上 下
5 / 33

5.ショッピング

しおりを挟む
2人が上陸したのは大きな都市、ヴァネッサ。
水産業が盛んな他、織物も有名で、複雑な模様が描かれた絨毯や、身につける衣装なども凝った物が多い。
街をみているシズハの目は初めて見るものだらけで輝いていた。
2人は商店街に立ち寄り、旅にあると便利な物を揃えた。
シズハに至っては何も持っていなかった為、買ったものをしまえるショルダー付きのバッグと、着替え、他女性が必要そうな物を購入した。
ふと、出店形式で展示されていたアクセサリーのお店が目に付き、シズハは足を止めた。

「いらっしゃい、うちのはみーんな手作りだから、一点物だよ!よかったら見てって!」

可愛いマフラーやタペストリー、小物入れやピアスなど、シズハも見ていてワクワクしている。
ふと、店の隅に、白く長いリボンが垂れ下がっている。
リボンの先には羽の形をした装飾が施されており、どこかにつけたらゆらゆらと揺れて可愛いこと間違い無しだ。

「何か気に入った物あったのか?」

後ろで様子を見ていたシラハが声をかける。

「…はい、コレが可愛いなと…」

シラハに見つけた白いリボンを見せる。
お店の人曰く、切れにくく柔軟性もあり、汚れにくい素材を使用しているのだと言う。
するとシラハは購入する意志を店の人に告げ、お金を支払った。

「いいのですか…、他にも私の為にいろいろ買って下さったのに…」
「旅の思い出、1つくらいあってもいいと思う」
「ありがとうございます、大切にします。でも、どこに付けましょう…少し悩みます」
「なら、俺が決めていいか?」

そう言われリボンを手渡すと、シラハはシズハの髪に触れ、慣れた手つきで前髪を少し多めに取り、そこに巻き付けて縛った。

「うん、よく似合ってる」

お店に置いてあった鏡で確認する。
黒い髪にアクセントになったリボンが交差されながら結ばれ揺れている。
思った通り、先についている飾りが揺れて、とても可愛かった。

「嬉しい…。凄くいい位置につけていただけました」
「納得してもらえたなら甲斐が有る。他に必要な物はないか?」
「あ…よければ、杖とランタンが欲しいです」
「ふむ、なら探そう」

言われるがまま店を探し、長めの杖とランタンを探す。
シズハは金属の杖と、一般的なランタンを購入すると、近くにあった公園に立ち寄りたいと言うので、シラハはそれに付き合った。
公園にあったベンチに座ると、先程買った杖を細工し始める。
魔力で杖を変形させ、買ってきたランタンも自分好みにデザインし直し、それを杖の先に付けた。

「驚いたな…デザインセンスがいい」
「そうですか?!嬉しいです。これからもしかしたら暗闇を歩くこともあるかと思いまして、私の魔力で光るようになっています」
「なるほど、実は地味に嬉しい機能だ。魔法具としても使えるのか?」
「はい、あまり攻撃系は向かないので、私は後ろで旦那様のサポートをする事になると思います」
「そうか、それでも何かあった時は助かる」

ニコッとシズハが笑う。
完成した杖と荷物を持ち、また2人は歩き出した。
気付けばもう昼時で、辺りでいい匂いのするお店がある。
ふと、シズハが足を止めた先にホットドッグのお店がある。

「あ…あの、あれはなんでしょうか!」
「あぁ、パンにソーセージを挟んだ食べ物だ。食べて見るか?」

シズハがこくこくと頷くのを見ながら、シラハがお店に買いに行ってくれた。
紙袋の中に持ち帰りでいくつか買ってきてくれたようだ。
近くに見晴らしのいい休憩所があったので、2人で登り腰掛けて、海を見ながら食べる事にした。
シズハが渡された包み紙を剥がすと、細長いパンの中央に切れ目があり、そこに美味しそうなソーセージが、パンよりはみ出て置かれている。
そしてその上にケチャップとマスタードをシラハが掛けてから、ようやく食べていいと言われ、シズハは今までで1番大きな口を開けて、ホットドッグを頬張った。
齧り付いて食べるのは実は初めてで、さっき店の前でほかの人がそう食べていたのを見て、そう食べるものなのだと学んだ。
お城にいる時は、はしたないから辞めるように教わったので、大きな口を開けて食べることでも、シズハにとっては新鮮だった。

「美味しぃ~!」

幸せそうな顔をして食べてくれたのがシラハにとってもほっとした。
自分も同じものを食べる。

『これから進むルートでは1度か2度、野宿でもしなきゃならないかもしれないな…』

身投げしたと思わせたとはいえ、シズハは一国の王女だ。
野宿させるのは少し忍びない。
そんな事を考えながら食べていると、シズハが置いてあった紙袋の中身を覗き込んでいる。

「もう1つ食べるか?」
「わっ…えっと、もう少し食べたい気持ちはあるのですが、1個は流石に食べれそうになくて…」
「なら半分こするか」
「どう…やって?」

刃物は一応持ち歩いてはいるが、護身用の剣なので食べ物を切るためのものではない。
できる方法とすれば、どちらかが先に食べて渡すのが無難だろう。

「先に食べたい分だけ食べて、渡してくれるか?」

そう言いながらもう一個渡すと、シズハは包み紙を剥がさずじーっと見ている。

「どうした?」
「あの…私の食べかけでも大丈夫ですか」
「特に問題はない」
「そう…ですか。それならいただきます」

他人が残したものは食べないと教わっていたシズハ。
食べかけの物を貰うことはなかったので少し戸惑ったようだ。
同じように齧り付く。
さっきより少し冷めていて食べやすい。
半分まで食べ進めたところでシラハに渡す。
シラハもそれを受け取りそのまま口へ運んだ。
それを見ながらシズハは恥ずかしそうにしている。
ホットドッグを食べ終わってから、モジモジしているシズハにまたどうしたのかと尋ねると…

「自分の食べたものを…他の方が食べるのは初めてで…少し変な気持ちです」

そう答えた。
でも白羽にとって特別な事ではなかったので、普通の家族では有り得ることだと話す。

「それに昨日から…家族だと思って接する事にしているから」

シラハにそう言われて嬉しくないはずが無い。
しかもそのまま頭を優しく撫でられたら、シズハのの心も落ち着いてなどいられなかった。
シズハはそこでソラと一緒にやった占いの事を思い出す。

【今のあなたに必要な相手に巡り会えるでしょう…その人が運命の相手かも…】

『もしかして…あれが目に止まったのは、そういうこと…?』

そうだったとわかるのはきっと今ではないかもしれない。
でもそういう人に巡り会えるかもしれないと、期待した気持ちは確かにあった。

『シラハ様がその人なら…いいな』

「さて、シズハがいいなら出発しよう」
「はい、大丈夫です」

見晴らしのいい高台から2人は歩き出す。
次の目的地、ハルクートを目指して。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

あなたが残した世界で

天海月
恋愛
「ロザリア様、あなたは俺が生涯をかけてお守りすると誓いましょう」王女であるロザリアに、そう約束した初恋の騎士アーロンは、ある事件の後、彼女との誓いを破り突然その姿を消してしまう。 八年後、生贄に選ばれてしまったロザリアは、最期に彼に一目会いたいとアーロンを探し、彼と再会を果たすが・・・。

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...