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6章 変な石とその後の話

第211話 救援物資、坊主一行

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 突然の救援だと言う来客に驚いて外に出ると、いつか見たお客さんの顔が其処に有った。
 マスクや手袋等の防護装備は付けて居る様子なので、此方の状況は知った上で此処に居るらしい。
「呼ばれて来ました、医療救援物資の和尚です」
 そんな事を考えている内に自己紹介が始まった。
「その妻、灯です」
 お約束と言った様子で灯さんが続く。
「妻其の2、エリスです」
 矢張り当然と言った様子でエリスさんが続いた。
「そんな訳で、確かに救援物資を送り届けました、私は私の残りの仕事を済ませてきます」
 一人居なくなった、場違いな自己紹介だが、流れる様につながるので、突っ込む暇がない。
「其れは前から知ってますけど、大丈夫ですか? 曲がりなりにもあなた方は貴族じゃ無いですか、こんな所に出て来て良いんですか?」
 思わず近づいて小声で聞く、私以外のあの二人はこういった存在に成れていないので恐らくパニックになる。
 少し前、この人が領地無し男爵に出世した事はあの土地の神父様から聞いて居る、こんな所で治療の為と言う名目で使い潰されて良い人材では無いと思うのだが・・・
「多分、この疫病に対する唯一の特効薬扱いされてる様ですから、そんな訳で色々やらせていただきますね」
 迷い無く淀み無く、聞き捨てなら無い事を言う、特効薬?!
「EX、病状の解析と血液サンプルの確認頼んだ」
「了解」
 聞き覚えの無い声で返事が聞こえると、エリスさんが持って居た杖から赤い蛇がするりと解けて床を移動始めた、思わずびくりとする。あれ、装飾じゃ無かったの?
「この蛇って・・・」
 毒蛇では無いのだろうか?
「正確には蛇じゃ無いのです、私の故郷に居る機械知成体って言う存在です、名前はEX(イクス)、悪さはしませんので、気にしないで良いです」
 灯さんが説明してくれるが、無害だと言う事以外良く分からないが、この人達が人に対して悪い事をすると言う状況が想像できないので、大丈夫なのだろうと納得する事にする。
「其れより特効薬って何処に?!」
 思わずその一言に飛びつく。
「薬はこれから作ります、病原体、ペスト菌と言われる小さな生き物を殺さなければこの病気は治りません」
「小さい生き物?」
 知識に無いので首を傾げる。
「見て見ればわかります」
「EX、サンプルは?」
「この状態ならサンプルは幾らでも採れるな」
 患者のベットの上に何時の間にか先程の蛇が上がり込んでいた。
 蛇だと言うのに一瞬腕のような物が見えた気がする。
「説得用に顕微鏡頼む」
「了解、人の目で見るなら・・・最低で600倍」
 和尚さんが何か呟くと、手の中に何か台座付きの大仰な筒の様な物が握られる。何だろうソレ?
 同時に取り出した硝子板らしき物に、蛇が牙から赤い血液らしき物を垂らす、いつの間に・・・
「600倍というと・・・これぐらいか、細菌としては大きいな?」
 和尚さんは例の蛇と饒舌に会話しながら、先程の筒をカチャカチャクルクルと弄って居る、その様子に迷いやら喋る自信の無さは窺えない。
「この人達は? サン先輩の知り合いですか?」
 会話が途切れたのでリカが私の袖を引いて紹介を促す。後で説明するからちょっと待って。
「現在現場責任者やってます、サンと呼んで下さい、こっちはリカです」
 一先ず手持無沙汰気味な灯さんとエリスさんに挨拶をして置く。
「よろしくお願いします」
「宜しくお願いします」
 改めて挨拶をして、ペコリと頭を下げる。
「現状どんな感じです?」
 灯さんが現状説明を促して来たので、現状の地獄具合を色々説明する。
「何と言うか、実際聴くだけでも大変でしたね、お疲れ様です」
 灯さんに労われる、何気にそう言った理解が有るだけで救われた気がする。
「最低限見える倍率だ、ちゃんと見るなら1200倍」
 和尚さんと例の蛇は、謎の数字を意味は解るなと言う様子で話して居る。
 しかし喋る蛇と言う物はドラゴン同様、神話や伝説、創作の世界にしか出て来ないのだが、こうして居るのなら居るのだろうと思考を納得させる。
「本当にペストかどうかが一番の問題だが・・・」
 EXと呼ばれる蛇が答える。
「当たってたか?」
「今の所合っている様子では有るな」
「・・・・・・・地域変異が怖いかな?」
 小さく呟いたのが聞こえた。
「初めて薬と作るプロセスは変わらないからそこれは諦めろ、違う星系で細菌の遺伝形質と種類が同定できる時点で奇跡だ」
「そうだな・・・・よし・・・見つけた」
 和尚さんが最期に少しだけ螺子を動かし、納得した様子で顔を上げた。
「これを見て下さい」
 準備は出来たと言う事らしく、例の筒を覗き込むように呼ばれる。
 覗き込むと、良く分からない物が視界に映し出された。
「見えましたけど、何ですこれ?」
 小さなツブツブが見えるが、初めて見るので良く分からない、困った顔で首を傾げるだけだ。
「この病気の諸悪の根源です、細菌って言われる小さな生き物、こいつらが患者の中で際限無く増えて毒を出し続けます、毒に耐えきれなくなったら・・・」
 最期の言葉を濁したが、最期まで言わなくても判る、今迄訳も判らず亡くなって行った患者さんの死因が解った、其れだけでも十分だ。
「つまり、この病気の特効薬は?」
 如何すれば良いのか知って居るのだろうか?
「浄化で毒を消して一時的に体内の毒の濃度を減らして一時的に時間を稼ぐ、対処療法は続ける、其の稼いだ時間の内に、こいつ、EXがこの細菌を殺す薬を探します」
「探す?」
「あらゆる薬の元はそこら中に有ります、この病気の薬の元と言われる放線菌は特に土の中に有ると言われて居るので、其れを当たります」
 どうやらあてずっぽうで言って居る訳では無いらしい。
「分かりました、全面的に信用します、助けて下さい」
 確かに、この人以外にこの状態をどうこう出来る人と言う者が思いつかなかった。


「どうしたんです? サン先輩? この人達は?」
 そうこうして居る内にロニが洗い物てんこ盛りの籠を抱えて此方に来た。
「初めまして、救援物資一同です、宜しくお願いします」
 エリスさんが返事する、和尚さんと同じノリだ、忙しい時の駄洒落は心がささくれる物だが、先程空間が浄化されたせいも有るのだが、此処迄毒気の無い人達も珍しかった。



 追伸
 この世界では魔法が有る分浄化で毒消しして時間稼ぎ出来るので、実情は兎も角、実際の世界よりは大分平和です。和尚達以外だと出力足りない上、決め手の薬が無いので、患者の免疫任せでじり貧と成ります。
 其のままの治療でも、理屈が解れば最大で半分生きてるか如何か位ですね。
 現実世界の史実の数字、死亡率6割~9割ですので、ある程度説得力のある数字かと。
 尚且つ、先に般若心経で範囲浄化した分、患者の病状落ち着いたのでこうして話す時間も有ったと言う感じです、そうじゃ無かった場合、駆け回って居る二人がこうして話を聞く余裕は有りません。
 ぶっちゃけてしまうと、この話だと連れて行くメンバーは灯とエリスより、アカデとクリスの方が、キャラ的に、らしい、と言うのは書いてて作者も思いました。
 このままいきますけどね、IF書き直しは全部終えてからです。

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