ポン・すけ 日記

詩悠

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ちゅう太郎

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 わたしは17才のりっぱなレディ。

 りっぱなレディの嗜みとして、ネズミで遊ぶというものがあるんだけど……。

 わたしは猫だもの。

 狩りは本能。

 できて当然。

 お腹が空いてなくても、練習のためだったり、暇潰しだったり、単純に遊びたいから、ネズミや小鳥、トカゲを追いかけて遊んだりすることがあるの。

 ええ、もちろん。 遊んだ後は食べるわよ。

 放置はしないわ。

 遊んだら、お腹が空くしね。

 お母さんやお姉ちゃんにプレゼントする分は食べないけれど、遊んでそのまま、なんてことはしないの。



 ネズミはもれなくわたしの遊び相手なのだけど、一匹ひとりだけ、話し相手のネズミがいるの。


 それがちゅう太郎。

 ちゅう太郎を最初に見つけたのはお母さんだったわ。

 ちゅう太郎を見つけたお母さんは慌てて、お兄ちゃんを呼んできたの。

 お兄ちゃんとユウが駆けつけたけれど……


「このネズミ、放置でよくない?」


 ちゅう太郎を見たお兄ちゃんはそう言ったの。
 お母さんはもちろん、大反対! 殺虫剤を持って、ちゅう太郎を追いかけ回してたわ。
 わたしに殺虫剤は効かないけれど、殺虫剤まみれのネズミでは遊びたくないわね。

 なんとか庭に飛び出したちゅう太郎は無我夢中で走って、わたしの前に飛び出したわ。

 必死に逃げていたとはいえ、猫の前に飛び出すネズミ……。

 殺虫剤の効果が多少あったのかしらね?

 ちゅう太郎はわたしを見るなり、土下座したわ。

 這いつくばった。と、言ってもいいわね。

「ギャ!!! っっ! お参りしてただけなんです! お供物には手を出してませんし、どうか、見逃してやって下さい!!」

 
 そう! このちゅう太郎、仏様に両手を合わせてお参りしてたの!

 キトクなネズミよね。

 内陣……お坊さんたちが座る所ね……には上がらず、外陣……一般のお参りの人が座る所……の正面、お線香立ての前で両手を合わせ、頭を下げてお参りしてたの。

 それを見たお兄ちゃんとユウはとてもビックリしてたわ。

 わたし、神社には行ったことがないけれど、近所の猫やカーすけ、他の動物がお寺にお参りしているのには時々会うの。
 みんな、参道を歩き、本堂正面で止まってから、本堂の中には入らずに外でお参りして帰るわ。
 動物たちもお参りしてるって、知らないのは人間だけよね。

 まぁ、ちゅう太郎は朝から本堂の中でお参りしてたから見つかったのね。

 そんな訳で、仏様にお参りしてたちゅう太郎は見逃したのだけれど、ちゅう太郎は仏様にどんな祈りを捧げていたのかしらね?

「子孫繁栄」かしら?

 もし、そうなら、わたしの遊び相手が増えそうね。
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