DIVA LORE-伝承の歌姫-

Corvus corax

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12.Sクラス第1位と第5位

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5人が店を出る。
二手に分かれてそれぞれの目的地へ。
人々が逃げる方向と逆方向へ走る白羽と徹。
進行方向、富山城公園の敷地内に黒い霧が見える。

「あそこか…」
「みたいだな」

白羽と徹が顔を見合わせ頷く。

【地球を守護せし宝珠よ、我と共に轟け、EMPEROR/STAR!】

二人の腕時計が光る。
光ると同時に走りながら宙に浮くと、白い霧に包まれ、風のように移動し、まるで飛行機雲のように帯ができている。
霧が晴れると現れたのは、入学式の時壇上に立って挨拶していた姿の徹と、黒い軍服に身を包んでいる白羽だった。

二人はそのまま宙を浮きながら鳥が空を飛ぶような速度で移動していく。
黒い霧が見える上空へとたどり着くと、状況を確認するため上から見下ろした。
中心部のバリアデバイスは粉砕され、辺りに欠片が転がっている。
その影響で黒い霧を中心に、中から魔物が何匹も進出してきていた。
下では先に近くに駆けつけていた軍が、魔力銃で応戦しているが、一辺に集中しているため、反対側に数が増えていく。

「まだ公園の中から外に出てない。公園から出れないように結界を貼り直すべきだな……」
「軍にしては段取りが悪いな…。どうしたんだろう」

いつもならば、公園の周囲ごと警戒しているだろう軍が、今回は一辺でのみ防衛をしていることに徹が疑問を抱いた。
それならそれでできる人がなんとか街中への進出を防がなくてはならない。
二人はそれぞれ手分けして結界を張るための準備にかかった。

——————————————————

「くそっ、どうして先輩達が出張中の時に限って!」

分隊長らしき人物が愚痴をこぼしながら机にこぶしをぶつけている。
富山城公園の敷地内、城からすぐ近くの道路に軍隊の車がたくさん停車している。
自分たちのところに向かってくる敵を、魔力銃に防ぐが、数が多く、少しずつ後退しているようだ。

「なんとかここを死守しろ!街中にこれ以上侵入されるわけにはいかない!」

戦闘にまだ不慣れだろう新兵たちが、必死に銃を撃ち抵抗する。

「ご報告します!現地より反対側、魔物たちの数がどんどん増え、広がっている模様!反対側から突破されるのも時間の問題です!」
「くっ…動けるものは反対側へと移動!状況を確認し、必要であれば攻撃せよ!」

その声に2部隊が急いで走って移動していく。
顔が青ざめているもの、身体が震えうまく走れないものも中にはいるようだ。

——————————————————

オークやゴブリンに分類される魔物たちが、ゆらゆらと左右に揺れながら歩いてくる。
富山城公園境界がそろそろ魔物側から見え始めるくらいに、白羽と徹が待ち構えている。

「うえぇ…今回は数多いなぁ…」
「最終的に全部駆逐すればいい」
「白羽はいつも簡単に言ってくれるよなぁ…」
「最近派遣もあまりなかったからちょうどいい。戦闘しないと身体がなまる」
「へいへい、んじゃ…やりますか」

二人が魔物に向かって走る。
白羽は腰に下げていた剣を抜き左手で構えた。
素早く切り込み、次々とモンスターを薙ぎ倒していく。
魔力で強化されたその剣の名は【ウルフバート】
ドイツのヴァイキングがその昔使っていたという伝説の剣だ。

「こいつ…つよいぞ」

オークやゴブリンが持っている武器など、ただのお飾りでしかない。
攻撃しようと振り上げたころには、もう切り裂かれているからだ。

「遅い…。」

魔物たちが目で追うのがやっとなほど、白羽は高速で移動し切り込んでいく。
公園から出ようとしていた魔物たちが次々に倒れ、押し出していた魔物の陣営が少しずつ後退していく。
そこから10メートルくらい離れた場所で、徹が光の玉を操って攻撃している。
光の玉をサッカーボールのように蹴ると、通り過ぎた場所にいた魔物には穴があき、その場に倒れていく。

「うーん、サッカーだとあんまり効率よくないな~。それなら…、いっぺんに行こうか。」

【数多の光よ降り注げ!シャイニングレイン!】

徹が呪文を唱えると、上空に光の塊ができ、そこから無数に光の雨が降り注いだ。
高エネルギーを秘めているそれは、魔物たちに幾度となく当たると、当たった場所から溶けていく。
それは白羽のいる場所の魔物たちにも当たり、白羽にも降り注いだ。
何事もないように、自分の肩に下がっているマントで防ぐ。
気付いた時には公園に進出していただろう魔物の半分を倒していた。
その光景を見ていた後続の魔物たちが、二人の強さに恐れ慄いている。
進行が一時的に止まったとはいえ、黒い霧事態を消滅させなければ意味がない。

「あの霧、どうやったら消えると思う?」
「さぁな…、とりあえず魔物側のどこかとつながっている以上、消さないと増えるのは確実だな」
「案は…?」
「…つながっている…のであれば攻撃も届くはずだ。徹、あそこに高出力ビームでも打てるか?」
「あー、ビームだと消費ハンパねぇから……少し時間くれれば、玉にして蹴りこんでもいいけど?」
「よし、この辺の防衛は任せろ」

近くにいた魔物達は白羽達が攻撃してこない事をチャンスだと思ったようだ。
ここぞとばかりに、攻め込もうと走り出す。
白羽の後ろで徹が、エネルギーを溜め込み始めた。
高笑いをしながら、魔物達が近づいてくる。

「ヒーヒッ、ヒャアーーー!!燃料でも切れたのかァ!?残念だった……な゛っ……」

白羽に殴りかかろうと飛び上がったゴブリンが、とある境界線を境に灰と化していく。
ただ単に白羽はそこを動かないだけなのだ。
腕を組み、魔物たちを睨みつけている。

「誰が近づいて良いと言った……」

ゴブリンもオークも、一定範囲以上へ侵入しようとすると灰とかしていく光景を見てもなお、攻撃の手を緩めようとはしない。

「はぁ……これだから低脳は嫌いなんだ……」

透明であるためわかりくいのだが、白羽の前方10メートルに防御型であり攻撃も兼ねているバリアが存在する。
【灰化壁】
その上を通っただけで、上空10メートル以内にいるモンスターは灰と化すのだ。

「そんなに灰になりたいか」

ゴブリンやオークは頭が悪い。
とりあえず数で行けばなんとかなると思っているのだ。
お好きにどうぞと言わんばかりに白羽は陣取っている。
責めてきた群れをまた更に灰にして、ようやく足が止まった。

「はっ……気付くまで遅いんだよ……。死にな…」

1度止まった魔物たち目掛けて、白羽が手を振りかざす。
と同時に灰化壁が魔物たちの方向に移動し始めた。
霧から出て来る魔物たちの方へ、ゆっくりだが移動する。
その灰化壁に触れ、魔物たちは極わずかな数まで減った。

「よっし、おまたせぃ!」

後ろでチャージしていた徹が声をあげる。
白羽もだいたいの時間を把握していたようで、雑魚の片付けは済んだようだ。

「いっくぜー!」

【光球よ!盛大に咲き誇れ!!Explosion Sphere!!(エクスプロージョンスフィア)】

黒い霧に向かって徹が光球を蹴り飛ばす。
光球は吸い込まれるように霧の中へ入っていき、行った先で光輝いた。
その光が霧から漏れるくらい盛大に爆発するのが見える。
爆発によって黒い霧が少し収縮したようだ。
と、その中から一際大きな人影が見える。

「あーあー……派手にやってくれやがってー。俺の部隊ほとんど消えちまったじゃねーのよ」

中から現れたのは、体長は3mはあろうかという大きなオークだった。
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