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第04話 心配
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彼女の髪の毛を拾い上げ、彼女が存在した事を確信した魔王は、一万二千年ぶりに現れた他の存在に心躍る気分になったが、すぐのその存在に対して不注意であったが、傷つけてしまった事を激しく後悔して意気消沈する。
彼女は大丈夫であろうか… 人族というものは少し血を流しただけでもすぐに死んでしまう…腕がとれたなら尚更だ… 私のような魔族違い人族は新しい腕など生えてこなかったはずだ… という事は…彼女は…
魔王は先程、襲われたのにも関わらず、人族の彼女の心配をし始める。
私の前では、腕を切り落とされても元気に飛び出していったが… もしかしたら、飛行する途中で血を失って倒れているかも知れない…
そう考えると、身体全身がそわそわし始め、居ても立ってもいられなくなってくる。
ここは、私が彼女を探し出して回復魔法をかけてやらねばっ!!!
そう考えた魔王は、撃ち出された弾丸のような勢いで飛び上がり、飛び去った彼女の後を追う。
早く彼女を探し当てねば!! 彼女が死んでしまうかも知れないっ!!
魔王はそんな悲壮な思いで、今まで幾度となく飛び回ったこの星の地表を目を皿にして彼女の姿を探し続ける。
普段の生存者の探索に使っている生命反応探知魔法や、熱源探知魔法などをフルに使い、血眼になって彼女の姿を探し続ける。
彼女が飛び去った経路以外にも、北極や南極、山の頂から、海の海底まで、隈なく探し続けた。しかし、どこにも彼女の姿やその痕跡を見つけ出す事は出来なかった…
そして、魔王は彼女と初めて遭遇した元魔王の城があった場所に戻る。
彼女の姿がどこにも見つからない… もしかして、もう死んでしまって、この星を覆う死の瘴気に分解されてしまったのであろうか…
でも、そうであるならば、彼女が使っていた剣や鎧などの装備品が残るはず…
一万二千年前、全ての生命が死に絶えてしまい、死の瘴気で塵へと分解されてしまったが、暫くの間は、建物や人が作り出した道具は幾つか残っていた。しかし、それら全ては一万二千年という年月に耐えることはできず、すべて風化してしまっている。
だから、彼女の遺品が残っていれば、見落とすことなど無いはずである。
という事は…彼女はまだ生きていて、何処かに身を顰めているのであろうか…
いや… そうである事を願いたい…
魔王は手を組み、彼女が無事であることを祈る。
十分に祈り終えた後、魔王は、彼女に傷つけられた自分の腕の事を思い出す。彼女に切られた腕は自動回復にて、既に癒され傷跡も無い状態である。
魔王は彼女との戦いの事を思い出す。突然に切りつけられた時、防御結界を撃ち破った上で、彼女は私の腕を切り裂いた…
その後も次の攻撃の時に身を屈めなければ、私の首を飛ばされていたかも知れない…
首を飛ばされても、もしかしたら死なないかも知れないが、胸の心臓を突き刺されば、もしくは…
魔王は天を仰ぎ見る。
「私は…彼女の力があれば…死ねるかも知れないのか…」
魔王はいつもと変わらない、黄色く曇った空を見上げながら、そう呟いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、魔王が探し続けた人族の彼女の姿は、薄暗く無機質な結晶の構造物で作られた研究室の様な部屋にあった。
「只今戻りました」
誰もいない部屋で彼女がそう告げると、部屋の至る所にある大きな結晶が仄かに光り始め、声が響き始める。
「逃走経路はちゃんと隠蔽してきたか?」
「はい、教えられた通りに」
無機質に響く声に彼女も無機質に答える。
「その腕はどうしたのだ!!」
別の声が響く。
「魔王にやられました」
彼女は自分の腕なのに、ただの物のように持ちながらそう答える。
「やはり、魔王…一筋縄ではいかんな…」
「そうですな… 初戦は下調べと設定しておいて正解でしたな」
「無理をさせては全てが無に帰す…」
「そう…一万二千年の年月をかけて、ようやく作り上げた魔王への報復の鍵…」
次々と別の声が、仄かに光る結晶の中から響く。
「一万二千年…そう一万二千年は長かった…」
「この星を包む死の瘴気に耐えうる体…」
「水や食料を必要としない体…」
「魔王と対することができる戦闘力…」
「それらを兼ね備えた存在を作り出すのに一万二千年の時間が掛かった!」
「もはや、新たな個体を作るだけの資源は我らには残されていない…」
「つがえる矢に予備は無い」
「だから、そのただ一つの矢で慎重に魔王を射貫かねばならぬ!!」
斉唱するように様々な声が言葉を発する。
「それで、勇者よ…魔王はどうであったのだ?」
「はい、最初の交戦では、魔王はその実力を出している様には思えませんでした」
勇者と呼ばれた彼女は、淡々と答える。
「何だと? 本気を出していないというのに、腕を切り落とされたのか!?」
「うむ…魔王の力は我らの計算以上という事か…」
勇者の報告に声たちは唸り声をあげて考え始める。
「しかし、賢者様方」
そんな声たちに勇者が声を発する。
「なんだ?」
「確かに私の腕を切り落とされましたが、私も魔王を傷つける事に成功しました」
「それは誠か!?」
賢者と呼ばれた声が驚きでうわずる。
「はい、本当です。賢者様に用意して頂いた剣で、魔王の防御結界を突破し、魔王の体を確かに傷つける事が出来ました」
「我らの長年の苦労は無駄ではなかったのだな!!」
勇者が魔王を傷つけたことに、賢者たちが湧き上がる。
「しかし、という事は…我々の勇者と魔王… 互いに殺す事のできる攻撃力は持ち合わせているという事ですな」
「では、魔王の攻撃を無効化できる防御力を得る為にはどれ程の時間が必要だ?」
「時間的猶予の事なら、魔王が我々の場所を見つけ出す事はまず不可能でしょう…」
「それよりも前に、防御力を上げる為の研究をする資源がありません…」
「ならば、戦闘効率を上げるしか手はありませんな」
「それならば、余っている人格クリスタルを勇者に取り付けてはどうでしょう? 戦闘経験を積ませれば戦闘力向上が見込まれます」
「それではその意見を取り上げようと思うが、異議はあるか?」
「「「異議なし!!」」」
賢者全員の声が響く。
「異議は無い様だな、では勇者よ」
「はい、賢者様」
「培養室に入るがよい、其方の改良と、腕の治療を行おう」
「はい、分かりました賢者様…」
勇者は培養室に入り、改良と腕の治療が行われる。
「待っておれよ…魔王…必ずや復讐を果してやる…」
賢者はそう呟いたのであった…
彼女は大丈夫であろうか… 人族というものは少し血を流しただけでもすぐに死んでしまう…腕がとれたなら尚更だ… 私のような魔族違い人族は新しい腕など生えてこなかったはずだ… という事は…彼女は…
魔王は先程、襲われたのにも関わらず、人族の彼女の心配をし始める。
私の前では、腕を切り落とされても元気に飛び出していったが… もしかしたら、飛行する途中で血を失って倒れているかも知れない…
そう考えると、身体全身がそわそわし始め、居ても立ってもいられなくなってくる。
ここは、私が彼女を探し出して回復魔法をかけてやらねばっ!!!
そう考えた魔王は、撃ち出された弾丸のような勢いで飛び上がり、飛び去った彼女の後を追う。
早く彼女を探し当てねば!! 彼女が死んでしまうかも知れないっ!!
魔王はそんな悲壮な思いで、今まで幾度となく飛び回ったこの星の地表を目を皿にして彼女の姿を探し続ける。
普段の生存者の探索に使っている生命反応探知魔法や、熱源探知魔法などをフルに使い、血眼になって彼女の姿を探し続ける。
彼女が飛び去った経路以外にも、北極や南極、山の頂から、海の海底まで、隈なく探し続けた。しかし、どこにも彼女の姿やその痕跡を見つけ出す事は出来なかった…
そして、魔王は彼女と初めて遭遇した元魔王の城があった場所に戻る。
彼女の姿がどこにも見つからない… もしかして、もう死んでしまって、この星を覆う死の瘴気に分解されてしまったのであろうか…
でも、そうであるならば、彼女が使っていた剣や鎧などの装備品が残るはず…
一万二千年前、全ての生命が死に絶えてしまい、死の瘴気で塵へと分解されてしまったが、暫くの間は、建物や人が作り出した道具は幾つか残っていた。しかし、それら全ては一万二千年という年月に耐えることはできず、すべて風化してしまっている。
だから、彼女の遺品が残っていれば、見落とすことなど無いはずである。
という事は…彼女はまだ生きていて、何処かに身を顰めているのであろうか…
いや… そうである事を願いたい…
魔王は手を組み、彼女が無事であることを祈る。
十分に祈り終えた後、魔王は、彼女に傷つけられた自分の腕の事を思い出す。彼女に切られた腕は自動回復にて、既に癒され傷跡も無い状態である。
魔王は彼女との戦いの事を思い出す。突然に切りつけられた時、防御結界を撃ち破った上で、彼女は私の腕を切り裂いた…
その後も次の攻撃の時に身を屈めなければ、私の首を飛ばされていたかも知れない…
首を飛ばされても、もしかしたら死なないかも知れないが、胸の心臓を突き刺されば、もしくは…
魔王は天を仰ぎ見る。
「私は…彼女の力があれば…死ねるかも知れないのか…」
魔王はいつもと変わらない、黄色く曇った空を見上げながら、そう呟いた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、魔王が探し続けた人族の彼女の姿は、薄暗く無機質な結晶の構造物で作られた研究室の様な部屋にあった。
「只今戻りました」
誰もいない部屋で彼女がそう告げると、部屋の至る所にある大きな結晶が仄かに光り始め、声が響き始める。
「逃走経路はちゃんと隠蔽してきたか?」
「はい、教えられた通りに」
無機質に響く声に彼女も無機質に答える。
「その腕はどうしたのだ!!」
別の声が響く。
「魔王にやられました」
彼女は自分の腕なのに、ただの物のように持ちながらそう答える。
「やはり、魔王…一筋縄ではいかんな…」
「そうですな… 初戦は下調べと設定しておいて正解でしたな」
「無理をさせては全てが無に帰す…」
「そう…一万二千年の年月をかけて、ようやく作り上げた魔王への報復の鍵…」
次々と別の声が、仄かに光る結晶の中から響く。
「一万二千年…そう一万二千年は長かった…」
「この星を包む死の瘴気に耐えうる体…」
「水や食料を必要としない体…」
「魔王と対することができる戦闘力…」
「それらを兼ね備えた存在を作り出すのに一万二千年の時間が掛かった!」
「もはや、新たな個体を作るだけの資源は我らには残されていない…」
「つがえる矢に予備は無い」
「だから、そのただ一つの矢で慎重に魔王を射貫かねばならぬ!!」
斉唱するように様々な声が言葉を発する。
「それで、勇者よ…魔王はどうであったのだ?」
「はい、最初の交戦では、魔王はその実力を出している様には思えませんでした」
勇者と呼ばれた彼女は、淡々と答える。
「何だと? 本気を出していないというのに、腕を切り落とされたのか!?」
「うむ…魔王の力は我らの計算以上という事か…」
勇者の報告に声たちは唸り声をあげて考え始める。
「しかし、賢者様方」
そんな声たちに勇者が声を発する。
「なんだ?」
「確かに私の腕を切り落とされましたが、私も魔王を傷つける事に成功しました」
「それは誠か!?」
賢者と呼ばれた声が驚きでうわずる。
「はい、本当です。賢者様に用意して頂いた剣で、魔王の防御結界を突破し、魔王の体を確かに傷つける事が出来ました」
「我らの長年の苦労は無駄ではなかったのだな!!」
勇者が魔王を傷つけたことに、賢者たちが湧き上がる。
「しかし、という事は…我々の勇者と魔王… 互いに殺す事のできる攻撃力は持ち合わせているという事ですな」
「では、魔王の攻撃を無効化できる防御力を得る為にはどれ程の時間が必要だ?」
「時間的猶予の事なら、魔王が我々の場所を見つけ出す事はまず不可能でしょう…」
「それよりも前に、防御力を上げる為の研究をする資源がありません…」
「ならば、戦闘効率を上げるしか手はありませんな」
「それならば、余っている人格クリスタルを勇者に取り付けてはどうでしょう? 戦闘経験を積ませれば戦闘力向上が見込まれます」
「それではその意見を取り上げようと思うが、異議はあるか?」
「「「異議なし!!」」」
賢者全員の声が響く。
「異議は無い様だな、では勇者よ」
「はい、賢者様」
「培養室に入るがよい、其方の改良と、腕の治療を行おう」
「はい、分かりました賢者様…」
勇者は培養室に入り、改良と腕の治療が行われる。
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賢者はそう呟いたのであった…
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