DIVA LORE-伝承の歌姫-

Corvus corax

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127.必然

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貴紀から話があると言うので、学園が休みの祝日に主要メンバーが白羽の家に集まっていた。
亮と愛莉は別の予定があるというので来ていないが、Sクラスのメンバーからは清忠と菫が参加している。

「考古学の専門である貴紀くんが呼び出すくらいだもの、何か大きな発見か解明がされたって思っていいのかしら?」
「えぇ、そう思っていただいてかまいません。俺もまだ全て解明できたわけじゃありませんが、今後重要な情報になると思われます」

貴紀は白羽に頼んであらかじめ用意してあったホワイトボードを取り出して皆に見せる。
そこにはテヴェルニア人についてと大きく書かれたタイトルに続いて、発見した経緯や水晶から得た情報、現在のテヴェルニア人がいると思われる場所などが書かれていた。
現時点で分かっている情報は以下の通りだ。

・テヴェルニア人はヒメカが地球にやってきた時から存在している
・宇宙船のパーツが落ちた先は現在のドイツ
・そのころには現代の技術よりも発展しており、相当な知識を持っていたと思われる
・ヒメカや宇宙船にいた人々との交流があった
・水晶曰く現在も生存している確証はないが、生きており技術がそのまま引き継がれているのであれば、DIVA教との繋がりがあるかもしれないとのこと

なぜこの情報が今後重要になってくるのかと言うと、DIVA教の特殊技術がこちらの科学では説明できないものもある事や、少なくとも地球の外からやってきた宇宙人だった人の技術を習得しようとした人種がいることは、これから激しくなっていく魔物やDIVA教との闘いにとって有効であると判断したからだ。
もし現在もいると仮定してその種族に会うことができるのであれば、協力を仰ぐことはできないだろうかと思った。

「現代に話題にあがっていない種族で、軽くネットを調べても出てこないあたり伝説の域の話だなぁ」
「まぁそれでも、水晶にデータがあるという種族がこの地球でまだ生きている可能性は大いにあるんじゃない?」
「特殊技術を持っているとすれば、地球上と直接関りがなくてもいいでしょうね」

だがしかし、デメリットや危険性にも留意しなければならない。
実際にドイツに行ったとしても何も得られずに帰ってくる可能性もあるし、実際に運よく会えたとしても協力してもらえるとは限らない。
そもそも言語も通じるのだろうか、意思の疎通が図れるのだろうか、出会い頭に攻撃されることもありうる。
その事を踏まえた上で、今後どうするかを決めなければならない。

「いずれにせよ…一度ドイツには帰ろうと思っていたから、情報の収穫があるかどうかはさておき調査するならできるはずだ」
「え、帰るの?いつ?」
「あぁ、一度帰って俺の実家に静羽も連れていこうと思っていたし、むこうの親戚に紹介もしておきたい。時期は春休みあたりになるだろうな」
「わ…私を紹介…!?」

そんな日がいつかは来るだろうとは思っていたが、具体的に春休みあたりと言われてしまった静羽は慌てている。

『どうしよう…ドイツ語わかんないし…、お義父さんとお義母さんには会ってるけど、ご親戚に会うなんて緊張するよおおぉ』

「いいなぁ~!静羽ドイツ行けるんだぁ!私も行ってみたい!」
「空…お前パスポートないだろ…?」
「そういう徹君だってないでしょ!!」
「申請すればいいんじゃないか?なんなら皆で来るか?」
「え…えええぇ!?」

横で聞いていた楓真がにこにこしていて楽しそうだ。
ただ、清忠と菫は日本に残るとの意向だった。
Sクラスのメンツが掛けたら学園を守る人が少なくなってしまう為、収穫があることを願って待っているそうだ。

「ドイツ語わからなくても大丈夫かな…」
「まぁ俺もいるし、屋敷にいるメイドや執事の一人や二人借りれるだろ」
「メイドや執事さん通訳もできるの!?」
「あぁ、父のお供をする事も多いしそもそも何ヵ国語か話せないと雇われない。それに戦闘力も高くないと無理だな」

白羽曰く日本人が一人向こうで執事をやっているらしい。
ドイツに行くなら会うことになりそうだ。
泊まるところも、流石はご両親がホテル経営しているだけの事はあって、手配してくれるという。
それに今回のテヴェルニア人の件も含めて考えると、静羽がドイツに行くということは必然だったのかもしれない。

皆でドイツに行くかもという話をしている最中、朴木が郵便受けに届いていた静羽宛の封筒を渡してきた。
手渡された封筒には富山家庭裁判所と書かれている。
静羽が少し緊張した面持ちで封を切ると、そこには一枚の紙が…

審判
上記申立人からの名の変更許可申立事件について、等裁判所はその申立てを相当と認め次の通り審判する。
主文
1.申立人の名「姫歌」を「静羽」と変更することを許可する。
2.手続き費用は申立人の負担とする。

そして日付と富山家庭裁判所の裁判官の名前。
正式に静羽はその名を変更することの許可が下りた。
これを市役所へ持って行き謄本を渡してから手続き書類を書けば、本当に静羽という名前で過ごせる事になる。

「わーーー!!すごーーーい!!おめでとう静羽!」
「あ…ありがとう!」

皆が祝ってくれるというお祝いの言葉と一緒に、何か今まで方の上に乗っかっていた負担のようなものが自分からなくなった事を静羽は感じ取った。

『あぁ…私…、やっと本当に静羽って名乗れるんだ…』

白羽も隣に来てよかったなと一言言ってくれた。

『という事は、パスポートも初めて自分の静羽という名前が入った物になるのでは!』

と頭の中で妄想を膨らませる。
名前が変わるという事がきっかけになって、自分がもし白羽と結婚したら…と連想した。

『そうしたら私…静羽・Kraheになるんだぁ…!あぁ~!白羽くんにも妻ですとか言われちゃったりするのかなぁ!』

こういう妄想をしている時の静羽は、周りが見えておらずぽけ~っとしている。
頭の回りから花を散らしているような雰囲気だ。

「うん、今静羽ちょっと違うところに行っちゃった…」

空が目の前で手を振っていても分からないらしい。

「調べてみたけどパスポートって10日くらいあればできるんだな」
「あぁ、そこまで日はかからないはずだ。だから皆が都合のいい日に申請しておいてくれれば旅費はこっちで出せる。お土産代とかはさすがに個人持ちだが、普段の生活に困る事はないようにする予定だ」

急に話があがったドイツ旅行に、皆も手続きで忙しくなりそうだ。
手続きだけならいいのだが、海外旅行ともなると自分達だけでなく両親にも話さなくてはならない。
もしかしたらそれで反対される可能性もあるため、2週間後までにきちんと話をつけて連絡する方向になった。

夜寝る前、白羽と静羽は一緒の布団に入りながらドイツに行く時の事を話す。
ドイツと日本は8時間の時差があり、身体をならすのが大変そうと静羽は言った。
そして飛行機が怖い事も…。

「絶対近くにいてくれなきゃやだよ…?」
「大丈夫だ…心配するな。言われなくても傍にいる」

一回り大きな手が静羽の手を包む。
お互いにおやすみを言いながら、目を閉じる。
今は毎日一緒にいてくれる大切な人が、隣で寝ている幸せを噛みしめながら二人は眠りに落ちた。
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