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そんなある日、フィリアはメイド長のアンナに呼ばれた。
「なんでしょうか?」
フィリアは執務室にいた。
目の前には紅茶の入ったティーカップが置かれており、アンナがニコニコしながら
こちらを見ている。
なんだか嫌な予感しかしないが、聞かないわけにもいかない。
「あの……何か私に用ですか?」
「はい、実はフィリア様にお願いしたい事がございます」
「……何でしょう?」
「ウディル陛下の事なのですが、ここのところかなり仕事が立て込んでいまして、
連日遅くまで仕事をしております。そこで、陛下の疲労を少しでも軽減できればと
思いまして、フィリア様には毎日陛下にマッサージをして差し上げて頂けないかと……」
「マ、マッサージ!?」
「はい、さようです。フィリア様は以前から体が柔らかく、運動神経も良いと
聞いて
おりましたので適任だと思い、是非とも頼めないかなと」
確かに子供の頃から体を柔軟させるのが好きで、色々な体操をしていた。
だから、体には自信がある。
しかし、いくら婚約者とは言え、男性の体に触っていいものなのか……。
それに…… ウディルは私の事を女として見てくれない。
私がウディルと結婚したとしても、彼はきっと政略結婚の相手としか思っていないはず。
それなのに、私は彼に求められていないのに……。
「……わかりました」
「本当ですか? ありがとうございます」
「いえ……ただ、一つだけ条件があります」
「条件でございますか? どのような事でしょう」
「はい、マッサージをする時は、その……服を脱いでして欲しいのですが……ダメでしょうか?」
「服を着たままでは駄目なのですか?」
「はい、やはり直接肌に触れないと効果がありませんから」
「そう言う物なのですね。では、陛下に伝えておきましょう。後程フィリア様の部屋へ
使いの者を行かせますので、準備をしていてください」
「わかりました」
こうして、フィリアはウディルのためにマッサージをする事になってしまった。
しかし、この時フィリアは知らなかった。
ウディルの疲労の原因が自分にある事を。
(んっ……ここは?)
フィリアが目を開けるとそこは見た事のない部屋だった。
辺りを見回すと窓があり、そこから見える景色はどこかの森の中のようだ。
そして、ベッドの上にいるのがわかる。
確か自分はウディルの為にマッサージをするために王宮に来ていたはずだ。
そして、王宮の一室で着替えてからウディルが来るのを待っていた。
だが、何故こんな場所に居るのかわからない。
誘拐された? いや、それなら見張りの一人も居ないというのはおかしい。
考えられるのは魔法による催眠術だろうか。
だとすると、ウディルが危ない! 早く助けを呼ばないと!
そう思った時、部屋のドアが開いて人が入ってきた。
「なんでしょうか?」
フィリアは執務室にいた。
目の前には紅茶の入ったティーカップが置かれており、アンナがニコニコしながら
こちらを見ている。
なんだか嫌な予感しかしないが、聞かないわけにもいかない。
「あの……何か私に用ですか?」
「はい、実はフィリア様にお願いしたい事がございます」
「……何でしょう?」
「ウディル陛下の事なのですが、ここのところかなり仕事が立て込んでいまして、
連日遅くまで仕事をしております。そこで、陛下の疲労を少しでも軽減できればと
思いまして、フィリア様には毎日陛下にマッサージをして差し上げて頂けないかと……」
「マ、マッサージ!?」
「はい、さようです。フィリア様は以前から体が柔らかく、運動神経も良いと
聞いて
おりましたので適任だと思い、是非とも頼めないかなと」
確かに子供の頃から体を柔軟させるのが好きで、色々な体操をしていた。
だから、体には自信がある。
しかし、いくら婚約者とは言え、男性の体に触っていいものなのか……。
それに…… ウディルは私の事を女として見てくれない。
私がウディルと結婚したとしても、彼はきっと政略結婚の相手としか思っていないはず。
それなのに、私は彼に求められていないのに……。
「……わかりました」
「本当ですか? ありがとうございます」
「いえ……ただ、一つだけ条件があります」
「条件でございますか? どのような事でしょう」
「はい、マッサージをする時は、その……服を脱いでして欲しいのですが……ダメでしょうか?」
「服を着たままでは駄目なのですか?」
「はい、やはり直接肌に触れないと効果がありませんから」
「そう言う物なのですね。では、陛下に伝えておきましょう。後程フィリア様の部屋へ
使いの者を行かせますので、準備をしていてください」
「わかりました」
こうして、フィリアはウディルのためにマッサージをする事になってしまった。
しかし、この時フィリアは知らなかった。
ウディルの疲労の原因が自分にある事を。
(んっ……ここは?)
フィリアが目を開けるとそこは見た事のない部屋だった。
辺りを見回すと窓があり、そこから見える景色はどこかの森の中のようだ。
そして、ベッドの上にいるのがわかる。
確か自分はウディルの為にマッサージをするために王宮に来ていたはずだ。
そして、王宮の一室で着替えてからウディルが来るのを待っていた。
だが、何故こんな場所に居るのかわからない。
誘拐された? いや、それなら見張りの一人も居ないというのはおかしい。
考えられるのは魔法による催眠術だろうか。
だとすると、ウディルが危ない! 早く助けを呼ばないと!
そう思った時、部屋のドアが開いて人が入ってきた。
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