いてくれないか」
(えっ!?)
思わず声のする方を向くと、そこには彼の姿があったのですが、その表情は今まで見たこともないくらい穏やかで優しく微笑んでいて、
それだけで胸がキュンとなるような感覚を覚えてしまいましたが、そんな彼を見ていたら自然と涙がこぼれていました。
そして、それと同時に安心感を覚えたことが引き金となったのか、それまで我慢してきていた感情が溢れ出すかのように泣き出してしまいました。
(あぁ、そうか、この人はもうとっくに覚悟を決めていたんだ)
だからこそこんなにも穏やかな表情で、私に微笑みかけてくれたんだということがわかり、ますます彼のことが好きになってしまったのは言うまでもありませんね。
その後、落ち着いたところで改めてお礼を言い、
「ありがとうございます」
感謝の気持ちを伝えるとともに、深々と頭を下げました。
すると、彼は気にするなと言ってくれて、すぐに話題を変えようとしてきたんですけど、
その時の彼の表情がどこか無理をしているように見えてしまい、気になったものの、これ以上訊くことはできなかったので諦めるしかありませんでした。
ただ、代わりに違うことを聞いてみることにしました。
というのも、彼の様子がおかしくなった原因については何となく予想できていたので、
おそらく原因はこの前出会った人物じゃないかと思ったわけですよ。
0
お気に入りに追加
296
あなたにおすすめの小説
俺様御曹司は十二歳年上妻に生涯の愛を誓う
ラヴ KAZU
恋愛
藤城美希 三十八歳独身
大学卒業後入社した鏑木建設会社で16年間経理部にて勤めている。
会社では若い女性社員に囲まれて、お局様状態。
彼氏も、結婚を予定している相手もいない。
そんな美希の前に現れたのが、俺様御曹司鏑木蓮
「明日から俺の秘書な、よろしく」
経理部の美希は蓮の秘書を命じられた。
鏑木 蓮 二十六歳独身
鏑木建設会社社長 バイク事故を起こし美希に命を救われる。
親の脛をかじって生きてきた蓮はこの出来事で人生が大きく動き出す。
社長と秘書の関係のはずが、蓮は事あるごとに愛を囁き溺愛が始まる。
蓮の言うことが信じられなかった美希の気持ちに変化が......
望月 楓 二十六歳独身
蓮とは大学の時からの付き合いで、かれこれ八年になる。
密かに美希に惚れていた。
蓮と違い、奨学金で大学へ行き、実家は農家をしており苦労して育った。
蓮を忘れさせる為に麗子に近づいた。
「麗子、俺を好きになれ」
美希への気持ちが冷めぬまま麗子と結婚したが、徐々に麗子への気持ちに変化が現れる。
面倒見の良い頼れる存在である。
藤城美希は三十八歳独身。大学卒業後、入社した会社で十六年間経理部で働いている。
彼氏も、結婚を予定している相手もいない。
そんな時、俺様御曹司鏑木蓮二十六歳が現れた。
社長就任挨拶の日、美希に「明日から俺の秘書なよろしく」と告げた。
社長と秘書の関係のはずが、蓮は美希に愛を囁く
実は蓮と美希は初対面ではない、その事実に美希は気づかなかった。
そして蓮は美希に驚きの事を言う、それは......
家族愛しか向けてくれない初恋の人と同棲します
佐倉響
恋愛
住んでいるアパートが取り壊されることになるが、なかなか次のアパートが見つからない琴子。
何気なく高校まで住んでいた場所に足を運ぶと、初恋の樹にばったりと出会ってしまう。
十年ぶりに会話することになりアパートのことを話すと「私の家に住まないか」と言われる。
未だ妹のように思われていることにチクチクと苦しみつつも、身内が一人もいない上にやつれている樹を放っておけない琴子は同棲することになった。
契約結婚!一発逆転マニュアル♡
伊吹美香
恋愛
『愛妻家になりたい男』と『今の状況から抜け出したい女』が利害一致の契約結婚⁉
全てを失い現実の中で藻掻く女
緒方 依舞稀(24)
✖
なんとしてでも愛妻家にならねばならない男
桐ケ谷 遥翔(30)
『一発逆転』と『打算』のために
二人の契約結婚生活が始まる……。
とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~
けいこ
恋愛
「絶対に後悔させない。今夜だけは俺に全てを委ねて」
燃えるような一夜に、私は、身も心も蕩けてしまった。
だけど、大学を卒業した記念に『最後の思い出』を作ろうなんて、あなたにとって、相手は誰でも良かったんだよね?
私には、大好きな人との最初で最後の一夜だったのに…
そして、あなたは海の向こうへと旅立った。
それから3年の時が過ぎ、私は再びあなたに出会う。
忘れたくても忘れられなかった人と。
持ちかけられた契約結婚に戸惑いながらも、私はあなたにどんどん甘やかされてゆく…
姉や友人とぶつかりながらも、本当の愛がどこにあるのかを見つけたいと願う。
自分に全く自信の無いこんな私にも、幸せは待っていてくれますか?
ホテル リベルテ 鳳条グループ 御曹司
鳳条 龍聖 25歳
×
外車販売「AYAI」受付
桜木 琴音 25歳
ワケあって、お見合い相手のイケメン社長と山で一夜を過ごすことになりました。
紫月あみり
恋愛
※完結! 焚き火の向かい側に座っているのは、メディアでも話題になったイケメン会社経営者、藤原晃成。山奥の冷えた外気に、彼が言い放った。「抱き合って寝るしかない」そんなの無理。七時間前にお見合いしたばかりの相手なのに!? 応じない私を、彼が羽交い締めにして膝の上に乗せる。向き合うと、ぶつかり合う私と彼の視線。運が悪かっただけだった。こうなったのは――結婚相談所で彼が私にお見合いを申し込まなければ、妹から直筆の手紙を受け取らなければ、そもそも一ヶ月前に私がクマのマスコットを失くさなければ――こんなことにならなかった。彼の腕が、私を引き寄せる。私は彼の胸に顔を埋めた……
完結*三年も付き合った恋人に、家柄を理由に騙されて捨てられたのに、名家の婚約者のいる御曹司から溺愛されました。
恩田璃星
恋愛
清永凛(きよなが りん)は平日はごく普通のOL、土日のいずれかは交通整理の副業に励む働き者。
副業先の上司である夏目仁希(なつめ にき)から、会う度に嫌味を言われたって気にしたことなどなかった。
なぜなら、凛には付き合って三年になる恋人がいるからだ。
しかし、そろそろプロポーズされるかも?と期待していたある日、彼から一方的に別れを告げられてしまいー!?
それを機に、凛の運命は思いも寄らない方向に引っ張られていく。
果たして凛は、両親のように、愛の溢れる家庭を築けるのか!?
*この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
*不定期更新になることがあります。
【R18・完結】甘溺愛婚 ~性悪お嬢様は契約婚で俺様御曹司に溺愛される~
花室 芽苳
恋愛
【本編完結/番外編完結】
この人なら愛せそうだと思ったお見合い相手は、私の妹を愛してしまった。
2人の間を邪魔して壊そうとしたけど、逆に2人の想いを見せつけられて……
そんな時叔父が用意した新しいお見合い相手は大企業の御曹司。
両親と叔父の勧めで、あっという間に俺様御曹司との新婚初夜!?
「夜のお相手は、他の女性に任せます!」
「は!?お前が妻なんだから、諦めて抱かれろよ!」
絶対にお断りよ!どうして毎夜毎夜そんな事で喧嘩をしなきゃならないの?
大きな会社の社長だからって「あれするな、これするな」って、偉そうに命令してこないでよ!
私は私の好きにさせてもらうわ!
狭山 聖壱 《さやま せいいち》 34歳 185㎝
江藤 香津美 《えとう かつみ》 25歳 165㎝
※ 花吹は経営や経済についてはよくわかっていないため、作中におかしな点があるかと思います。申し訳ありません。m(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる