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「何をしていた?」
その声色は冷たく、私は震えあがりそうになります。
ですが、ここで引いたら、きっとまた酷い目に合わされてしまうでしょう。
私は勇気を振り絞って言い返しました。
「私はただ陛下のお世話をしているだけです! それがいけない事なのですか!?」
そう言うと、陛下はため息を吐いて、
「そうか…………お前は俺の物だ、それを忘れるなよ」
そう言って、部屋から出て行かれました。
はぁ、今日もまた怒られてしまいました。
「申し訳ありません」
私が頭を下げると、ウディル様は、私に近づいてきて私を抱き寄せてくださり頭を撫でてくださいました。
その行為に思わずドキッとしてしまえばウディル様が笑いかけてくれます。
その笑った時のウディル様の顔が私は好きでした。
ウディル様は私の顎に手を添えて上に向かせ、唇を重ねてきてくれます。
私はその優しい口づけが大好きだと思います。
何度も何度も口付けを交わして、離れ難いと思うのですが、そういうわけにも参りませんので、
名残惜しいですが口を離します。
最後に軽く頬擦りするようにしてから離れて行きます。
その時には、陛下もいつもの表情に戻っており、私を抱きしめてから頭を撫でてくださいました。
そして、一言だけこう呟かれたのです。
「この部屋で待っていろ」
それから、部屋を出て行く時にもう一度だけ、先ほどと同じように優しく抱きしめて下さり、
そのまま部屋を後にされていきます。
扉を閉める際に、小さく、本当に小さな声で囁かれるように言われた言葉がとても印象的でした。
それは、
「―――愛してるよ」
その言葉を聞けただけでも、私は幸せ者だと思ってしまうのでした。
私はその日ずっと陛下の部屋で待機していました。
「私はどうしたらいいのかしら」
私は一人悩み続けますが、答えは出ないまま、時間が過ぎ去っていきます。
やがて、部屋の外から足音が聞こえてきました。
私はハッとなって、急いで服装を整え直します。
ドアがノックされると、陛下の声が響き渡りました。
陛下は私を呼ぶと、部屋に入ってくるように指示を出しました。
私は緊張しながらも、しっかりとした態度を保ちながら、部屋に入室致します。
そして、私の目の前には、あの憎きフィリアの兄であるあの男が立っていました。
私は男のことを見つめると、男はニタリとした気持ちの悪い笑顔を浮かべています。
私は背筋に寒気が走りました。
私は思わず一歩下がってしまいます。
男はそんな事を気にする様子もなく、私の方へと近寄って来ました。
そして、私の肩を抱いてくるではありませんか。
私は驚いていると、男は私に話しかけてきました。
その内容は、私に対する愛の言葉ばかりでした。
私は最初こそ戸惑っておりましたが、次第に心を許していくのが自分でもわかりました。
男の手が私の乳房に伸びてきて、
「やっ」
私は咄嵯に乳房を隠してしまいます。
ですが、男はお構いなしに、私の腕を掴み引き剥がしてしまいます。
私は必死に隠そうとしますが、力が強く振り払えません。
私は恐怖を感じてしまいました。
すると、ウディル様が氷魔法を使て撃退されたので、私は助かりました。
ウディル様は私に近づくなと言って、私を守るように前に立ってくださいました。
ウディル様は私を守ってくれるのです。
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