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第020話 挨拶と謝罪と若本さん
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「いい?ステラ、サングラスもマスクも取っちゃダメだよ」
僕は隣立つステラにそう言いつける。
「分かった…でもマスクが息苦しい… それになんだか肌も変な感じがある…」
ステラは露出した肌の部分を拭い取ろうとするが我慢させる。
「挨拶と謝罪がすんで家に戻れば、洗い流していいから今だけは我慢してね」
僕とステラは今、何をしているかというと、隣のお宅に引っ越しの挨拶とステラが盗電や盗電波した事の謝罪に訪れているのだ。もちろん、お詫びの為の高めのお菓子も用意している。
隣の方に引っ越しの挨拶を行うにあたり、ステラの盗電していた事の謝罪をどうするかと考えたが、やはりここでステラと一緒に暮らしていくからには、本人に謝罪をさせなければならないと考えた。悪い事は悪いと教え込まないと行けないし、ここで隣に盗電の事を知らぬ存ぜぬですませば、ステラがそのやり方を覚えてしまう可能性があったからだ。
この謝罪の為に、先日の実験でステラの姿を他人に見せる事が出来るかどうか試してみた訳である。最初の実験は残念な事に失敗してしまったが、その後すぐに、新たに眉毛を描く為の化粧アイブロウのペンタイプと、口紅、そして、サイズを間違えていた12歳の女の子が来ていそうな子供服を購入した。
今度の子供服はステラにぴったりのサイズであったが、肝心の肌を見せる為のファンデーションが露出した手足を塗る分が足りずに、結局、上は祖父のワイシャツ、下は僕のズボンを掃く事になった。
また、化粧のできない目や口は、サングラスとマスクで隠す事にした。また、ステラの移動範囲であるが、となりの家の外壁まで行って盗電できるぐらいなので、玄関の所まで行くのは問題が無かった。
「えっと… お隣さんは若本さんって言うのか…」
僕は表札を見て、お隣の方の名字を確認する。
「たまにジョージともお話してたよ」
ステラは祖父の知り合いから盗電してたのか…尚更謝罪をしないとダメだな…
「じゃあ、ちゃんと謝罪をしないとね」
ステラにそう言って呼び鈴を鳴らす。
呼び鈴を鳴らしても暫く反応が無く、お留守かな?と思った時に、中から男性の返事が返ってくる。そして僕が御在宅だと思った瞬間、玄関の扉が開き、日に焼けた歳の割には筋肉質の老人が姿を現わす。
「ん? どなただ?」
僕の姿を見て、老人は肩眉を上げながら聞いてくる。
「えっと! あのっ! 僕はとなり越してきた… ファイン・八雲と申します!!」
突然、老人が姿を現わしたので、僕は少しキョドりながら自己紹介する。
「ファイン・八雲? ということはジョージさんの…お孫さんか? そちらのお嬢ちゃんは妹さん?」
老人は僕とステラを見て尋ねる。
「はい!そうです! こちらは妹のステラと申します!」
ステラの事は僕の妹という事で老人には説明することにした。
「なるほど…それで、お孫さんが引っ越ししてきたという事は、ジョージさんはどうしたんだい? 何度か病院に見舞いに行った事があるんだが…」
「祖父は…つい先日、病院で息を引き取りました… 葬儀は父の家の方で行ったので、葬儀の連絡をせずに申し訳ございませんでした…」
僕も頭を下げる。
「そうだったのか…ジョージさん、亡くなったのか… そいつは寂しくなるな…」
老人は眉を顰めて寂しそうな顔をする。
「その代わりに僕が祖父の家に引っ越ししてきましたので、今日はそのご挨拶をと思って参りました、つまらない物ですがこちらをどうぞ…」
そう言って買ってきた高めの菓子を老人に差し出す。
「ん? ちょっとまってくれ、引っ越しの挨拶にしては、ちょっと大げさすぎる品物じゃないのか?」
「いや、これには少し訳が御座いまして…ご迷惑をかけた謝罪の意味も含んでいるんですよ…」
頭を下げてそう言いながらチラリとステラを見る。
「どういう事だ? 説明してもらえるか?」
僕とステラの仕草から老人は何かを察して事情を尋ねる。
「実は妹のステラが家出をして祖父の家に潜んでいた事があったのですが、その時に若本さんの所の電気をつかったり、ネットのWIFIを無断使用していたりしていたので…そのお詫びと思いまして…」
チラリとステラを見るとカツラがづれかけていたので、手でカツラを掴んで、頭を下げさせる形にしながらカツラの位置を直す。
「なんだそれぐらいの事か、別に構わんよ」
老人は怒りもせず、けろっとした顔をする。あまりにもあっさりと許されたので、僕は驚いて顔をあげる。
「この辺りのガキどもは、良く俺の家にネット繋ぎに来ているからな、電気にしてもゲーム機を充電するぐらいに使っただけだろ? それぐらいなら大した使用料にもならんしな」
「へっ? 他の家の子供も…ネットを繋ぎに来るんですか?」
こんな田舎の子供たちが編然と盗電波している事に驚く。
「あぁ、ここは田舎だからな、ネットどころかスマホさえ無い家もある。だから、小遣いやお年玉を為て買ったゲーム機を抱えて子供がネットに繋ぎに来るんだよ。ただ、夜遅くまでゲームをしている子供には、俺が同じゲームで乱入して早く家に変えるように促しているがな、この前も夜遅くまでネットに繋いでいる子がいたから、村に侵入して、レアアイテムを盗んでやったがな」
そう言って老人はガハハと笑う。
「お前かぁ! お前が、私の青薔薇と金薔薇、ごうかなスタンドを取ったのかぁ!!」
隣にいたステラがいきなり激高して声を上げるので、僕は慌ててステラを取り押さえてその口を塞ぐ。
「か、重ね重ね、すみません!!」
僕は水飲み人形に何度も老人に頭を下げる。
「何だ…あの時夜遅くまでゲームをしていたのは嬢ちゃんだったのか… 分かった、アイテムを返してやるからゲーム機を持ってきな」
ステラが失礼な物言いをしたのにも関わらす、老人はふっと笑ってステラに話しかける。
「ほんとう!! 本当に返してくれるのっ!!」
先程までおこだったステラは目を輝かせて老人に尋ねる。
「あぁ、その代わり、今後は家でなんかせずに兄ちゃんに心配かけんなよ」
「うん!わかった! 今すぐ持ってくる!!」
ステラは僕の腕をスルリと抜け出してゲーム機を取りに家に駆け出す。
「本当にすみません、妹が色々と失礼を働いて…」
「いや、かまわんよ、俺も一人暮らしだから、子供たちが周りに来るのは楽しいし、それにジョージさんには良く話し相手になってもらって寂しさを紛らわせてもらったからな、その恩返しだよ」
若本さんは少し家の中に入ってゲーム機を持ってきながらそう返す。
「わかもっさん! ゲーム機持って来たよ! 私の青薔薇と金薔薇、ごうかなスタンドを返してっ!!」
「ん? その…まぁいいや、ちょっとまっとけ嬢ちゃん」
そうして若本さんとステラの二人でゲーム機をポチポチと弄り始める。
「ほれ? これとこれだろ?」
「それそれ! あー!私の青薔薇と金薔薇、ごうかなスタンドが帰って来たぁ~!!」
「ついでにダブったこいつもやるよ」
「えっ! それ! いだいなちょうこく!? 本当にあったんだ!! こんなの貰ってもいいの?」
ステラが目を皿用にして驚く。
「あぁ、構わんよ利子みたいなものだ、俺も二つもいらんし嬢ちゃんが貰っとけ」
「ありがと~!!」
ステラがゲーム機を掲げて喜ぶ。
「すみません、逆に何か凄いものまで頂いちゃって」
僕もステラの保護者として若本さんに頭を下げて礼を述べる。
「はははっ! だから、気にすんなってっ! お隣同士のよしみだ! 他にも困ったことがあったらいつでも俺、若本海苔夫に相談に来てくれ!」
そう言って老人は握手の為の手を差し出す。
「はい、これからもよろしくお願いします! 若本さん!」
僕は老人の手を握り返した。
こうしてお隣若本さんへの挨拶と謝罪を無事終えたのであった。
僕は隣立つステラにそう言いつける。
「分かった…でもマスクが息苦しい… それになんだか肌も変な感じがある…」
ステラは露出した肌の部分を拭い取ろうとするが我慢させる。
「挨拶と謝罪がすんで家に戻れば、洗い流していいから今だけは我慢してね」
僕とステラは今、何をしているかというと、隣のお宅に引っ越しの挨拶とステラが盗電や盗電波した事の謝罪に訪れているのだ。もちろん、お詫びの為の高めのお菓子も用意している。
隣の方に引っ越しの挨拶を行うにあたり、ステラの盗電していた事の謝罪をどうするかと考えたが、やはりここでステラと一緒に暮らしていくからには、本人に謝罪をさせなければならないと考えた。悪い事は悪いと教え込まないと行けないし、ここで隣に盗電の事を知らぬ存ぜぬですませば、ステラがそのやり方を覚えてしまう可能性があったからだ。
この謝罪の為に、先日の実験でステラの姿を他人に見せる事が出来るかどうか試してみた訳である。最初の実験は残念な事に失敗してしまったが、その後すぐに、新たに眉毛を描く為の化粧アイブロウのペンタイプと、口紅、そして、サイズを間違えていた12歳の女の子が来ていそうな子供服を購入した。
今度の子供服はステラにぴったりのサイズであったが、肝心の肌を見せる為のファンデーションが露出した手足を塗る分が足りずに、結局、上は祖父のワイシャツ、下は僕のズボンを掃く事になった。
また、化粧のできない目や口は、サングラスとマスクで隠す事にした。また、ステラの移動範囲であるが、となりの家の外壁まで行って盗電できるぐらいなので、玄関の所まで行くのは問題が無かった。
「えっと… お隣さんは若本さんって言うのか…」
僕は表札を見て、お隣の方の名字を確認する。
「たまにジョージともお話してたよ」
ステラは祖父の知り合いから盗電してたのか…尚更謝罪をしないとダメだな…
「じゃあ、ちゃんと謝罪をしないとね」
ステラにそう言って呼び鈴を鳴らす。
呼び鈴を鳴らしても暫く反応が無く、お留守かな?と思った時に、中から男性の返事が返ってくる。そして僕が御在宅だと思った瞬間、玄関の扉が開き、日に焼けた歳の割には筋肉質の老人が姿を現わす。
「ん? どなただ?」
僕の姿を見て、老人は肩眉を上げながら聞いてくる。
「えっと! あのっ! 僕はとなり越してきた… ファイン・八雲と申します!!」
突然、老人が姿を現わしたので、僕は少しキョドりながら自己紹介する。
「ファイン・八雲? ということはジョージさんの…お孫さんか? そちらのお嬢ちゃんは妹さん?」
老人は僕とステラを見て尋ねる。
「はい!そうです! こちらは妹のステラと申します!」
ステラの事は僕の妹という事で老人には説明することにした。
「なるほど…それで、お孫さんが引っ越ししてきたという事は、ジョージさんはどうしたんだい? 何度か病院に見舞いに行った事があるんだが…」
「祖父は…つい先日、病院で息を引き取りました… 葬儀は父の家の方で行ったので、葬儀の連絡をせずに申し訳ございませんでした…」
僕も頭を下げる。
「そうだったのか…ジョージさん、亡くなったのか… そいつは寂しくなるな…」
老人は眉を顰めて寂しそうな顔をする。
「その代わりに僕が祖父の家に引っ越ししてきましたので、今日はそのご挨拶をと思って参りました、つまらない物ですがこちらをどうぞ…」
そう言って買ってきた高めの菓子を老人に差し出す。
「ん? ちょっとまってくれ、引っ越しの挨拶にしては、ちょっと大げさすぎる品物じゃないのか?」
「いや、これには少し訳が御座いまして…ご迷惑をかけた謝罪の意味も含んでいるんですよ…」
頭を下げてそう言いながらチラリとステラを見る。
「どういう事だ? 説明してもらえるか?」
僕とステラの仕草から老人は何かを察して事情を尋ねる。
「実は妹のステラが家出をして祖父の家に潜んでいた事があったのですが、その時に若本さんの所の電気をつかったり、ネットのWIFIを無断使用していたりしていたので…そのお詫びと思いまして…」
チラリとステラを見るとカツラがづれかけていたので、手でカツラを掴んで、頭を下げさせる形にしながらカツラの位置を直す。
「なんだそれぐらいの事か、別に構わんよ」
老人は怒りもせず、けろっとした顔をする。あまりにもあっさりと許されたので、僕は驚いて顔をあげる。
「この辺りのガキどもは、良く俺の家にネット繋ぎに来ているからな、電気にしてもゲーム機を充電するぐらいに使っただけだろ? それぐらいなら大した使用料にもならんしな」
「へっ? 他の家の子供も…ネットを繋ぎに来るんですか?」
こんな田舎の子供たちが編然と盗電波している事に驚く。
「あぁ、ここは田舎だからな、ネットどころかスマホさえ無い家もある。だから、小遣いやお年玉を為て買ったゲーム機を抱えて子供がネットに繋ぎに来るんだよ。ただ、夜遅くまでゲームをしている子供には、俺が同じゲームで乱入して早く家に変えるように促しているがな、この前も夜遅くまでネットに繋いでいる子がいたから、村に侵入して、レアアイテムを盗んでやったがな」
そう言って老人はガハハと笑う。
「お前かぁ! お前が、私の青薔薇と金薔薇、ごうかなスタンドを取ったのかぁ!!」
隣にいたステラがいきなり激高して声を上げるので、僕は慌ててステラを取り押さえてその口を塞ぐ。
「か、重ね重ね、すみません!!」
僕は水飲み人形に何度も老人に頭を下げる。
「何だ…あの時夜遅くまでゲームをしていたのは嬢ちゃんだったのか… 分かった、アイテムを返してやるからゲーム機を持ってきな」
ステラが失礼な物言いをしたのにも関わらす、老人はふっと笑ってステラに話しかける。
「ほんとう!! 本当に返してくれるのっ!!」
先程までおこだったステラは目を輝かせて老人に尋ねる。
「あぁ、その代わり、今後は家でなんかせずに兄ちゃんに心配かけんなよ」
「うん!わかった! 今すぐ持ってくる!!」
ステラは僕の腕をスルリと抜け出してゲーム機を取りに家に駆け出す。
「本当にすみません、妹が色々と失礼を働いて…」
「いや、かまわんよ、俺も一人暮らしだから、子供たちが周りに来るのは楽しいし、それにジョージさんには良く話し相手になってもらって寂しさを紛らわせてもらったからな、その恩返しだよ」
若本さんは少し家の中に入ってゲーム機を持ってきながらそう返す。
「わかもっさん! ゲーム機持って来たよ! 私の青薔薇と金薔薇、ごうかなスタンドを返してっ!!」
「ん? その…まぁいいや、ちょっとまっとけ嬢ちゃん」
そうして若本さんとステラの二人でゲーム機をポチポチと弄り始める。
「ほれ? これとこれだろ?」
「それそれ! あー!私の青薔薇と金薔薇、ごうかなスタンドが帰って来たぁ~!!」
「ついでにダブったこいつもやるよ」
「えっ! それ! いだいなちょうこく!? 本当にあったんだ!! こんなの貰ってもいいの?」
ステラが目を皿用にして驚く。
「あぁ、構わんよ利子みたいなものだ、俺も二つもいらんし嬢ちゃんが貰っとけ」
「ありがと~!!」
ステラがゲーム機を掲げて喜ぶ。
「すみません、逆に何か凄いものまで頂いちゃって」
僕もステラの保護者として若本さんに頭を下げて礼を述べる。
「はははっ! だから、気にすんなってっ! お隣同士のよしみだ! 他にも困ったことがあったらいつでも俺、若本海苔夫に相談に来てくれ!」
そう言って老人は握手の為の手を差し出す。
「はい、これからもよろしくお願いします! 若本さん!」
僕は老人の手を握り返した。
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