悪役令嬢の許嫁は絶倫国王陛下だった!? ~婚約破棄から始まる溺愛生活~

一ノ瀬 彩音

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私はそれを受け取って言う。
でも、どうしてウディルはそんな喋り方なんだろう? ウディルは自分の事を俺と言うはず。
私はもう一度ウディルに聞く。
でも、答えてくれない。
私はウディルに言う。
でも、その声はウディルには届かない。
私はウディルに言う。
何度も何度も。
私はウディルの目の前に行って言う。
ウディルは少し驚いている様に見える。
ウディルは私に言う。
今度ははっきりと聞こえた。
私は自分の耳を疑う。
「いまなんて……双子?」
私はウディルの言葉を反すうする。
ウディルは私に言う。
今度ははっきり聞こえる。
でも、聞き間違いではない。
確かに言った。
僕には双子の弟がいると。
ウディルは続ける。
僕の弟は凄いんだって。
剣の腕は天才的で、この国の騎士団長よりも強いらしい。
私はウディルに言う。
「ウディルは私の事を覚えていないの?」
と、聞くと
「一度抱いたから分かるよ」
っと返された。
えっ、一度抱いた?
「俺と呼ぶのは何方なの?」
「それは両方一緒だよ、ただ見分け方としては、弟の方がイジワルかな」
そう教えてくれた。
私はウディルに言う。
でも、ウディルは答えてくれない。
私はウディルの服を引っ張ってみるが、気付いてくれない。
私はウディルに抱きついて見るが、無視されてしまう。
ウディルは私の腕を振りほどくと、何処かに消えてしまった。
私はウディルの後を追いかけた。
ウディルは路地裏に入って行ったのが見えた。
私は急いで追いかけた。
でも、ウディルは見当たらない。
私は周りを見渡すと、一人の男と目が合った。
私は一瞬ドキッとする。
そこにいるのはウディルだった。
「ねぇ、さっき話は本当なの?」
「何の話だよ」
「貴方のお兄さんにあったの」
深刻そうな顔をするとそのままこう呟いた。
「俺に兄は居ないぞ」
ウディルはそれだけ言うと、その場を離れた。
私は動揺するとウディルに聞く。
でも、ウディルは振り返らずに歩いて行く。
私はウディルを呼び止めるが、やはり振り向いてはくれない。
私達は許嫁だったのに。
今迄一緒に過ごして来たのに。
ウディルが私を忘れてしまうなんて。
でも、考えてみれば当然かもしれない。
ウディルは記憶喪失なのだから。
でも、私と過ごした日々は? 思い出せないのだろうか? 私は不安になる。
ウディルの後ろ姿が見えなくなると、その場にへたり込んでしまう。
涙が流れてくる。
ウディルは私の事を覚えていてくれるのだろうか?
急いで城に戻ると私は宛がえられた部屋にふさぎ込んでいた。
部屋の外では侍女達が心配して声をかけてくれるが、私は適当にあしらう。
そしてベッドの上で毛布を頭から被ると、一人泣いていた。
夕食の時間になると、部屋の前に誰かが来たようで、扉越しに声を掛けられると返事をして
部屋の中に招き入れた。
すると、そこには叔父さんがいた。
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