ニートシルキー ~僕とステラの不思議な生活~

にわとりぶらま

文字の大きさ
上 下
22 / 38

第022話 ヤシマ作戦

しおりを挟む


 ステラが嬉しそうに鼻歌を歌いながら部屋から退出し、僕はPCに向き直る。

「じゃあ、会議を…」

「八雲!」

 会議を始めようとする僕の言葉をスティーブが遮る。

「ん? どうしたの?」

「ユーのシスター、声を聴いて会話しかしていないが、キュートでプリティーだな」

 確かにステラは金髪碧眼を抜きにしても可愛い女の子だ。ライブカメラは起動させてないはずだけど…

「アハハ、そうかな?」

「あぁ! そうだよ! どうしてもっと話してくれなかったんだよ八雲!」

「いや、スティーブの方がアニメのキャラの事ばかりで興味なかったじゃないか」

「アニメ好きのガールは別腹なんだよブラザー」

 なんか話が変な方向へ向きかけている。しかもブラザーって…深く考えるのはよそう…

「そんな事よりも、重要な会議をするんじゃなかったのか? スティーブ、今後の計画に関わる事だぞ」

「オゥ! そうだな! 会社を大きくして一流企業にしてから、ユーのシスターに会いに行かないとなっ!」

 本当に来そうで怖い…

 そんな会話もあったが、会議の方は真面目に話をして、計画を具体的に詰めていく。このプロジェクトは僕とスティーブだけで進めるものではないので、他のメンバーとも担当の割り振りや期日、方向性を定めていく。

 当然ながら他のメンバーとも話し合いを行うので、衝突も度々発生したが、その都度、スティーブが互いの言い分を聞き出して要約し、僕や他の人にも意見を聞いて、その折衷案を提示していく。

 この辺りのスティーブの折衝能力やコミュニケーション能力はかなり高い。先程まで正面を切ってぶつかり合っていた二人が、スティーブの仲裁で、共に戦う同士のように協力し始める。この辺りの能力は僕も見習いたいものだ。

「オーケー オーケー じゃあ、今日はこれぐらいにしようか」

 粗方の事が決まったので、スティーブが会議の終了を提案してくる。

「ここまででいいの? 僕はまだ大丈夫だけど」

「おいおい、何いってんだ、八雲! こちらはもう深夜の一時を回っているんだぜ?」

「えっ? あっそうか、日本とアメリカでは13時間の時差があったんだね、ごめんごめん、こちらは丁度お昼に差し掛かったぐらいだね」

 PCの時計を見ると12時10分を回っていた。

「八雲の方ではランチの時間か… 俺も寝る前に何か食べて寝るとするか…」

 そうして、通話が切れて会議が終了する。

 そして、僕自身もお腹が空いている事もあるが、ステラにちゃんと食事を取らせないといけないので、僕は部屋を出て一階へと向かう。

「ステラ、昼食が遅れたから、怒ってないかな…」

 そう思いながら階段を降りていくと、リビングから、アニメの音楽が流れてくる。


 デンデンデンドンドン! デンデンデンドンドン!

 ズチャチャ ズチャチャ ズチャチャ ズチャチャ チャチャー♪

 ズチャチャ ズチャチャ ズチャチャ ズチャチャ チャチャー♪

 
 ステラは僕が降りてきたことに気が付かず、真剣な顔で集中してアニメを見ている。このBGMは…ヤシマ作戦あたりのエピソードかな?

 ステラがあまりにも熱中しているので、僕はステラに声をかけずに黙々と昼食の準備を始める。といっても、今日は急に会議の予定が入ったので、買出しに行く時間が無かったので、昼食は買い置きのカップラーメンである。

 僕は電気ケトルに水を入れお湯が湧くのを待つ。

「全エネルギー! ポジトロンライフルへ!」

 ステラの見ているアニメは佳境に入っているようだな。

 お湯が沸いたので、蓋を開けてお湯を注ぎ、スマホのタイマーを三分に設定する。そして、再びリビングにいるステラを見るが、アニメを見入っているので僕に気が付いていない。

「目標に再び高エネルギー反応!!!」


 ピピピピッ!!


 その時、三分の時間経過を知らせるスマホのアラームが鳴り響く。


「うわぁっ!!!」


 ステラはスマホのアラーム音に驚いて、ようやく僕の存在に気が付く。


「ステラ、お昼ご飯だよ」

 
 僕はステラにカップラーメンを掲げて見せた。


「びっくりしたぁ~ こちらまで狙われていて警戒音がなったのかと思った…」


 そういって、ステラは掻いた冷や汗を拭う。


「じゃあ、とりあえず昼食にしようか」

「うん、気がついたらお腹減ってるし」

「では、いただきますっ!」

「いただきますっ!」

 そして、二人でずるずるとカップラーメンを食べ始める。今日のカップラーメンはシーフードだ。

「ところでアニメの方はどう? 楽しい?」

 ステラにアニメの感想を尋ねる。

「うん! めちゃくちゃ楽しい!」

 ステラは瞳をキラキラさせて答える。ステラには合わないかと心配していたが楽しんでくれているのなら何よりだ。

「ネット見てる時に分からないネタがあったんだけど、このアニメが元ネタだったんだね、始めて知って感動したよっ!」

「あぁ、エヴァ発祥のネタは多いからね~」

 スティーブとゲームで協力プレイしていた時に、スティーブが僕を護って『あなたは死なないわ…私が護るもの』とよく言われた。まぁ、僕は苦笑いするしかなかったけど… 僕の反応を見る為にチラチラ僕の方を見るのは止めて欲しかった…

「それで、八雲はお昼の後もお仕事なの?」

「うーん、そうだね… 今日のレポートを書いておきたいね」

「じゃあ、お昼からもアニメ見てていい?」

 ステラがアニメを見ているゲーム機を持って聞いてくる。

「あぁ、いいよ、その代わり夕方になったら僕が夕食を準備するから、ステラにはお風呂の準備をしてもらってもいいかな?」

「いいよ! わかったぁ!!」

 ステラはアニメを見続けられることを喜ぶ。

「じゃあ、僕は二階で仕事の続きをしてくるから」

 そう言ってステラと別れて僕は二階に上がり仕事を続ける。初めての会議の後で初めてのレポートであるから、僕は書き上がった後も入念に何度もチェックをする。

「よし! これでいいか!」

 そう言って、レポートをスティーブに送信してPCから顔を上げる。

 すると、窓の外は日が傾いて降り、そろそろ夕食の準備の時間となっていた。

 一階に降りていくと、リビングにはステラの姿はない。

「あれ? ステラはどこいったんだろ?」

 するとお風呂場の方から物音がする。僕は様子を見る為にお風呂場へと向かう。


「ステラ~ お風呂の準備をしてくれているのかい?」


 扉の所から中を覗き込む。すると、丁度ステラがお風呂にお湯を入れる為にお湯の蛇口を捻るところだった。


「あやなみぃぃぃ~~~!!!」


 ステラは熱くは無いはずのお湯の蛇口を熱そうにしながら捻り、叫び声を上げる。


 そして、僕と目が合う。


「はっ!」


 ステラはしまったという顔をする。どうやらエントリープラグから綾波を救い出すシーンを真似たようであった。


「こ、こんな時…どんな顔をすればいいか分からないよ…」


 僕は肩を震わせながら、ステラに合わせてアニメのセリフを告げる。


「わ…笑えばいいんじゃないの?」


 ステラが強張った顔で答える。

 僕はステラの言葉に耐え切れず、キッチンまで駆け出して、腹を抱えて大笑いをした。

 その後の夕食は、恥ずかしがるステラと笑いを堪える僕の二人で無言で食べる事になった。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

風と翼

田代剛大
キャラ文芸
相模高校の甲子園球児「風間カイト」はあるとき、くのいちの少女「百地翼」によって甲賀忍者にスカウトされる。時代劇のエキストラ募集と勘違いしたカイトが、翼に連れられてやってきたのは、滋賀県近江にある秘境「望月村」だった。そこでは、甲賀忍者と伊賀忍者、そして新進気鋭の大企業家「織田信長」との三つ巴の戦いが繰り広げられていた。 戦国時代の史実を現代劇にアレンジした新感覚時代小説です!

あやかし蔵の管理人

朝比奈 和
キャラ文芸
主人公、小日向 蒼真(こひなた そうま)は高校1年生になったばかり。 親が突然海外に転勤になった関係で、祖母の知り合いの家に居候することになった。 居候相手は有名な小説家で、土地持ちの結月 清人(ゆづき きよと)さん。 人見知りな俺が、普通に会話できるほど優しそうな人だ。 ただ、この居候先の結月邸には、あやかしの世界とつながっている蔵があって―――。 蔵の扉から出入りするあやかしたちとの、ほのぼのしつつちょっと変わった日常のお話。 2018年 8月。あやかし蔵の管理人 書籍発売しました! ※登場妖怪は伝承にアレンジを加えてありますので、ご了承ください。

お父さんの相続人

五嶋樒榴
キャラ文芸
司法書士事務所を舞台に、一つの相続から家族の絆を垣間見る摩訶不思議な物語。 人にはいつか訪れる死。 その日が来てしまった家族に、過去の悲しい出来事に終止符を打たなければならない日が来てしまった。 受け入れられない母と、そんな母を心配する娘。 そしていつも傍に寄り添う猫。 猫に対する故人の思いと、家族の美しい思い出。 猫は本当に、息子の生まれ変わりなのだろうか。 でも、この猫こそが、とんでもない猫だった。

ナマズの器

螢宮よう
キャラ文芸
時は、多種多様な文化が溶け合いはじめた時代の赤い髪の少女の物語。 不遇な赤い髪の女の子が過去、神様、因縁に巻き込まれながらも前向きに頑張り大好きな人たちを守ろうと奔走する和風ファンタジー。

狼神様と生贄の唄巫女 虐げられた盲目の少女は、獣の神に愛される

茶柱まちこ
キャラ文芸
 雪深い農村で育った少女・すずは、赤子のころにかけられた呪いによって盲目となり、姉や村人たちに虐いたげられる日々を送っていた。  ある日、すずは村人たちに騙されて生贄にされ、雪山の神社に閉じ込められてしまう。失意の中、絶命寸前の彼女を救ったのは、狼と人間を掛け合わせたような姿の男──村人たちが崇める守護神・大神だった。  呪いを解く代わりに大神のもとで働くことになったすずは、大神やあやかしたちの優しさに触れ、幸せを知っていく──。  神様と盲目少女が紡ぐ、和風恋愛幻想譚。 (旧題:『大神様のお気に入り』)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...