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124.この国のためにできる事
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この国のために何ができるか、そう問われ静羽は自分の中での答えを探す。
「これは私個人の考えではなく、客観的に見た時の一般人の意見だと思って聞いてもらいたい。そもそも魔物が現れるようになった原因は、君たち別の星の人間がこの地球にやってきた事にある。ゲティエンという星から逃げてここに来たという事は、君たちにとっては必要な事だったかもしれないが、地球上の人間にとっては魔物の襲来によって何千何万という人たちが命を落としてきた。これは地球上の人類にとっては迷惑な話だ。だからこそ、君たちにはこの地球上の人間に対して最善を尽くすべきだと思う。少なくとも世の中にこの事実が知れ渡った場合、責任を取れと言ってくることは間違いない」
それは薄々誰かからいつか言われるのだろうと、静羽も白羽も理解していた事だ。
実際にそう言われると、今の自分達にできる事は小さく存在すらちっぽけに感じられる。
ただ、静羽達が地球に来た事によって魔物が発生したと同時に、それに対処できる石シュプルも手に入っているが、地球がこうなってしまうとは予測はできなかった。
その責任を取るべきは本来はヒメカなのだろうが、当の本人は静羽の中で姿を隠し外に出てこようはしない。
「今の私にできることは…魔物と戦い続ける事と、できる限り自分が持っている技術で人々を守れるようにすることです。そのために必要な知識の提供や試験等があるなら参加しようと思っています」
「僕も静羽と同じ意見です。ですが、一般人にこのことを知れ渡らせる必要は感じていません。世の中を混乱に陥れるくらいなら、知らなくていい事もあるはずです」
「私もこの件に関しては、公表する必要性はないと思っている。だが、何をきっかけに世の中に情報が広まるかは予測ができない。近頃は魔物だけでなく、メタルヒューマンに関しても様々な憶測が世の中を飛び交ってい以上、あらゆる可能性は考えておかねばならない。それに、そのメタルヒューマンを作り出している宗教の存在も確認され、それが桜川の母親だと知れれば、矛先は自ずと桜川にも向く事は念頭に置いておくように」
静羽と白羽にのしかかってくる重圧は考えれば考えるほど頭が壊れそうになった。
もしこの情報がバレたらどうしようなどとという、不安を考え続けるのは無駄な時間である。
目の前にある問題についての解決をはかるために時間を割くべきであり、二人に立ち止まっている時間などないのだ。
「そのメタルヒューマンについて私が知っているのは、DIVA教という組織が人間を使い生み出しているという事なのだが、どうやって生み出しているのかわかっているか?」
「わかりません…。私達も遭遇したときはすでにメタルヒューマンになっている事が多いのですが、去年の夏に初めてメタルヒューマンに遭遇した時、男の子が黒い服のお兄さんから飲み物をもらったと証言しています」
「何か薬剤のようなものを作っているのではないかと推測しますが、物的証拠として残っているものはありません」
現在メタルヒューマン化した人間が生還したのは去年の夏の少年が一人と、今回のお正月の村重神社での大人が2人。
飲み物を渡された少年についてはそれ以上の情報がなく、村重神社の2人は回復を待って事情を聞く予定である。
唯一DIVA教の人間だったミルカも入院中に失踪してしまい、回復してからメタルヒューマンの情報を聞き出す予定だったが、それができなかった。
薬を開発し飲ませているのであれば、良く言えば頭がキレる悪く言えば頭がおかしい科学者がDIVA教内部にいると思われる。
そしてそれができそうな人物の名前は、学園祭の時にミルカに協力したであろう人物、ホッファートである。
今回日本全国で出現したメタルヒューマンのからくりには、おそらく教団だけが仕えるワープスキルがあると仮定。
去年の夏おそらくナイト(嫉妬)とみられる人物が空間の切れ目を移動する瞬間を見ているからだ。
DIVA教が七つの大罪(ドイツ語)で呼び合っていることについても高峰に共有した。
「なぜドイツ語なのかという点についても疑問が残るが、これは新たな情報だ。では、メタルヒューマンの浸食についてだが、今回桜川は一時的に自分の身体を犠牲にし、浸食を移すという方法で友樹という少年の両親を助けた。それはすでに自分がその力を使えば、浸食が防げると知っていたということか?」
「いえ…友樹君に会ってから思いついた方法です。ただ思い付いた時は確証がなくあの時は夢中で、直感で手であるという事のみを認識して行動したので、口で説明をする事ができませんでした。ただ戦闘が終わってから頭で整理し直し、説明するのであれば手や足が心臓から遠い部分であるため、浸食を剥がしやすい場所であると言えます。魔力も血液と同じように身体全体をめぐっていますので、個体差は多少ありますが、それが感じ取れるようになれば今後浸食を誰でも剥がせるようになると思います」
まだ自分の身体に移してから浸食を剥がす方法は、静羽以外の人間が使ったらどうなるのかは未知数で、魔法が仕えるようになった人間が安定してその技術を使えるようになるまでは、何度も試験しなければならないだろう。
そのためにシュプルを改良し、使えるようにするために学園での生活よりも研究所での開発メンバーに高峰、静羽と白羽が加わる事になる。
細かな情報共有を行った後、3人は部屋から撤収し持ち場に戻ろうという話になった。
高峰が先に部屋から出て行ったあと研究所へ行く前に、白羽は少し疑問に思った事を静羽にぶつけた。
「Diva angelの方で変身した時の力は応用できないのか?」
白羽自身の呪いを解く事もできたあの力を上手く使えば、もっと効率的にシュプルを改良したりできるのではないか、そう思ったからだ。
ただその言葉をかけた静羽の顔色は明らかに曇っている。
「あの力は…私の力そのものじゃないから…。もともとヒメカが私の身体を使う事前提で、しかも呪文もヒメカの名前を使ってるから呼び出してるのはヒメカの力のほうなの。魔力もスキルもそっちのほうが強いのはわかってる…ただ、あの力を使い続ければ私が私でなくなっていく気がするの。それに私は静羽だから、静羽として戦いたい…なんて、言ってたら我儘かな…」
乗っ取られてしまうような感覚を覚えるのだろう。
白羽を呪いから解放する時、静羽自身の雰囲気がいつもと明らかに違うということは、一番近くで見ていた白羽が良くわかっていることだった。
人間が魔物やメタルヒューマンと戦っていくうえで助けになればと思い提案した事だったが、静羽自身が危機感を覚えているのなら、このままあの力を使い続けることは他のリスクが出てくる事を白羽は理解した。
「いや、身体に変化があるというなら安易に使える力ではなくなったのは事実だ。それに俺の呪いを解いてから、静羽の背中の羽が半分黒くなっているのも見ている。あれはたぶん、俺の中にあった呪いを静羽の身体が受け止めて、良くない魔力が混ざりあった物が目に見える形で現れたのが羽の色なんだろう」
「ヒメカの力は…分からないの…。自分の中にある力なのに自由に制御できなくて、白羽くんの呪いを解いてから余計に魔力がぐちゃぐちゃしてる感じなの。だから、不安定なものを今後のシュプルの改良に使うには危険かなって思ってるよ」
「すまなかった、応用ができないかなんて…」
「ううん!言わなきゃ分からない事だもの…、大丈夫だよ。これからの皆のためにあらゆる可能性を考えなくちゃいけないのはわかるから」
「これは私個人の考えではなく、客観的に見た時の一般人の意見だと思って聞いてもらいたい。そもそも魔物が現れるようになった原因は、君たち別の星の人間がこの地球にやってきた事にある。ゲティエンという星から逃げてここに来たという事は、君たちにとっては必要な事だったかもしれないが、地球上の人間にとっては魔物の襲来によって何千何万という人たちが命を落としてきた。これは地球上の人類にとっては迷惑な話だ。だからこそ、君たちにはこの地球上の人間に対して最善を尽くすべきだと思う。少なくとも世の中にこの事実が知れ渡った場合、責任を取れと言ってくることは間違いない」
それは薄々誰かからいつか言われるのだろうと、静羽も白羽も理解していた事だ。
実際にそう言われると、今の自分達にできる事は小さく存在すらちっぽけに感じられる。
ただ、静羽達が地球に来た事によって魔物が発生したと同時に、それに対処できる石シュプルも手に入っているが、地球がこうなってしまうとは予測はできなかった。
その責任を取るべきは本来はヒメカなのだろうが、当の本人は静羽の中で姿を隠し外に出てこようはしない。
「今の私にできることは…魔物と戦い続ける事と、できる限り自分が持っている技術で人々を守れるようにすることです。そのために必要な知識の提供や試験等があるなら参加しようと思っています」
「僕も静羽と同じ意見です。ですが、一般人にこのことを知れ渡らせる必要は感じていません。世の中を混乱に陥れるくらいなら、知らなくていい事もあるはずです」
「私もこの件に関しては、公表する必要性はないと思っている。だが、何をきっかけに世の中に情報が広まるかは予測ができない。近頃は魔物だけでなく、メタルヒューマンに関しても様々な憶測が世の中を飛び交ってい以上、あらゆる可能性は考えておかねばならない。それに、そのメタルヒューマンを作り出している宗教の存在も確認され、それが桜川の母親だと知れれば、矛先は自ずと桜川にも向く事は念頭に置いておくように」
静羽と白羽にのしかかってくる重圧は考えれば考えるほど頭が壊れそうになった。
もしこの情報がバレたらどうしようなどとという、不安を考え続けるのは無駄な時間である。
目の前にある問題についての解決をはかるために時間を割くべきであり、二人に立ち止まっている時間などないのだ。
「そのメタルヒューマンについて私が知っているのは、DIVA教という組織が人間を使い生み出しているという事なのだが、どうやって生み出しているのかわかっているか?」
「わかりません…。私達も遭遇したときはすでにメタルヒューマンになっている事が多いのですが、去年の夏に初めてメタルヒューマンに遭遇した時、男の子が黒い服のお兄さんから飲み物をもらったと証言しています」
「何か薬剤のようなものを作っているのではないかと推測しますが、物的証拠として残っているものはありません」
現在メタルヒューマン化した人間が生還したのは去年の夏の少年が一人と、今回のお正月の村重神社での大人が2人。
飲み物を渡された少年についてはそれ以上の情報がなく、村重神社の2人は回復を待って事情を聞く予定である。
唯一DIVA教の人間だったミルカも入院中に失踪してしまい、回復してからメタルヒューマンの情報を聞き出す予定だったが、それができなかった。
薬を開発し飲ませているのであれば、良く言えば頭がキレる悪く言えば頭がおかしい科学者がDIVA教内部にいると思われる。
そしてそれができそうな人物の名前は、学園祭の時にミルカに協力したであろう人物、ホッファートである。
今回日本全国で出現したメタルヒューマンのからくりには、おそらく教団だけが仕えるワープスキルがあると仮定。
去年の夏おそらくナイト(嫉妬)とみられる人物が空間の切れ目を移動する瞬間を見ているからだ。
DIVA教が七つの大罪(ドイツ語)で呼び合っていることについても高峰に共有した。
「なぜドイツ語なのかという点についても疑問が残るが、これは新たな情報だ。では、メタルヒューマンの浸食についてだが、今回桜川は一時的に自分の身体を犠牲にし、浸食を移すという方法で友樹という少年の両親を助けた。それはすでに自分がその力を使えば、浸食が防げると知っていたということか?」
「いえ…友樹君に会ってから思いついた方法です。ただ思い付いた時は確証がなくあの時は夢中で、直感で手であるという事のみを認識して行動したので、口で説明をする事ができませんでした。ただ戦闘が終わってから頭で整理し直し、説明するのであれば手や足が心臓から遠い部分であるため、浸食を剥がしやすい場所であると言えます。魔力も血液と同じように身体全体をめぐっていますので、個体差は多少ありますが、それが感じ取れるようになれば今後浸食を誰でも剥がせるようになると思います」
まだ自分の身体に移してから浸食を剥がす方法は、静羽以外の人間が使ったらどうなるのかは未知数で、魔法が仕えるようになった人間が安定してその技術を使えるようになるまでは、何度も試験しなければならないだろう。
そのためにシュプルを改良し、使えるようにするために学園での生活よりも研究所での開発メンバーに高峰、静羽と白羽が加わる事になる。
細かな情報共有を行った後、3人は部屋から撤収し持ち場に戻ろうという話になった。
高峰が先に部屋から出て行ったあと研究所へ行く前に、白羽は少し疑問に思った事を静羽にぶつけた。
「Diva angelの方で変身した時の力は応用できないのか?」
白羽自身の呪いを解く事もできたあの力を上手く使えば、もっと効率的にシュプルを改良したりできるのではないか、そう思ったからだ。
ただその言葉をかけた静羽の顔色は明らかに曇っている。
「あの力は…私の力そのものじゃないから…。もともとヒメカが私の身体を使う事前提で、しかも呪文もヒメカの名前を使ってるから呼び出してるのはヒメカの力のほうなの。魔力もスキルもそっちのほうが強いのはわかってる…ただ、あの力を使い続ければ私が私でなくなっていく気がするの。それに私は静羽だから、静羽として戦いたい…なんて、言ってたら我儘かな…」
乗っ取られてしまうような感覚を覚えるのだろう。
白羽を呪いから解放する時、静羽自身の雰囲気がいつもと明らかに違うということは、一番近くで見ていた白羽が良くわかっていることだった。
人間が魔物やメタルヒューマンと戦っていくうえで助けになればと思い提案した事だったが、静羽自身が危機感を覚えているのなら、このままあの力を使い続けることは他のリスクが出てくる事を白羽は理解した。
「いや、身体に変化があるというなら安易に使える力ではなくなったのは事実だ。それに俺の呪いを解いてから、静羽の背中の羽が半分黒くなっているのも見ている。あれはたぶん、俺の中にあった呪いを静羽の身体が受け止めて、良くない魔力が混ざりあった物が目に見える形で現れたのが羽の色なんだろう」
「ヒメカの力は…分からないの…。自分の中にある力なのに自由に制御できなくて、白羽くんの呪いを解いてから余計に魔力がぐちゃぐちゃしてる感じなの。だから、不安定なものを今後のシュプルの改良に使うには危険かなって思ってるよ」
「すまなかった、応用ができないかなんて…」
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