ニートシルキー ~僕とステラの不思議な生活~

にわとりぶらま

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第022話 ヤシマ作戦

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 ステラが嬉しそうに鼻歌を歌いながら部屋から退出し、僕はPCに向き直る。

「じゃあ、会議を…」

「八雲!」

 会議を始めようとする僕の言葉をスティーブが遮る。

「ん? どうしたの?」

「ユーのシスター、声を聴いて会話しかしていないが、キュートでプリティーだな」

 確かにステラは金髪碧眼を抜きにしても可愛い女の子だ。ライブカメラは起動させてないはずだけど…

「アハハ、そうかな?」

「あぁ! そうだよ! どうしてもっと話してくれなかったんだよ八雲!」

「いや、スティーブの方がアニメのキャラの事ばかりで興味なかったじゃないか」

「アニメ好きのガールは別腹なんだよブラザー」

 なんか話が変な方向へ向きかけている。しかもブラザーって…深く考えるのはよそう…

「そんな事よりも、重要な会議をするんじゃなかったのか? スティーブ、今後の計画に関わる事だぞ」

「オゥ! そうだな! 会社を大きくして一流企業にしてから、ユーのシスターに会いに行かないとなっ!」

 本当に来そうで怖い…

 そんな会話もあったが、会議の方は真面目に話をして、計画を具体的に詰めていく。このプロジェクトは僕とスティーブだけで進めるものではないので、他のメンバーとも担当の割り振りや期日、方向性を定めていく。

 当然ながら他のメンバーとも話し合いを行うので、衝突も度々発生したが、その都度、スティーブが互いの言い分を聞き出して要約し、僕や他の人にも意見を聞いて、その折衷案を提示していく。

 この辺りのスティーブの折衝能力やコミュニケーション能力はかなり高い。先程まで正面を切ってぶつかり合っていた二人が、スティーブの仲裁で、共に戦う同士のように協力し始める。この辺りの能力は僕も見習いたいものだ。

「オーケー オーケー じゃあ、今日はこれぐらいにしようか」

 粗方の事が決まったので、スティーブが会議の終了を提案してくる。

「ここまででいいの? 僕はまだ大丈夫だけど」

「おいおい、何いってんだ、八雲! こちらはもう深夜の一時を回っているんだぜ?」

「えっ? あっそうか、日本とアメリカでは13時間の時差があったんだね、ごめんごめん、こちらは丁度お昼に差し掛かったぐらいだね」

 PCの時計を見ると12時10分を回っていた。

「八雲の方ではランチの時間か… 俺も寝る前に何か食べて寝るとするか…」

 そうして、通話が切れて会議が終了する。

 そして、僕自身もお腹が空いている事もあるが、ステラにちゃんと食事を取らせないといけないので、僕は部屋を出て一階へと向かう。

「ステラ、昼食が遅れたから、怒ってないかな…」

 そう思いながら階段を降りていくと、リビングから、アニメの音楽が流れてくる。


 デンデンデンドンドン! デンデンデンドンドン!

 ズチャチャ ズチャチャ ズチャチャ ズチャチャ チャチャー♪

 ズチャチャ ズチャチャ ズチャチャ ズチャチャ チャチャー♪

 
 ステラは僕が降りてきたことに気が付かず、真剣な顔で集中してアニメを見ている。このBGMは…ヤシマ作戦あたりのエピソードかな?

 ステラがあまりにも熱中しているので、僕はステラに声をかけずに黙々と昼食の準備を始める。といっても、今日は急に会議の予定が入ったので、買出しに行く時間が無かったので、昼食は買い置きのカップラーメンである。

 僕は電気ケトルに水を入れお湯が湧くのを待つ。

「全エネルギー! ポジトロンライフルへ!」

 ステラの見ているアニメは佳境に入っているようだな。

 お湯が沸いたので、蓋を開けてお湯を注ぎ、スマホのタイマーを三分に設定する。そして、再びリビングにいるステラを見るが、アニメを見入っているので僕に気が付いていない。

「目標に再び高エネルギー反応!!!」


 ピピピピッ!!


 その時、三分の時間経過を知らせるスマホのアラームが鳴り響く。


「うわぁっ!!!」


 ステラはスマホのアラーム音に驚いて、ようやく僕の存在に気が付く。


「ステラ、お昼ご飯だよ」

 
 僕はステラにカップラーメンを掲げて見せた。


「びっくりしたぁ~ こちらまで狙われていて警戒音がなったのかと思った…」


 そういって、ステラは掻いた冷や汗を拭う。


「じゃあ、とりあえず昼食にしようか」

「うん、気がついたらお腹減ってるし」

「では、いただきますっ!」

「いただきますっ!」

 そして、二人でずるずるとカップラーメンを食べ始める。今日のカップラーメンはシーフードだ。

「ところでアニメの方はどう? 楽しい?」

 ステラにアニメの感想を尋ねる。

「うん! めちゃくちゃ楽しい!」

 ステラは瞳をキラキラさせて答える。ステラには合わないかと心配していたが楽しんでくれているのなら何よりだ。

「ネット見てる時に分からないネタがあったんだけど、このアニメが元ネタだったんだね、始めて知って感動したよっ!」

「あぁ、エヴァ発祥のネタは多いからね~」

 スティーブとゲームで協力プレイしていた時に、スティーブが僕を護って『あなたは死なないわ…私が護るもの』とよく言われた。まぁ、僕は苦笑いするしかなかったけど… 僕の反応を見る為にチラチラ僕の方を見るのは止めて欲しかった…

「それで、八雲はお昼の後もお仕事なの?」

「うーん、そうだね… 今日のレポートを書いておきたいね」

「じゃあ、お昼からもアニメ見てていい?」

 ステラがアニメを見ているゲーム機を持って聞いてくる。

「あぁ、いいよ、その代わり夕方になったら僕が夕食を準備するから、ステラにはお風呂の準備をしてもらってもいいかな?」

「いいよ! わかったぁ!!」

 ステラはアニメを見続けられることを喜ぶ。

「じゃあ、僕は二階で仕事の続きをしてくるから」

 そう言ってステラと別れて僕は二階に上がり仕事を続ける。初めての会議の後で初めてのレポートであるから、僕は書き上がった後も入念に何度もチェックをする。

「よし! これでいいか!」

 そう言って、レポートをスティーブに送信してPCから顔を上げる。

 すると、窓の外は日が傾いて降り、そろそろ夕食の準備の時間となっていた。

 一階に降りていくと、リビングにはステラの姿はない。

「あれ? ステラはどこいったんだろ?」

 するとお風呂場の方から物音がする。僕は様子を見る為にお風呂場へと向かう。


「ステラ~ お風呂の準備をしてくれているのかい?」


 扉の所から中を覗き込む。すると、丁度ステラがお風呂にお湯を入れる為にお湯の蛇口を捻るところだった。


「あやなみぃぃぃ~~~!!!」


 ステラは熱くは無いはずのお湯の蛇口を熱そうにしながら捻り、叫び声を上げる。


 そして、僕と目が合う。


「はっ!」


 ステラはしまったという顔をする。どうやらエントリープラグから綾波を救い出すシーンを真似たようであった。


「こ、こんな時…どんな顔をすればいいか分からないよ…」


 僕は肩を震わせながら、ステラに合わせてアニメのセリフを告げる。


「わ…笑えばいいんじゃないの?」


 ステラが強張った顔で答える。

 僕はステラの言葉に耐え切れず、キッチンまで駆け出して、腹を抱えて大笑いをした。

 その後の夕食は、恥ずかしがるステラと笑いを堪える僕の二人で無言で食べる事になった。

 
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