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108.ペア登録
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次の日、久しぶりに学園に行くと、まずは職員室への挨拶を済ませ白羽と一緒にSクラスへと案内された。
専用のパソコンの部屋、持ち出し禁止の図書室や資料室、ホームルームを行うための教室、今後の制度についての説明。
そして制服として一緒に着けるリボンは緑から赤へ。
静羽は自分がSクラスになるという条件に当てはまっていたとはいえ、実際にそうなれるとは思っていなかった。
せいぜい上がれてAランクくらいなのではないかと。
実際にそれを白羽に伝えても、御前試合の内容は承認されれば絶対なのだと言われ、Sクラスになることは確定だったらしい。
学園が襲われた時に活躍した事や、今回の御前試合、そして白羽の呪いすら解いた事は、Sクラスにいる存在としても十分なものだ。
一通り案内が終わり、教室にて皆の前で挨拶をすると皆快く迎え入れてくれた。
初めて会った人達ではない、もう仲間として一緒に活動をしている人達だ。
ここでSクラスの活動内容について説明をされる。
・他地域への派遣や視察の同行
・CクラスやBクラスへの指導
・研究所内での開発やデータ収集
・企業からの依頼
・学園内外での行事参加
適材適所という言葉があるので、得意分野がある人は優先的に回される。
自分に合ったものはやってみないとわからないため、一通りやる事が推奨されているようだ。
「静羽ちゃん、一つ忘れてるかもしれないけど、全体集会や行事がある時、私達は戦闘衣装で全校生徒と向かい合って立つから、覚えておいてね」
清忠の言葉に静羽はハッとする。
そう言われればそうだ、今まで何か行事があるたびにSクラスは全員戦闘衣装で前に立っていた。
見る側だった静羽も、今度は見られる側になる。
今度の全体集会は緊張しそうだ。
そんなことをやっているうちに午前中はあっという間に終わり、せっかくなので食堂で昼食を食べる事にした。
学生証を通すだけでお金がいらない。
メイドとして働いている静羽にとって、ここで少しでも節約できるならありがたい事だ。
一緒に食べていた空や亮に羨ましがられるが、学生証だけでいいなら貸す事ができるため、その辺はきちんと券売機の前に立った時点で対策はなされている。
Aクラスになったら半額になるので、まずはそれを目指そうと亮と空は話していた。
昼食を食べ終わった後、白羽に声をかけられる。
「ちょっと同行してほしい場所があるんだが、時間空いてるか?」
「うん、大丈夫だよ。なぁに?」
白羽の後をついていくと、研究所施設内に入る。
そしてとある端末がある部屋に通された。
「これは…何?」
端末の前で不思議そうにしている静羽へ、白羽は説明を始めた。
「覚えてるか…?林間学校の時に…俺が言った事」
「林間学校…」
『早く上まであがってきてくれ。Aクラスまで上がったら、俺とペアを組んで欲しいし』
「あの…時の…約束?」
「そう、あの時いずれペアを組んでもらうために予約したはずだ。この端末は、そのペアを登録するためのもの」
「そっか…私Sクラスになったんだもんね。白羽くんとペアになれる日が本当に来たんだ…。あの時は夢みたいな話だったのになぁ…」
白羽からやり方を教わり、腕時計を端末に近付ける。
すると、ピピッという音と共に画面が表示され、ペア登録のボタンを押した。
「ペア登録を行います。希望する方はそれぞれ、順番に腕時計を近付けてください」
端末からの音声案内に従いまずは白羽、そして静羽の順番に腕時計をかざす。
「認証しました。只今より正式にペアと認め、アップデートを行います。端末のある部屋から外へは出ないでください」
アップデートについて白羽に尋ねる。
分かっていることは、ペアになった2人の装備に何らかの変化があるという事らしい。
今まで確認出来ているものとして、同じアクセサリーの追加や衣装の色の統一化、2人しか使えない特殊アイテムの追加や武器変更などが記録として残っている。
ペア事に異なるため、変身するまで分からない。
「ちょっと…気になるな…。私と白羽くんだったらどうなるんだろう」
「そうだな、何になってるか楽しみだ」
「アップデートが完了しました。今後ペアとして戦う時はお互いの手を近づけた状態で呪文を唱えてください」
「……呪文?」
「ペアになった人専用の呪文だ。ほら、画面に表示されてる」
画面を見る静羽が目にしたのは、なんと書いてあるか分からない外国語だった。
「よ…読めない…。白羽くんわかる?」
「Zusammen fliegen、ドイツ語だ。共に羽ばたけって意味になる」
「共に…羽ばたけ」
「俺と静羽にぴったりな呪文だ」
「うん、素敵な呪文」
とはいえ、今とりあえず変身して戦う予定もないので、今後その機会がある時まで楽しみに取っておくことにした。
そして、Sクラスについてからというもの、時間が瞬く間にすぎていく。
やらなければならない事も多く、色んな場所を駆け巡り、気付いたら放課後なんて事がざらだった。
SクラスやAクラスでは勉強というより実践経験を積んでいくという方が正しい。
これから先自分がどのように生きていくか、実際に職場で活動し何をしているか把握する事で、自分に合った生活を思い描けるようになる。
興味のある事や、やりたいという活動内容が見つかったら、自主的にその分野に対しての知識を増やし、実際にその職場の一員として働いていけるようにしていくのがそのクラスに上がった者の使命である。
そうなると今一緒にいるメンバーや白羽は、将来の事をどう考えているのだろうと、静羽は疑問に思った。
日々の日課が終わって2人でゆっくりしている時に、白羽にその事を聞いてみる。
「そうだな…、俺はどこか1つの場所で誰かに指示を受けながら仕事するのは苦手だ。だから、自分自身で動けるような会社が創りたい。まぁ、自営業とかも考えてはいるが」
技術があって要領がいい白羽は、どこの会社や施設に行っても相手が求める以上の成果を必ず出して帰ってくる。
それ故に会社から指名が来るほどなので、おそらく独立してもやって行けるだろう。
1つの場所で縛られることなく、技術も腐らせることなく自分の強みを活かして働きたい、そう考えているようだ。
『私は…どう生きたいんだろう』
白羽に将来の事を聞いて、自分は…と考える静羽。
ずっと白羽と一緒にいたいと思ってはいるが、白羽はそう考えてくれているのだろうか。
仕事の事も、ヴァーグナー夫妻のように一緒にできるなんて確率はかなり低い。
世の中の大抵の夫婦は別々だ。
それに、お付き合いをするのはもうきっと確定しているのだろうが、特に今好きだから付き合ってと直接言われた訳ではないので、何となくモヤモヤしていた。
空たちも含めた皆との買い物に、ショッピングモールに出かけた際楓や空と歩いていると…
「ねぇ、どこまでいったの?白羽先輩との関係!」
なんて空に聞かれ、楓も聞きたがっていたので…
「手を…繋いだり、この間手の甲に…キスはしてくれたけど…」
と話すと、まだそこなのか?!と驚かれた。
とっくにキスくらいしたのかと思ってたと楓にまで言われるが、それに対して静羽も特に好きだから付き合ってくれとハッキリ言われたわけじゃないと伝える。
ただ、クリスマスの時にデートは誘われているので、もし何かあるとしたらそこだと思うと言うと、2人ともクリスマスまでモヤモヤすると口にしていた。
白羽の事だ、誘っておいて何もないと言うことはないはず。
今は待つしかないと、日々のやらなければならない事をこなした。
専用のパソコンの部屋、持ち出し禁止の図書室や資料室、ホームルームを行うための教室、今後の制度についての説明。
そして制服として一緒に着けるリボンは緑から赤へ。
静羽は自分がSクラスになるという条件に当てはまっていたとはいえ、実際にそうなれるとは思っていなかった。
せいぜい上がれてAランクくらいなのではないかと。
実際にそれを白羽に伝えても、御前試合の内容は承認されれば絶対なのだと言われ、Sクラスになることは確定だったらしい。
学園が襲われた時に活躍した事や、今回の御前試合、そして白羽の呪いすら解いた事は、Sクラスにいる存在としても十分なものだ。
一通り案内が終わり、教室にて皆の前で挨拶をすると皆快く迎え入れてくれた。
初めて会った人達ではない、もう仲間として一緒に活動をしている人達だ。
ここでSクラスの活動内容について説明をされる。
・他地域への派遣や視察の同行
・CクラスやBクラスへの指導
・研究所内での開発やデータ収集
・企業からの依頼
・学園内外での行事参加
適材適所という言葉があるので、得意分野がある人は優先的に回される。
自分に合ったものはやってみないとわからないため、一通りやる事が推奨されているようだ。
「静羽ちゃん、一つ忘れてるかもしれないけど、全体集会や行事がある時、私達は戦闘衣装で全校生徒と向かい合って立つから、覚えておいてね」
清忠の言葉に静羽はハッとする。
そう言われればそうだ、今まで何か行事があるたびにSクラスは全員戦闘衣装で前に立っていた。
見る側だった静羽も、今度は見られる側になる。
今度の全体集会は緊張しそうだ。
そんなことをやっているうちに午前中はあっという間に終わり、せっかくなので食堂で昼食を食べる事にした。
学生証を通すだけでお金がいらない。
メイドとして働いている静羽にとって、ここで少しでも節約できるならありがたい事だ。
一緒に食べていた空や亮に羨ましがられるが、学生証だけでいいなら貸す事ができるため、その辺はきちんと券売機の前に立った時点で対策はなされている。
Aクラスになったら半額になるので、まずはそれを目指そうと亮と空は話していた。
昼食を食べ終わった後、白羽に声をかけられる。
「ちょっと同行してほしい場所があるんだが、時間空いてるか?」
「うん、大丈夫だよ。なぁに?」
白羽の後をついていくと、研究所施設内に入る。
そしてとある端末がある部屋に通された。
「これは…何?」
端末の前で不思議そうにしている静羽へ、白羽は説明を始めた。
「覚えてるか…?林間学校の時に…俺が言った事」
「林間学校…」
『早く上まであがってきてくれ。Aクラスまで上がったら、俺とペアを組んで欲しいし』
「あの…時の…約束?」
「そう、あの時いずれペアを組んでもらうために予約したはずだ。この端末は、そのペアを登録するためのもの」
「そっか…私Sクラスになったんだもんね。白羽くんとペアになれる日が本当に来たんだ…。あの時は夢みたいな話だったのになぁ…」
白羽からやり方を教わり、腕時計を端末に近付ける。
すると、ピピッという音と共に画面が表示され、ペア登録のボタンを押した。
「ペア登録を行います。希望する方はそれぞれ、順番に腕時計を近付けてください」
端末からの音声案内に従いまずは白羽、そして静羽の順番に腕時計をかざす。
「認証しました。只今より正式にペアと認め、アップデートを行います。端末のある部屋から外へは出ないでください」
アップデートについて白羽に尋ねる。
分かっていることは、ペアになった2人の装備に何らかの変化があるという事らしい。
今まで確認出来ているものとして、同じアクセサリーの追加や衣装の色の統一化、2人しか使えない特殊アイテムの追加や武器変更などが記録として残っている。
ペア事に異なるため、変身するまで分からない。
「ちょっと…気になるな…。私と白羽くんだったらどうなるんだろう」
「そうだな、何になってるか楽しみだ」
「アップデートが完了しました。今後ペアとして戦う時はお互いの手を近づけた状態で呪文を唱えてください」
「……呪文?」
「ペアになった人専用の呪文だ。ほら、画面に表示されてる」
画面を見る静羽が目にしたのは、なんと書いてあるか分からない外国語だった。
「よ…読めない…。白羽くんわかる?」
「Zusammen fliegen、ドイツ語だ。共に羽ばたけって意味になる」
「共に…羽ばたけ」
「俺と静羽にぴったりな呪文だ」
「うん、素敵な呪文」
とはいえ、今とりあえず変身して戦う予定もないので、今後その機会がある時まで楽しみに取っておくことにした。
そして、Sクラスについてからというもの、時間が瞬く間にすぎていく。
やらなければならない事も多く、色んな場所を駆け巡り、気付いたら放課後なんて事がざらだった。
SクラスやAクラスでは勉強というより実践経験を積んでいくという方が正しい。
これから先自分がどのように生きていくか、実際に職場で活動し何をしているか把握する事で、自分に合った生活を思い描けるようになる。
興味のある事や、やりたいという活動内容が見つかったら、自主的にその分野に対しての知識を増やし、実際にその職場の一員として働いていけるようにしていくのがそのクラスに上がった者の使命である。
そうなると今一緒にいるメンバーや白羽は、将来の事をどう考えているのだろうと、静羽は疑問に思った。
日々の日課が終わって2人でゆっくりしている時に、白羽にその事を聞いてみる。
「そうだな…、俺はどこか1つの場所で誰かに指示を受けながら仕事するのは苦手だ。だから、自分自身で動けるような会社が創りたい。まぁ、自営業とかも考えてはいるが」
技術があって要領がいい白羽は、どこの会社や施設に行っても相手が求める以上の成果を必ず出して帰ってくる。
それ故に会社から指名が来るほどなので、おそらく独立してもやって行けるだろう。
1つの場所で縛られることなく、技術も腐らせることなく自分の強みを活かして働きたい、そう考えているようだ。
『私は…どう生きたいんだろう』
白羽に将来の事を聞いて、自分は…と考える静羽。
ずっと白羽と一緒にいたいと思ってはいるが、白羽はそう考えてくれているのだろうか。
仕事の事も、ヴァーグナー夫妻のように一緒にできるなんて確率はかなり低い。
世の中の大抵の夫婦は別々だ。
それに、お付き合いをするのはもうきっと確定しているのだろうが、特に今好きだから付き合ってと直接言われた訳ではないので、何となくモヤモヤしていた。
空たちも含めた皆との買い物に、ショッピングモールに出かけた際楓や空と歩いていると…
「ねぇ、どこまでいったの?白羽先輩との関係!」
なんて空に聞かれ、楓も聞きたがっていたので…
「手を…繋いだり、この間手の甲に…キスはしてくれたけど…」
と話すと、まだそこなのか?!と驚かれた。
とっくにキスくらいしたのかと思ってたと楓にまで言われるが、それに対して静羽も特に好きだから付き合ってくれとハッキリ言われたわけじゃないと伝える。
ただ、クリスマスの時にデートは誘われているので、もし何かあるとしたらそこだと思うと言うと、2人ともクリスマスまでモヤモヤすると口にしていた。
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