65 / 143
64.共有
しおりを挟む
楓真と楓がコテージへ戻ると、遅れたのか、ひなたと美月がご飯を食べに来ていた。
「あ…楓真だ」
「楓おかえり、2人で手繋いでる…やっとくっついたの?」
「そんなとこ」
楓真がそう返すと、後ろの方で女子達の目がキャーと騒ぎながら輝いていた。
カレーを満足そうにモグモグと食べながら、2人が白羽に物申す。
「白羽も早くくっつけ」
「そうだそうだー」
「はぁ?」
「早く呪い解けろ」
「待たせてるんだぞ」
「なら解いてくれ」
「無理」
そんな事を言われても白羽にもどうしようもない。
できるのならとっくにやっている。
今はじたばたしても仕方ない。
目の前にある事をやっていくうちに、きっと答えが見つかるはずだ。
そして今はここにいるメンバーだけでも、情報共有と整理をしておきたい。
「よし、皆が集まったから、今日あった事の情報共有を始めようと思う」
白羽はそういうと用意してあったメモ用紙を取り出し楓真に渡す。
記録を取るのはだいたい楓真のようだ。
楓真も当たり前のように受け取ると席についた。
分かっていることと疑問点、他に知っていることや気付いたことを話す。
【わかっていること】
・メタルヒューマンの実験をしている団体がある
・メタルヒューマンの実験は今回飲み物を渡されて発動
・その団体は黒い修道服を着ている
・修道服の団体で名前が判明しているのは、ガイツ、フェレライ
・名前から連想される事→「七つの大罪」ドイツ語でガイツ(強欲)、フェレライ(暴食)
・最後空間移動するときのもう一人の名は恐らくナイト(嫉妬)
・魔物と修道服の団体の関係性は不明
【疑問点】
・メタルヒューマンの実験をしている理由
・メタルヒューマン実験の対象者
・修道服の団体の存在理由
・力を使って移動しているところから、魔力の出所
・どこから来ているのか
ここまで話してから姫歌が少し申し訳なさそうに手を挙げる。
「どうした?」
「一つ…言っておかないといけないと思う事があるの…。黒い修道服の団体の人…私の名前を知ってた」
自分の事を「姫」と呼んでいた、そう伝える。
学園に来ていた姫歌を助けてくれた修道服の男性も、お姫さんと呼んでいたのだ。
もちろん姫歌は相手の事は何も知らない状態で。
そしてその言葉でわかっていることと疑問点が増えた。
姫歌を知っている事実と、どういう関係があるのか?だ。
心当たりはないのかと白羽に聞かれ、姫歌は少し考える。
ここ最近で思い当たる事はない。
だとしたらもっと前…祖母…いや両親の事だろうか…?
「う…」
少し頭が痛い。
思い出したくない記憶もある。
むしろ辛かった時の記憶なんて普段は封印していて、どうだったか思い出すのにも時間がかかりそうだ。
「無理するな」
「あ…うん、ごめんね…思い出したら言うね」
少し深呼吸をして気持ちを整えた。
情報共有は続く。
今回のこの場所にて確認したメタルヒューマンの対象者は子どもだった。
完璧にメタルヒューマン化し融合しそのまま溶けてしまった子と、浸食を見つけ愛莉が治療した子。
白羽に研究者から報告があった時の対象者は、完璧な人間の形をした大人。
「まだ完璧にコントロールできてないのだろうね」
「何かを飲ませて発動させてるようだが、大人と子どもの差、時間、効果、もしかしたらその薬ですらいろいろなタイプを試している可能性もある」
ではなぜメタルヒューマンなんてものを作ろうとしているのか。
・人間を改変し別の生命体を作り出して強力な力や軍隊を作り出す為
・作り出した者を魔物側と取引しようとしている
・実は別のものを作り出す前の実験中
等の意見が出た。
どちらにせよ人間たちの脅威になる前に実験を阻止したいところだ。
まずは今日わかっていることをまとめ、報告書を書いて研究機関や政府などに伝えなくてはならない。
白羽も少し忙しくなりそうだ。
「あ、そうだ…聞きたいことが」
そう言いながら手を挙げたのは空だった。
今日の戦闘の時、白羽と楓真の目が光っており、背後に何かオーラのような、うっすらと何か浮かび上がった姿が見えていた。
あれはなんなのか…と。
「あれは守護神だ」
「Sクラスは全員、Aクラスもごく1部だけど守護神を持ってる人がいるんだよ」
「ってことは徹くんも?」
「おう、俺もいるよ」
3人が覚醒について説明してくれた。
変身している状態で、自分や仲間にピンチが訪れた時に強い想いがあると覚醒し、守護神が憑く事が多いのだと言う。
何が憑くかは本人も分からず、守護神側が選んでくれるのだとか。
「原則1人1守護が普通なんだけれど…」
「白羽だけ例外」
聞くと、3人も守護神がいるらしい。
フギンとヴァルキリーということまで教えてもらったが、あと1人は内緒のようだ。
ただ白羽曰く、とても恥ずかしがり屋で花が好きなのだと言う。
そしてその行動や性格を見ていると、名前とは絶対に合わないのだとか。
守護神は変身時使用する腕時計で呼び出せば話ができるようだが、基本的にピンチの時にしか顔を出さない。
持ち主を起点にし、普段は人々の生活を眺めていて、守護神側からの情報提供も稀にある。
「ということは、守護神がいないとSクラスにはあがれないって事?」
「それを聞いた事はないけれど、実質守護神がいない人を見た事はないかな」
「卒業していった先輩たちも皆、誰かしら守護神がいたしな」
へぇ…そうなんだ、と聞く側が思ったところで美津子がパンパンと手を叩く。
「さぁさぁあなたたち、そろそろ寝る準備をしなくちゃ。明日はもう帰るのだし、忘れ物も無いようにしっかりとね」
「そうだな、そろそろいい時間だ。今日はここまでにしよう」
美津子と白羽の声に合わせてみんなもそれぞれの家や部屋へ帰っていく。
あまり真剣な話をしすぎても、旅行としてはあまり後味はよくない。
部屋に帰るなり姫歌たちは楓に恋話をもちかけ、その日の夜は日付が変わるまで盛り上がっていた。
楓も楓真にもらった宝石箱を大事にかかえ、自分が気づいたその気持を大事にしようと思っているようだ。
明日は皆で富山へ帰る。
少し嫌な事も、嬉し恥ずかしい事もあったけれど、皆と軍那にこれたおかげで姫歌の大切な思い出も増えた。
きっとこうやって大切な人と、皆と、一緒に辛い記憶は上書きしていけばいい。
記憶から消し去ることはできないけれど、それでも前に進むために今は皆がいる。
心の中でありがとうと皆に感謝の言葉を言いながら、姫歌は眠りについていった。
「あ…楓真だ」
「楓おかえり、2人で手繋いでる…やっとくっついたの?」
「そんなとこ」
楓真がそう返すと、後ろの方で女子達の目がキャーと騒ぎながら輝いていた。
カレーを満足そうにモグモグと食べながら、2人が白羽に物申す。
「白羽も早くくっつけ」
「そうだそうだー」
「はぁ?」
「早く呪い解けろ」
「待たせてるんだぞ」
「なら解いてくれ」
「無理」
そんな事を言われても白羽にもどうしようもない。
できるのならとっくにやっている。
今はじたばたしても仕方ない。
目の前にある事をやっていくうちに、きっと答えが見つかるはずだ。
そして今はここにいるメンバーだけでも、情報共有と整理をしておきたい。
「よし、皆が集まったから、今日あった事の情報共有を始めようと思う」
白羽はそういうと用意してあったメモ用紙を取り出し楓真に渡す。
記録を取るのはだいたい楓真のようだ。
楓真も当たり前のように受け取ると席についた。
分かっていることと疑問点、他に知っていることや気付いたことを話す。
【わかっていること】
・メタルヒューマンの実験をしている団体がある
・メタルヒューマンの実験は今回飲み物を渡されて発動
・その団体は黒い修道服を着ている
・修道服の団体で名前が判明しているのは、ガイツ、フェレライ
・名前から連想される事→「七つの大罪」ドイツ語でガイツ(強欲)、フェレライ(暴食)
・最後空間移動するときのもう一人の名は恐らくナイト(嫉妬)
・魔物と修道服の団体の関係性は不明
【疑問点】
・メタルヒューマンの実験をしている理由
・メタルヒューマン実験の対象者
・修道服の団体の存在理由
・力を使って移動しているところから、魔力の出所
・どこから来ているのか
ここまで話してから姫歌が少し申し訳なさそうに手を挙げる。
「どうした?」
「一つ…言っておかないといけないと思う事があるの…。黒い修道服の団体の人…私の名前を知ってた」
自分の事を「姫」と呼んでいた、そう伝える。
学園に来ていた姫歌を助けてくれた修道服の男性も、お姫さんと呼んでいたのだ。
もちろん姫歌は相手の事は何も知らない状態で。
そしてその言葉でわかっていることと疑問点が増えた。
姫歌を知っている事実と、どういう関係があるのか?だ。
心当たりはないのかと白羽に聞かれ、姫歌は少し考える。
ここ最近で思い当たる事はない。
だとしたらもっと前…祖母…いや両親の事だろうか…?
「う…」
少し頭が痛い。
思い出したくない記憶もある。
むしろ辛かった時の記憶なんて普段は封印していて、どうだったか思い出すのにも時間がかかりそうだ。
「無理するな」
「あ…うん、ごめんね…思い出したら言うね」
少し深呼吸をして気持ちを整えた。
情報共有は続く。
今回のこの場所にて確認したメタルヒューマンの対象者は子どもだった。
完璧にメタルヒューマン化し融合しそのまま溶けてしまった子と、浸食を見つけ愛莉が治療した子。
白羽に研究者から報告があった時の対象者は、完璧な人間の形をした大人。
「まだ完璧にコントロールできてないのだろうね」
「何かを飲ませて発動させてるようだが、大人と子どもの差、時間、効果、もしかしたらその薬ですらいろいろなタイプを試している可能性もある」
ではなぜメタルヒューマンなんてものを作ろうとしているのか。
・人間を改変し別の生命体を作り出して強力な力や軍隊を作り出す為
・作り出した者を魔物側と取引しようとしている
・実は別のものを作り出す前の実験中
等の意見が出た。
どちらにせよ人間たちの脅威になる前に実験を阻止したいところだ。
まずは今日わかっていることをまとめ、報告書を書いて研究機関や政府などに伝えなくてはならない。
白羽も少し忙しくなりそうだ。
「あ、そうだ…聞きたいことが」
そう言いながら手を挙げたのは空だった。
今日の戦闘の時、白羽と楓真の目が光っており、背後に何かオーラのような、うっすらと何か浮かび上がった姿が見えていた。
あれはなんなのか…と。
「あれは守護神だ」
「Sクラスは全員、Aクラスもごく1部だけど守護神を持ってる人がいるんだよ」
「ってことは徹くんも?」
「おう、俺もいるよ」
3人が覚醒について説明してくれた。
変身している状態で、自分や仲間にピンチが訪れた時に強い想いがあると覚醒し、守護神が憑く事が多いのだと言う。
何が憑くかは本人も分からず、守護神側が選んでくれるのだとか。
「原則1人1守護が普通なんだけれど…」
「白羽だけ例外」
聞くと、3人も守護神がいるらしい。
フギンとヴァルキリーということまで教えてもらったが、あと1人は内緒のようだ。
ただ白羽曰く、とても恥ずかしがり屋で花が好きなのだと言う。
そしてその行動や性格を見ていると、名前とは絶対に合わないのだとか。
守護神は変身時使用する腕時計で呼び出せば話ができるようだが、基本的にピンチの時にしか顔を出さない。
持ち主を起点にし、普段は人々の生活を眺めていて、守護神側からの情報提供も稀にある。
「ということは、守護神がいないとSクラスにはあがれないって事?」
「それを聞いた事はないけれど、実質守護神がいない人を見た事はないかな」
「卒業していった先輩たちも皆、誰かしら守護神がいたしな」
へぇ…そうなんだ、と聞く側が思ったところで美津子がパンパンと手を叩く。
「さぁさぁあなたたち、そろそろ寝る準備をしなくちゃ。明日はもう帰るのだし、忘れ物も無いようにしっかりとね」
「そうだな、そろそろいい時間だ。今日はここまでにしよう」
美津子と白羽の声に合わせてみんなもそれぞれの家や部屋へ帰っていく。
あまり真剣な話をしすぎても、旅行としてはあまり後味はよくない。
部屋に帰るなり姫歌たちは楓に恋話をもちかけ、その日の夜は日付が変わるまで盛り上がっていた。
楓も楓真にもらった宝石箱を大事にかかえ、自分が気づいたその気持を大事にしようと思っているようだ。
明日は皆で富山へ帰る。
少し嫌な事も、嬉し恥ずかしい事もあったけれど、皆と軍那にこれたおかげで姫歌の大切な思い出も増えた。
きっとこうやって大切な人と、皆と、一緒に辛い記憶は上書きしていけばいい。
記憶から消し去ることはできないけれど、それでも前に進むために今は皆がいる。
心の中でありがとうと皆に感謝の言葉を言いながら、姫歌は眠りについていった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
私に代わり彼に寄り添うのは、幼馴染の女でした…一緒に居られないなら婚約破棄しましょう。
coco
恋愛
彼の婚約者は私なのに…傍に寄り添うのは、幼馴染の女!?
一緒に居られないなら、もう婚約破棄しましょう─。
彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました
Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。
どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も…
これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない…
そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが…
5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。
よろしくお願いしますm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる