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第035話 権利書
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「あっ、父さんからだ…」
僕はスマホの着信画面を見て呟く。すると、ステラと幸ちゃんが気を使って口を閉じる始めるので、僕は二人に気を使ってスマホを持って、テラスへと出る。
「もしもし、父さん? 八雲だけど」
「あぁ、八雲か、今、電話は大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
僕はリビングとテラスに通じるガラス戸を閉めて、家の中の声が聞こえないようにする。
「そうか、それはよかった」
「で、父さんどうしたの?」
テラスから家の中を見ると、僕を待つためにステラと幸ちゃんの二人が食事を途中で止めている姿が見えたので、先に食べてていいよとゼスチャーを二人に送った。
「あぁ、私に釘を刺されたのにスクール水着を購入したお前の勇気を褒め称えたいところであるが、今日の話はそれではない」
父はグサリと痛い所を突いてくる…
「もうそろそろ、そちらでの生活も落ち着いて慣れてきている所だと思うが… 相続の手続きや登記は済ませたのか?」
「あっ!」
父の言葉に思わず声を出してしまう。
「…驚いた声を出している所を見ると、まだ済ませていないようだな…」
「ごめん…父さん、完全に忘れてた…と言うか思いつきもしなかった…」
見える訳はないが、僕はスマホ越しに父さんに頭を下げる。
「いやいや、手続きや登記の変更が遅れた程度で特に問題は無いから構わないよ、いや…法律が代わって罰金ができたんだっけな?」
「えっ!? 罰金?」
僕の罰金という言葉を聞きつけたのか、家の中の二人が不安そうな顔をする。
「八雲、心配しなくていい、確か、一週間遅れたからという話でなく、何年以内にという話だったはずだ。それに金額も何百万とか何千万という話でなく、10万もしない金額だったと思う」
「はぁ~ びっくりした」
僕は父の言葉に安堵して胸を撫で降ろす。
「だがな、八雲…」
父の口調が神妙なものへと変わる。
「土地の権利書などは見つけたのか?」
「いや…それがまだなんだよ…」
僕は再びスマホ越しに頭をさげる。
「ならば、権利書を探すのは早めにした方がよい」
「やっぱり、早めに変更の手続きをした方がよいから?」
「いや… もしかしたら、その土地や家が抵当に入っている場合があるからだ」
「抵当?」
僕は意味が分からず聞き返す。
「あぁ、抵当だ。父…お前にとっては祖父だが…借金をするような人ではないが、人良い人物なので保証人になっている場合がある。その場合、借金の形に家や土地を抵当に入れている場合がある」
「えっ!?」
僕の背中に冷や汗が流れる。
「もし、お前がそこに住み続けたい場合、家や土地が抵当になっていたら、借金を返さない限り、そこは人手に渡ってしまい、お前は出ていかなくてはならなくなる…」
「そ、そんな…」
今までの手続ぎのし忘れは、例えて言うならば、宿題を忘れて先生に怒られる程度の話であったが、今の状況は退学が掛かっている様な話になっている。
「だから、それを確認する為にも家や土地の権利書を見つけないといけない…今は抵当になってなくても、悪意を持つ人の手に渡っていたら、抵当どころでは無なく、売られてしまうかもしれないんだよ」
「ごめん…父さん… そこまで重大な事だと思わなかったよ…」
僕は深く反省して再び項垂れるように頭を下げる。
「お前はまだ二十歳にもなっていない社会人になったばかりの人間だ。気が付かないのも無理はない…それに祖父が亡くなっていの一番に権利書を探すような事は出来ないのも分かる…」
父は心に染み入る様な穏やかな口調で述べる。
「だから、私も今までその事を伏せていたんだよ…だがな、お前がそこでの生活を続けたいと思うなら、ちゃんと権利書を探し出して、相続の手続きを済ませなさい…それが八雲、お前が始めた物語のケジメというものだよ」
父は僕を責めているのではなく、大人としての第一歩を踏み出す助言をしてくれているのだ。
「…分かった…父さん、僕、この家と土地の権利書を見つけて、祖父の残した物の相続をするよ!」
僕は力強く父に答える。
「そうか…八雲…頑張ってくれ、父さんは応援しているぞ、では元気でな」
父はそう言い残すと通話を切った。
僕は暫く通話が切れたスマホの画面を眺め続ける。しかし、家の中で食事の手を止めて僕を不安そうに見つめるステラと幸ちゃんの姿を見付けて、僕はスマホをポケットに戻して家の中へと戻る。
「八雲…大丈夫?」
「八雲殿…何があったのだ?」
二人が不安な表情で尋ねてくる。
「…先ずはご飯を食べてしまおう… 折角の幸ちゃんのご飯が冷めちゃうよ…」
先ずは食事の手を止めている二人にそう告げる。
「そ、そうだな…先ずは食事を済ませてしまおう、話はそれからだな…」
「うん…分かった…」
幸ちゃんは空気を読んでそう答え、ステラは納得していないがとりあえず答える。
その後、皆一言も話さずに朝食を食べ終える。
食べ終えた後は、ステラは時々上目づかいに僕をチラチラと見て来て、幸ちゃんは平静を装って朝食の後片付けを行う。
そして、洗い物などが終わった後、お盆に食後にお茶を運んでくる。
「さて、八雲殿、父上からの電話で何を言われたのか話してもらえるか?」
「罰金とか言ってたけど… 何か悪い事でもしたの?」
二人が僕の顔を覗き込むように聞いてくる。
「いや、ステラ、僕は悪い事は何もしてないよ」
「でも罰金って言ってたし…」
「それはね、役所とかの手続きが遅れた場合だよ」
僕はステラを不安にさせないように、平静を装って答える。
「役所の手続きと言うのは、相続の事か? 八雲殿」
流石に何代にもわたって四条家のお家事情を見てきた幸ちゃんには検討がついたようだ。
「うん、そうなんだ…」
「なんだ、そのような事か、ならば弁護士なり司法書士に頼めば済むではないか」
幸ちゃんは一先ず安心したような顔でそう述べる。
「それが…まだ家や土地の権利書を見付けてないんだよ…」
バツが悪そうに幸ちゃんに答える。
「まだ見付けておらんのか… それは不安になるな…」
「うん、その事を父さんにも言われて…早く確認しておかないと抵当に入っていたり、他の人の手に渡っていたら勝手に売り飛ばされるかも知れないって…脅されたよ」
事情の分かりそうな幸ちゃんには素直に事情を説明する。
「静香が惚れこんで結婚するぐらいだからな… ジョージ殿が良い人物なのは分かる。彼が借金などするはずがなかろう… でも、保証人にはなりそうだな…」
「その事を父さんにも言われたよ…祖父が自ら借金することは無いけど、保証人になることはあるって… ステラ、祖父がそんな話をしていたことはない?」
キョトンとした顔で僕たちを見つめているステラにも尋ねてみる。
「うーん…私と一緒にいる時はお金の話はしてなかったかな~」
「そうか…」
期待はしていなかったがステラも知っていないようだ。
「それでどうするのだ? 八雲殿」
「とりあえず、家探ししてみるよ、僕は今自室に使っている祖父の部屋から調べて見るけど、幸ちゃんには祖母の部屋を探してもらえるかな?」
「分かった、探しておこう」
幸ちゃんは快く答える。
「私はどうしたらいい?」
ステラも声をあげる。
「ステラの家の中で、重要そうな書類がないか調べてもらえるかな?」
「わかった! 調べる!」
ステラは元気よく答えた。
こうして、三人でこの家と土地の権利書を家探しすることになった。
僕はスマホの着信画面を見て呟く。すると、ステラと幸ちゃんが気を使って口を閉じる始めるので、僕は二人に気を使ってスマホを持って、テラスへと出る。
「もしもし、父さん? 八雲だけど」
「あぁ、八雲か、今、電話は大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
僕はリビングとテラスに通じるガラス戸を閉めて、家の中の声が聞こえないようにする。
「そうか、それはよかった」
「で、父さんどうしたの?」
テラスから家の中を見ると、僕を待つためにステラと幸ちゃんの二人が食事を途中で止めている姿が見えたので、先に食べてていいよとゼスチャーを二人に送った。
「あぁ、私に釘を刺されたのにスクール水着を購入したお前の勇気を褒め称えたいところであるが、今日の話はそれではない」
父はグサリと痛い所を突いてくる…
「もうそろそろ、そちらでの生活も落ち着いて慣れてきている所だと思うが… 相続の手続きや登記は済ませたのか?」
「あっ!」
父の言葉に思わず声を出してしまう。
「…驚いた声を出している所を見ると、まだ済ませていないようだな…」
「ごめん…父さん、完全に忘れてた…と言うか思いつきもしなかった…」
見える訳はないが、僕はスマホ越しに父さんに頭を下げる。
「いやいや、手続きや登記の変更が遅れた程度で特に問題は無いから構わないよ、いや…法律が代わって罰金ができたんだっけな?」
「えっ!? 罰金?」
僕の罰金という言葉を聞きつけたのか、家の中の二人が不安そうな顔をする。
「八雲、心配しなくていい、確か、一週間遅れたからという話でなく、何年以内にという話だったはずだ。それに金額も何百万とか何千万という話でなく、10万もしない金額だったと思う」
「はぁ~ びっくりした」
僕は父の言葉に安堵して胸を撫で降ろす。
「だがな、八雲…」
父の口調が神妙なものへと変わる。
「土地の権利書などは見つけたのか?」
「いや…それがまだなんだよ…」
僕は再びスマホ越しに頭をさげる。
「ならば、権利書を探すのは早めにした方がよい」
「やっぱり、早めに変更の手続きをした方がよいから?」
「いや… もしかしたら、その土地や家が抵当に入っている場合があるからだ」
「抵当?」
僕は意味が分からず聞き返す。
「あぁ、抵当だ。父…お前にとっては祖父だが…借金をするような人ではないが、人良い人物なので保証人になっている場合がある。その場合、借金の形に家や土地を抵当に入れている場合がある」
「えっ!?」
僕の背中に冷や汗が流れる。
「もし、お前がそこに住み続けたい場合、家や土地が抵当になっていたら、借金を返さない限り、そこは人手に渡ってしまい、お前は出ていかなくてはならなくなる…」
「そ、そんな…」
今までの手続ぎのし忘れは、例えて言うならば、宿題を忘れて先生に怒られる程度の話であったが、今の状況は退学が掛かっている様な話になっている。
「だから、それを確認する為にも家や土地の権利書を見つけないといけない…今は抵当になってなくても、悪意を持つ人の手に渡っていたら、抵当どころでは無なく、売られてしまうかもしれないんだよ」
「ごめん…父さん… そこまで重大な事だと思わなかったよ…」
僕は深く反省して再び項垂れるように頭を下げる。
「お前はまだ二十歳にもなっていない社会人になったばかりの人間だ。気が付かないのも無理はない…それに祖父が亡くなっていの一番に権利書を探すような事は出来ないのも分かる…」
父は心に染み入る様な穏やかな口調で述べる。
「だから、私も今までその事を伏せていたんだよ…だがな、お前がそこでの生活を続けたいと思うなら、ちゃんと権利書を探し出して、相続の手続きを済ませなさい…それが八雲、お前が始めた物語のケジメというものだよ」
父は僕を責めているのではなく、大人としての第一歩を踏み出す助言をしてくれているのだ。
「…分かった…父さん、僕、この家と土地の権利書を見つけて、祖父の残した物の相続をするよ!」
僕は力強く父に答える。
「そうか…八雲…頑張ってくれ、父さんは応援しているぞ、では元気でな」
父はそう言い残すと通話を切った。
僕は暫く通話が切れたスマホの画面を眺め続ける。しかし、家の中で食事の手を止めて僕を不安そうに見つめるステラと幸ちゃんの姿を見付けて、僕はスマホをポケットに戻して家の中へと戻る。
「八雲…大丈夫?」
「八雲殿…何があったのだ?」
二人が不安な表情で尋ねてくる。
「…先ずはご飯を食べてしまおう… 折角の幸ちゃんのご飯が冷めちゃうよ…」
先ずは食事の手を止めている二人にそう告げる。
「そ、そうだな…先ずは食事を済ませてしまおう、話はそれからだな…」
「うん…分かった…」
幸ちゃんは空気を読んでそう答え、ステラは納得していないがとりあえず答える。
その後、皆一言も話さずに朝食を食べ終える。
食べ終えた後は、ステラは時々上目づかいに僕をチラチラと見て来て、幸ちゃんは平静を装って朝食の後片付けを行う。
そして、洗い物などが終わった後、お盆に食後にお茶を運んでくる。
「さて、八雲殿、父上からの電話で何を言われたのか話してもらえるか?」
「罰金とか言ってたけど… 何か悪い事でもしたの?」
二人が僕の顔を覗き込むように聞いてくる。
「いや、ステラ、僕は悪い事は何もしてないよ」
「でも罰金って言ってたし…」
「それはね、役所とかの手続きが遅れた場合だよ」
僕はステラを不安にさせないように、平静を装って答える。
「役所の手続きと言うのは、相続の事か? 八雲殿」
流石に何代にもわたって四条家のお家事情を見てきた幸ちゃんには検討がついたようだ。
「うん、そうなんだ…」
「なんだ、そのような事か、ならば弁護士なり司法書士に頼めば済むではないか」
幸ちゃんは一先ず安心したような顔でそう述べる。
「それが…まだ家や土地の権利書を見付けてないんだよ…」
バツが悪そうに幸ちゃんに答える。
「まだ見付けておらんのか… それは不安になるな…」
「うん、その事を父さんにも言われて…早く確認しておかないと抵当に入っていたり、他の人の手に渡っていたら勝手に売り飛ばされるかも知れないって…脅されたよ」
事情の分かりそうな幸ちゃんには素直に事情を説明する。
「静香が惚れこんで結婚するぐらいだからな… ジョージ殿が良い人物なのは分かる。彼が借金などするはずがなかろう… でも、保証人にはなりそうだな…」
「その事を父さんにも言われたよ…祖父が自ら借金することは無いけど、保証人になることはあるって… ステラ、祖父がそんな話をしていたことはない?」
キョトンとした顔で僕たちを見つめているステラにも尋ねてみる。
「うーん…私と一緒にいる時はお金の話はしてなかったかな~」
「そうか…」
期待はしていなかったがステラも知っていないようだ。
「それでどうするのだ? 八雲殿」
「とりあえず、家探ししてみるよ、僕は今自室に使っている祖父の部屋から調べて見るけど、幸ちゃんには祖母の部屋を探してもらえるかな?」
「分かった、探しておこう」
幸ちゃんは快く答える。
「私はどうしたらいい?」
ステラも声をあげる。
「ステラの家の中で、重要そうな書類がないか調べてもらえるかな?」
「わかった! 調べる!」
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