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3 誘惑*
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昼は日差しがきついせいもあり、もっぱら昼寝をしているという王子は、彼にとっては幸いなことに夜には強い。灯台をともした自室の寝台で横になってはいるが、彼が挨拶の声をかけると、すぐに寝台から跳ね起きて、全開の笑顔で彼に抱きついてくる。
「会いたかった!」
王子の言葉はとても直截だ。しかし、それだけに嘘がない。
「私もです、殿下。また体調を崩されてはいないかと、とても心配しておりました」
王子の白い髪を撫でながら言うと、彼はくすぐったそうに笑った。
「今日は調子がいいんだ。だから、おまえを待っていたのに……もう少しで寝てしまうところだった」
「そうですか。それはありがとうございます。しかし、いくら調子がよくても、決して無理をなさってはいけませんよ。……今日は何をされていたんですか?」
「うん、この前、おまえが持ってきてくれた本を読んでいた――」
そう言いかけた王子の赤い瞳が、ちらっと彼を見上げた。
「どうしました? 何か問題のある本でも交じっていましたか?」
「……〝証拠〟」
ぼそっと呟いて、彼の服を引っ張る。その白い頬はうっすら赤く染まっている。それで彼はようやく、王子が今何を欲しているのかを知った。
「ああ、申し訳ありません。殿下にお会いできただけで嬉しくて、ついうっかりしておりました」
彼は苦笑すると、王子の手を引いて寝台へと連れていき、そこに王子を座らせてから、自分もその隣に腰を下ろした。赤くなってうつむいている王子を抱き寄せ、細い顎をとらえて自分のほうを向かせると、そっと唇を重ねる。
彼と王子とでは身長差がかなりあるため、こうして座ってしたほうが、それだけ長く互いの唇を味わうことができるのだ。
「ん……」
王子が我慢しきれずに、彼の胸にしがみついてくる。
――このままここに押し倒して、この王子を完全に自分のものにしてしまいたい。
だが、彼はその誘惑を振りきって唇を離し、すでに虚脱状態の王子の体を強く抱きしめた。
まだ早い。ただでさえ病弱なこの少年が、彼を受け入れられるようになるまでには、もう少しだけ時間が必要だ。一時だけの快楽で、永遠にこの少年を失いたくはない。
「セト……」
彼の厚い胸の中で、王子が陶然と呟く。
「口づけだけで、いいのか?」
自分の心のうちを読まれた気がして、彼は腕の中の王子を見た。王子は彼の胸に顔を埋めたまま、彼の鼓動に耳を傾けているかのように目を閉じていた。
「私はおまえになら、女として扱われてもかまわない。男が女にすることなら、私も知識として知っている」
「殿下……おやめください。私はあなたを女の代替として愛したわけではありません」
「でも、私はそれしか知らない」
王子は目を開いて、まっすぐに彼を見上げた。
「セト……たぶん、私はそれほど長くは生きられない。それなら、一日でも早くおまえに抱かれたい」
「殿下。お願いですから、そのような不吉なことはおっしゃらないでください」
そう言いながらも、彼自身、最も短命と言われる最下層の貧民たちよりも、この王子のほうが先に冥府へ行くことになるだろうことはわかっていた。むしろ、この年齢まで生きていられたことのほうが奇跡に近いのだ。
「本当に、いいんですか?」
白い髪を撫でながら問うと、王子は緊張した面持ちで黙ってうなずいた。
「そうですね……ではまず、こちらに横になっていただけますか?」
優しく微笑んでから、彼は王子を抱きかかえるようにして、寝台の上に移動させた。
しかし、そのまま王子を寝台に横たえたりはせず、ちょうど王子の背中に枕があたるようにして座らせた。
「セト?」
不思議そうに見返す王子に対して、彼は悪戯っぽく笑った。
「殿下はそのまま力を抜いて、楽にしていらしてください。ただし、嫌だとおっしゃっても途中でやめませんから、そのおつもりで」
「う……うん」
すでに王子はやめたいと言いたそうな顔をしていたが、自分から彼に抱いてほしいと迫った手前、そうするわけにもいかなかったのだろう。ぎごちなく不安そうにうなずいた。
「それでは、失礼いたします」
慇懃に彼は一礼すると、王子の前にひざまずき、王子の下帯を解いた。反射的に王子は手を伸ばして抗ったが、それを片手で簡単に封じこんでしまうと、初めて目にする王子の中心を食い入るように見つめた。
白く淡い繁みに包まれたそこは、他の場所より多少黒ずんではいたものの、彼の感覚からすれば、まだまだ白いと言えた。すでに興奮していたのだろう、まだ幼さの残るそれは、やや立ち上がりはじめていた。
彼は笑みをこぼすと、それを自分の浅黒い大きな手の上に載せ、撫でるように扱きはじめた。
「あっ……やっ……」
王子が小さく悲鳴を上げる。だが、彼はそれを無視して手を動かしつづけた。
王子が本気で嫌がっていないことは、その表情と声とでわかっていた。こうした刺激には慣れていないのか、たちまちそれは天を仰ぎ、その先端から透明な蜜を垂らして、彼の手をしとどに濡らした。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
熱に浮かされているときのように、王子は大きく胸を上下させて、寝台の背もたれによりかかった。
「あ…!」
王子が短く声を発して体を震わせた。その瞬間、王子から噴き出たものは彼の服を盛大に汚したが、彼がそれを厭うはずもなかった。
王子は弛緩して、枕に体を沈みこませた。白い肌は上気して、うっすら汗を浮かべている。
「こんな……こんなのって……」
息を弾ませながら、恨みがましそうに王子は言った。
「殿下も、ご自分でされたことはおありでしょう?」
「あることはあるけれど……まさか、おまえにそうされるなんて……」
「驚かれましたか? でも、男同士なら普通にすることですよ」
「どうしておまえが知っているんだ……?」
「殿下よりは長く生きておりますから」
すましてそう答えてから、彼は寝台を下り、部屋に用意されている清潔な布を取りにいって、それで王子の体を丁寧に拭った。
汗をかいた体をこのままにしておいたら、きっとまた熱を出して寝こんでしまう。王子もつらいだろうが、回復するまで待たされる彼のほうもつらいのだ。せっかく苦労してここまでこぎつけたのに。
王子の萎えたものを彼が拭おうとすると、王子はびくんと体を震わせて、恥ずかしそうにうつむいた。しかし、それで初めて気がついたとでもいうように、王子は彼を見上げた。
「セト、おまえは? おまえが私にしてくれたように、私もおまえにしなければ、不公平になるのではないか?」
不公平と言われれば確かに不公平だが、この王子の手で自分がそうされるのは、どうしても抵抗があった。
「私は殿下に触れられるだけで満足ですから」
そう言って逃げようとすると、王子は不満そうに自分の両足を閉じてしまった。
「おまえばっかりずるい。私だって、おまえのものを見てみたい」
「いや、殿下にお見せできるほどのものでは……」
さすがの彼も、これには本気で返答に困ってしまった。この服を脱いでしまったら、今度こそ彼の自制心は完全に失われてしまうだろう。そうなった自分がこの白子の王子に何をしようとするか、想像してみるまでもなかった。
「それでは殿下、こういたしましょう。少しの間だけ、目を閉じていていただけますか?」
彼がそう提案すると、王子は不審そうに上目使いで彼を見た。
「私が目を閉じている間に、この部屋から出ていくつもりではないだろうな?」
「まさか。そのような失礼な真似はいたしません」
顔はにこやかに否定しながら、そうかその手があったかと彼は感心していた。やはりこの王子は聡い。
「殿下が目を閉じている間、私は殿下の右手を握っております。これなら、その心配はないでしょう?」
「本当だな? 約束だぞ?」
王子は彼を睨みつけると――本人はそのつもりなのかもしれないが、彼には可愛らしくすねているようにしか見えなかった――赤い目を閉じてから、彼に向かって右手を差し出した。
「承知いたしました。そのかわり、私がいいと言うまで、決して目を開けてはいけませんよ」
彼は王子の右手をつかむと、その手を自分の股間へと導いた。それに触れた瞬間、王子は驚いたように指先を浮かせたが、もう一度、探るように指を動かした。
「服の上からでもおわかりでしょう? 私が今、どれほどあなたを欲しているか。私が服を脱がないのは、あなたを壊してしまうことが恐ろしいからです。あなたに言われるまでもなく、最後にはあなたを女のように扱ってしまう。――おわかりですか。私はこれをあなたの中に埋めたいと思っている。でも、きっと今のあなたのお体では耐えきれないでしょう。もしかしたら、あなたを死なせてしまうかもしれません」
「でも、セト。そうしたら、私はいったいいつになったら――」
不安そうに王子がそう言いかけたとき、彼は王子の右手を引き寄せ、強引にその唇を塞いだ。王子は一瞬目を開きかけたが、彼との約束を思い出したのか、それとも今は閉じたままのほうがいいと判断したのか、彼に右手を握られたまま、彼の舌による蹂躙を甘んじて受けつづけた。
「殿下。もう目を開けてもいいですよ」
彼に囁かれ、息を切らせながら王子が目を開けると、彼はまるで何事もなかったような顔をして、王子の口元を布で拭っていた。
「セト……」
「はい」
「おまえは、よく我慢できるな。私は、もう……」
王子は頬を染めて、自分の下半身を掛布で隠そうとした。彼は難なく掛布をはぎとり、王子のそこが再び張りつめて、すでに濡れはじめていることを知った。
「殿下は我慢なさらなくても結構ですよ」
彼は苦笑すると、恥じらう王子の両足をたやすく左右に広げさせた。その真ん中でぬらぬらと光っているそれをそっと握りしめ、平伏するように頭を下げると、彼は自分の手の中にあるものを、躊躇なく口に咥えた。
「あ、そんな……」
とっさに王子は彼を押し返そうとしたが、すぐに力を失って身を反り返らせた。
「はぁ…はぁ…あッ…あッ…」
彼の舌技に、王子は声を立てて乱れた。興奮の度合いが増すごとに、自分の両膝をつかんでさらに足を広げ、ついには自ら腰を揺らしはじめる。
誰に教えられたわけでもなく、勝手に体が動いてしまうのだ。彼の口腔内で王子は大きく膨れ上がり、そして弾けた。
先ほどは自分の服を濡らしたものを、彼は美酒のようにあまさず飲み干した。
「セト……セト……」
熱に浮かされたように王子が彼の名を呼ぶ。実際、もう熱が出ているかもしれなかった。
少しだけ後悔しながら、彼は自分の服で口元を拭い、脱力して動けない王子を強く抱きしめた。
「会いたかった!」
王子の言葉はとても直截だ。しかし、それだけに嘘がない。
「私もです、殿下。また体調を崩されてはいないかと、とても心配しておりました」
王子の白い髪を撫でながら言うと、彼はくすぐったそうに笑った。
「今日は調子がいいんだ。だから、おまえを待っていたのに……もう少しで寝てしまうところだった」
「そうですか。それはありがとうございます。しかし、いくら調子がよくても、決して無理をなさってはいけませんよ。……今日は何をされていたんですか?」
「うん、この前、おまえが持ってきてくれた本を読んでいた――」
そう言いかけた王子の赤い瞳が、ちらっと彼を見上げた。
「どうしました? 何か問題のある本でも交じっていましたか?」
「……〝証拠〟」
ぼそっと呟いて、彼の服を引っ張る。その白い頬はうっすら赤く染まっている。それで彼はようやく、王子が今何を欲しているのかを知った。
「ああ、申し訳ありません。殿下にお会いできただけで嬉しくて、ついうっかりしておりました」
彼は苦笑すると、王子の手を引いて寝台へと連れていき、そこに王子を座らせてから、自分もその隣に腰を下ろした。赤くなってうつむいている王子を抱き寄せ、細い顎をとらえて自分のほうを向かせると、そっと唇を重ねる。
彼と王子とでは身長差がかなりあるため、こうして座ってしたほうが、それだけ長く互いの唇を味わうことができるのだ。
「ん……」
王子が我慢しきれずに、彼の胸にしがみついてくる。
――このままここに押し倒して、この王子を完全に自分のものにしてしまいたい。
だが、彼はその誘惑を振りきって唇を離し、すでに虚脱状態の王子の体を強く抱きしめた。
まだ早い。ただでさえ病弱なこの少年が、彼を受け入れられるようになるまでには、もう少しだけ時間が必要だ。一時だけの快楽で、永遠にこの少年を失いたくはない。
「セト……」
彼の厚い胸の中で、王子が陶然と呟く。
「口づけだけで、いいのか?」
自分の心のうちを読まれた気がして、彼は腕の中の王子を見た。王子は彼の胸に顔を埋めたまま、彼の鼓動に耳を傾けているかのように目を閉じていた。
「私はおまえになら、女として扱われてもかまわない。男が女にすることなら、私も知識として知っている」
「殿下……おやめください。私はあなたを女の代替として愛したわけではありません」
「でも、私はそれしか知らない」
王子は目を開いて、まっすぐに彼を見上げた。
「セト……たぶん、私はそれほど長くは生きられない。それなら、一日でも早くおまえに抱かれたい」
「殿下。お願いですから、そのような不吉なことはおっしゃらないでください」
そう言いながらも、彼自身、最も短命と言われる最下層の貧民たちよりも、この王子のほうが先に冥府へ行くことになるだろうことはわかっていた。むしろ、この年齢まで生きていられたことのほうが奇跡に近いのだ。
「本当に、いいんですか?」
白い髪を撫でながら問うと、王子は緊張した面持ちで黙ってうなずいた。
「そうですね……ではまず、こちらに横になっていただけますか?」
優しく微笑んでから、彼は王子を抱きかかえるようにして、寝台の上に移動させた。
しかし、そのまま王子を寝台に横たえたりはせず、ちょうど王子の背中に枕があたるようにして座らせた。
「セト?」
不思議そうに見返す王子に対して、彼は悪戯っぽく笑った。
「殿下はそのまま力を抜いて、楽にしていらしてください。ただし、嫌だとおっしゃっても途中でやめませんから、そのおつもりで」
「う……うん」
すでに王子はやめたいと言いたそうな顔をしていたが、自分から彼に抱いてほしいと迫った手前、そうするわけにもいかなかったのだろう。ぎごちなく不安そうにうなずいた。
「それでは、失礼いたします」
慇懃に彼は一礼すると、王子の前にひざまずき、王子の下帯を解いた。反射的に王子は手を伸ばして抗ったが、それを片手で簡単に封じこんでしまうと、初めて目にする王子の中心を食い入るように見つめた。
白く淡い繁みに包まれたそこは、他の場所より多少黒ずんではいたものの、彼の感覚からすれば、まだまだ白いと言えた。すでに興奮していたのだろう、まだ幼さの残るそれは、やや立ち上がりはじめていた。
彼は笑みをこぼすと、それを自分の浅黒い大きな手の上に載せ、撫でるように扱きはじめた。
「あっ……やっ……」
王子が小さく悲鳴を上げる。だが、彼はそれを無視して手を動かしつづけた。
王子が本気で嫌がっていないことは、その表情と声とでわかっていた。こうした刺激には慣れていないのか、たちまちそれは天を仰ぎ、その先端から透明な蜜を垂らして、彼の手をしとどに濡らした。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」
熱に浮かされているときのように、王子は大きく胸を上下させて、寝台の背もたれによりかかった。
「あ…!」
王子が短く声を発して体を震わせた。その瞬間、王子から噴き出たものは彼の服を盛大に汚したが、彼がそれを厭うはずもなかった。
王子は弛緩して、枕に体を沈みこませた。白い肌は上気して、うっすら汗を浮かべている。
「こんな……こんなのって……」
息を弾ませながら、恨みがましそうに王子は言った。
「殿下も、ご自分でされたことはおありでしょう?」
「あることはあるけれど……まさか、おまえにそうされるなんて……」
「驚かれましたか? でも、男同士なら普通にすることですよ」
「どうしておまえが知っているんだ……?」
「殿下よりは長く生きておりますから」
すましてそう答えてから、彼は寝台を下り、部屋に用意されている清潔な布を取りにいって、それで王子の体を丁寧に拭った。
汗をかいた体をこのままにしておいたら、きっとまた熱を出して寝こんでしまう。王子もつらいだろうが、回復するまで待たされる彼のほうもつらいのだ。せっかく苦労してここまでこぎつけたのに。
王子の萎えたものを彼が拭おうとすると、王子はびくんと体を震わせて、恥ずかしそうにうつむいた。しかし、それで初めて気がついたとでもいうように、王子は彼を見上げた。
「セト、おまえは? おまえが私にしてくれたように、私もおまえにしなければ、不公平になるのではないか?」
不公平と言われれば確かに不公平だが、この王子の手で自分がそうされるのは、どうしても抵抗があった。
「私は殿下に触れられるだけで満足ですから」
そう言って逃げようとすると、王子は不満そうに自分の両足を閉じてしまった。
「おまえばっかりずるい。私だって、おまえのものを見てみたい」
「いや、殿下にお見せできるほどのものでは……」
さすがの彼も、これには本気で返答に困ってしまった。この服を脱いでしまったら、今度こそ彼の自制心は完全に失われてしまうだろう。そうなった自分がこの白子の王子に何をしようとするか、想像してみるまでもなかった。
「それでは殿下、こういたしましょう。少しの間だけ、目を閉じていていただけますか?」
彼がそう提案すると、王子は不審そうに上目使いで彼を見た。
「私が目を閉じている間に、この部屋から出ていくつもりではないだろうな?」
「まさか。そのような失礼な真似はいたしません」
顔はにこやかに否定しながら、そうかその手があったかと彼は感心していた。やはりこの王子は聡い。
「殿下が目を閉じている間、私は殿下の右手を握っております。これなら、その心配はないでしょう?」
「本当だな? 約束だぞ?」
王子は彼を睨みつけると――本人はそのつもりなのかもしれないが、彼には可愛らしくすねているようにしか見えなかった――赤い目を閉じてから、彼に向かって右手を差し出した。
「承知いたしました。そのかわり、私がいいと言うまで、決して目を開けてはいけませんよ」
彼は王子の右手をつかむと、その手を自分の股間へと導いた。それに触れた瞬間、王子は驚いたように指先を浮かせたが、もう一度、探るように指を動かした。
「服の上からでもおわかりでしょう? 私が今、どれほどあなたを欲しているか。私が服を脱がないのは、あなたを壊してしまうことが恐ろしいからです。あなたに言われるまでもなく、最後にはあなたを女のように扱ってしまう。――おわかりですか。私はこれをあなたの中に埋めたいと思っている。でも、きっと今のあなたのお体では耐えきれないでしょう。もしかしたら、あなたを死なせてしまうかもしれません」
「でも、セト。そうしたら、私はいったいいつになったら――」
不安そうに王子がそう言いかけたとき、彼は王子の右手を引き寄せ、強引にその唇を塞いだ。王子は一瞬目を開きかけたが、彼との約束を思い出したのか、それとも今は閉じたままのほうがいいと判断したのか、彼に右手を握られたまま、彼の舌による蹂躙を甘んじて受けつづけた。
「殿下。もう目を開けてもいいですよ」
彼に囁かれ、息を切らせながら王子が目を開けると、彼はまるで何事もなかったような顔をして、王子の口元を布で拭っていた。
「セト……」
「はい」
「おまえは、よく我慢できるな。私は、もう……」
王子は頬を染めて、自分の下半身を掛布で隠そうとした。彼は難なく掛布をはぎとり、王子のそこが再び張りつめて、すでに濡れはじめていることを知った。
「殿下は我慢なさらなくても結構ですよ」
彼は苦笑すると、恥じらう王子の両足をたやすく左右に広げさせた。その真ん中でぬらぬらと光っているそれをそっと握りしめ、平伏するように頭を下げると、彼は自分の手の中にあるものを、躊躇なく口に咥えた。
「あ、そんな……」
とっさに王子は彼を押し返そうとしたが、すぐに力を失って身を反り返らせた。
「はぁ…はぁ…あッ…あッ…」
彼の舌技に、王子は声を立てて乱れた。興奮の度合いが増すごとに、自分の両膝をつかんでさらに足を広げ、ついには自ら腰を揺らしはじめる。
誰に教えられたわけでもなく、勝手に体が動いてしまうのだ。彼の口腔内で王子は大きく膨れ上がり、そして弾けた。
先ほどは自分の服を濡らしたものを、彼は美酒のようにあまさず飲み干した。
「セト……セト……」
熱に浮かされたように王子が彼の名を呼ぶ。実際、もう熱が出ているかもしれなかった。
少しだけ後悔しながら、彼は自分の服で口元を拭い、脱力して動けない王子を強く抱きしめた。
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